基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

海賊本にハズレなし。海賊王と呼ばれた男を描く伝記『世界を変えた「海賊」の物語』から人類は本質的に善良だと大きな論を展開する『Humankind』までいろいろ紹介

まえがき 本の雑誌2021年10月号の原稿を転載します。本の雑誌では新刊めったくたガイドの連載が2年の任期で2021年12月号で終わったので、あとは11月号&12月分を残すのみ。先月は久しぶりに本の雑誌原稿を書かない月でしたが、少しさみしいですね。その代わ…

がんを根絶するのではなく、コントロールするという選択肢──『がんは裏切る細胞である――進化生物学から治療戦略へ』

がんは裏切る細胞である――進化生物学から治療戦略へ作者:アシーナ・アクティピスみすず書房Amazonこの『がんは裏切る細胞である』は、書名通りがんについて書かれた一冊である。がんがどのように生まれ、現代まで生き残ってきたのか。いま、どこまで研究が進…

魚にはどれだけの知性があるのか?──『魚にも自分がわかる──動物認知研究の最先端』

魚にも自分がわかる ──動物認知研究の最先端 (ちくま新書)作者:幸田正典筑摩書房Amazonこの『魚にも自分がわかる』は、「魚の自己認識」、はてはその先の問いかけとして魚の知性について書かれた一冊である。魚は脳も小さいし、餌に飛びつくような本能的な動…

元NATO欧州連合軍最高司令官によって書かれた、ありうるかもしれない米中開戦を描く近未来軍事シミュレーション長篇──『2034 米中戦争』

SF

2034 米中戦争 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)作者:エリオット・アッカーマン,ジェイムズ・スタヴリディス二見書房Amazon近年、米国と中国の溝は深くなる一方だ。最近も、米国は中国の人権状況について懸念し、北京で開かれる冬季オリンピックを外交…

『三体』の劉慈欣による本邦初の短篇集、劉慈欣は長篇だけでなく短篇もおもしろい!──『円』

円 劉慈欣短篇集作者:劉 慈欣早川書房Amazonこの『円 劉慈欣短篇集』は、『三体』の著者劉慈欣による本邦初の短篇集である。中国での短篇集の翻訳かと思ったら、作品選択は原著者側によるもので、どのような意図があるのか訳者にもわかっていないらしい。た…

ハヤカワ文庫JAから700点以上が50%割引の大型セールがきたのでおすすめを紹介する。

SF

SFマガジン 2021年 12月号早川書房Amazon先日から早川書房から刊行されているSFマガジンではハヤカワ文庫JA全解説を3号連続で行っていた。僕も10点ぐらいの作品に解説を書いたのだが、その全解説がおわったこのタイミングで、ハヤカワ文庫JA700点以上の割引…

科学と魔法が混交した世界を見事描き出してみせた、ゲーム原作のNetflixアニメシリーズ──『アーケイン』

www.netflix.com 『アーケイン』を観た。ゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』を原作とするNetflixのアニメ作品で、第一シーズンが配信されている。今月配信がスタートし『イカゲーム』を抜き去って各国でランキングの一位をとるなど盛り上がっているようだ。…

インディーゲームを作り続けていくための現場の知見と悩みが詰まった最良のガイドブック──『インディーゲーム・サバイバルガイド』

インディーゲーム・サバイバルガイド作者:一條 貴彰技術評論社Amazonこの数年、UnityやUEのようなゲーム開発エンジンが発展し、ダウンロード販売が当たり前になり、スマホのスペックが上がり自由度が増したなど複数の要因が重なって、少人数で制作・販売され…

なぜ年をとるほど時間は速くなるのか?──『WHY TIME FLIES:なぜ時間は飛ぶように過ぎるのか』

WHY TIME FLIES:なぜ時間は飛ぶように過ぎるのか作者:アランバーディック東洋館出版社Amazonこれを書いているのは11月22日だが、あと一週間ちょっとしたら12月、すぐに2022年がやってくる。この1年をあっという間に感じた人もいるだろうし、長かったなあと振…

宇宙の創生から終局までを壮大なスケールと幻想で描き出す、オラフ・ステープルドン代表作の全面改訳版──『スターメイカー』

SF

スターメイカー (ちくま文庫)作者:オラフ・ステープルドン筑摩書房Amazon本書は、オラフ・ステープルドンによって1937年に發表された、壮大なスケールでこの宇宙と数多の文明の行末を描き出すSF長篇である。1990年に国書刊行会から刊行され、04年に新版が出…

世界のワクチン接種運動を考え直すためにも重要な一冊──『ワクチンの噂――どう広まり、なぜいつまでも消えないのか』

ワクチンの噂――どう広まり、なぜいつまでも消えないのか作者:ハイジ・J・ラーソンみすず書房Amazonこの『ワクチンの噂』は、ワクチンの信頼性をめぐる国際的な研究プロジェクトなどに関わってきた人類学者のハイジ・J・ラーソンが「ワクチンにまつわる嘘・デ…

アメリカの感染症対策の軌跡を追う『最悪の予感』からALSを発症した著者が自身をサイボーグ化する過程を描いた『NEO HUMAN』までいろいろ紹介!

はじめに 本の雑誌462号2021年12月号本の雑誌社Amazon本の雑誌2021年9月号のノンフィクションガイド原稿を転載します。今回もいい感じの大作ぞろい。なんといってもマイケル・ルイスの『最悪の予感』は大作だし、ALSにかかった著者が技術で自分の身体をハッ…