基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

第一次世界大戦中にインターネットや携帯電話が発展し、高度な監視システムが構築されたIFのドイツを描き出す改変歴史SF──『NSA』

NSA 上 (ハヤカワ文庫SF)作者:アンドレアス エシュバッハ早川書房Amazonこの『NSA』は、ドイツを代表するSF作家アンドレアス・エシュバッハが18年に発表した、ドイツが舞台の歴史改変SF小説である。歴史改変ものとは、「もし歴史のあの時点で結果がこ…

はるかな未来から少し先のニューノーマルまで、パンデミック後の多様な世界を表現する韓国SFアンソロジー──『最後のライオニ 韓国パンデミックSF小説集』

SF

最後のライオニ 韓国パンデミックSF小説集作者:キム・チョヨプ,デュナ,チョン・ソヨン,キム・イファン,ペ・ミョンフン,イ・ジョンサン河出書房新社Amazonこの『最後のライオニ』は韓国の作家6人がパンデミック、感染症をテーマに短篇を書いたSFアンソロジ…

過激主義組織はどのように人を勧誘し、虜にするのか?──『ゴーイング・ダーク 12の過激主義組織潜入ルポ』

ゴーイング・ダーク 12の過激主義組織潜入ルポ作者:ユリア・エブナー左右社Amazonこの『ゴーイング・ダーク』は、12の過激な主義主張をかかげる組織に著者が潜入し内部を綴るルポタージュである。最近のこうした組織はオンラインで門戸を開いているものだか…

《ウィッチャー》ワールドの原点とその本質的な魅力を味わえる、入門にうってつけの一冊──『ウィッチャー短篇集1 最後の願い』

ウィッチャー短篇集1 最後の願い (ハヤカワ文庫FT)作者:アンドレイ サプコフスキ早川書房Amazonポーランドの作家アンドレイ・サプコフスキによるファンタジィ小説シリーズ《ウィッチャー》は、小説も世界的なベストセラーであるが、本作を原作としたゲーム…

2020年の読むべき日本SF短篇が一冊であらかたカバーできる、竹書房文庫の年刊日本SF傑作選!──『ベストSF2021』

ベストSF2021 (竹書房文庫, お6-2) (竹書房文庫 お 6-2)作者:大森 望竹書房Amazon2020年に発表された日本SF短篇の中から、大森望が傑作をよりすぐったのがこの竹書房から刊行されたアンソロジー『ベストSF2021』である。2019年作品版の『ベストSF2020』が202…

mRNAワクチンを接種した人全員に読んでもらいたい、ワクチン開発の奮闘を描き出す一気読み必至のノンフィクション──『mRNAワクチンの衝撃 コロナ制圧と医療の未来』

mRNAワクチンの衝撃 コロナ制圧と医療の未来作者:ジョー ミラー,エズレム テュレジ,ウール シャヒン早川書房Amazon日本政府によると、日本の新型コロナウイルスワクチン接種回数は1億9800万回、2回の接種を完了した人は総人口の77%と数字が出ているが、…

砂漠の美しさ、サンドワームの神話的な恐ろしさを見事に表現してみせた傑作映画──『DUNE/デューン 砂の惑星』

『DUNE/デューン 砂の惑星』公開時にIGN japanに寄稿した映画reviewを、年末ですし、Amazonでも買えるようになっているのでブログ用に編集して投稿してます。おもしろいので観てね。DUNE/デューン 砂の惑星(字幕版)ティモシー・シャラメAmazon はじめに ドゥ…

2021年に刊行され、おもしろかったノンフィクションを振り返る

2021年も終わろうとしているので、今年刊行された本の中でも特におもしろかった・記憶に残ったノンフィクションを振り返っていこうかと。昨年に引き続き今年も本の雑誌の新刊ノンフィクションガイドを担当していたので、冊数はノンフィクションだけで200冊ぐ…

『火星の人』の著者最新作にして、宇宙SF&宇宙生物学SFの傑作長篇──『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上作者:アンディ ウィアー早川書房Amazonこの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、火星に一人取り残されてしまった男の決死のサバイブを描くハード・宇宙開発SF『火星の人』でデビュー&大ヒットした、(リドリー・スコッ…

海賊本にハズレなし。海賊王と呼ばれた男を描く伝記『世界を変えた「海賊」の物語』から人類は本質的に善良だと大きな論を展開する『Humankind』までいろいろ紹介

まえがき 本の雑誌2021年10月号の原稿を転載します。本の雑誌では新刊めったくたガイドの連載が2年の任期で2021年12月号で終わったので、あとは11月号&12月分を残すのみ。先月は久しぶりに本の雑誌原稿を書かない月でしたが、少しさみしいですね。その代わ…

がんを根絶するのではなく、コントロールするという選択肢──『がんは裏切る細胞である――進化生物学から治療戦略へ』

がんは裏切る細胞である――進化生物学から治療戦略へ作者:アシーナ・アクティピスみすず書房Amazonこの『がんは裏切る細胞である』は、書名通りがんについて書かれた一冊である。がんがどのように生まれ、現代まで生き残ってきたのか。いま、どこまで研究が進…

魚にはどれだけの知性があるのか?──『魚にも自分がわかる──動物認知研究の最先端』

魚にも自分がわかる ──動物認知研究の最先端 (ちくま新書)作者:幸田正典筑摩書房Amazonこの『魚にも自分がわかる』は、「魚の自己認識」、はてはその先の問いかけとして魚の知性について書かれた一冊である。魚は脳も小さいし、餌に飛びつくような本能的な動…