基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

『三体』の劉慈欣を代表するような作品が集められた、同時刊行の短篇集2冊──『流浪地球』『老神介護』

SF

流浪地球 (角川書店単行本)作者:劉 慈欣,大森 望,古市 雅子KADOKAWAAmazonこの『流浪地球』と『老神介護』は、『三体』で知られる中国を代表する作家劉慈欣の短篇集である。なぜ同時に二冊出てるんだ、と思うかもしれないが、KADOKAWAが翻訳権を得た劉慈欣の…

科学の世界に革命をもたらしえる力──『因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか』

因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか作者:ジューディア・パール,ダナ・マッケンジー文藝春秋Amazonこの『因果推論の科学』は、その名の通り因果推論について、その先駆者の著者が書いた一般向けのサイエンス本である。とはいえ、大半の人の反応は…

資金洗浄し放題になると何が起こるのか──『クレプトクラシー資金洗浄の巨大な闇―世界最大のマネーロンダリング天国アメリカ』

クレプトクラシー 資金洗浄の巨大な闇: 世界最大のマネーロンダリング天国アメリカ作者:ケイシー・ミシェル草思社Amazonこの『クリプトラシー資金洗浄の巨大な闇』は、米国でこれまで行われてきた資金洗浄の実態について書かれた一冊である。僕のような一般…

世界から昆虫が減少しつつある現代の状況について──『サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」』

サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」作者:デイヴ・グールソンNHK出版Amazonこの『サイレント・アース』は副題に入っているように、殺虫剤や農薬などの化学物質の危険性を訴えた「沈黙の春」の昆虫をテーマにした現代版とでもいうべき一冊だ。著者によ…

都市に人間が住めなくなるほど環境が悪化し、最後の原生地へと逃れた一群を描き出す、親子の愛憎の物語──『静寂の荒野』

静寂の荒野【ウィルダネス】作者:ダイアン クック早川書房Amazonこの『静寂の荒野』は、ニューヨークを拠点とするアメリカ人女性作家ダイアン・クックのはじめての長篇作品である。長篇は初だが、短篇ですでにデビュー済み。本邦でもすでに短篇集『人類対自…

ホームズがクトゥルーの古き神々と遭遇する大胆不敵なマッシュアップ──『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』

SF

シャーロック・ホームズとシャドウェルの影 (ハヤカワ文庫FT)作者:ジェイムズ ラヴグローヴ早川書房Amazon映画も含めたシャーロック・ホームズ関連作品はコナン・ドイルによる正典の他に数多くのパスティーシュ、クロスオーバー、二次創作で溢れかえっている…

すべてが成長する時代は終わり、素晴らしい停滞の時代が始まる──『Slowdown 減速する素晴らしき世界』

Slowdown 減速する素晴らしき世界作者:ダニー・ドーリング東洋経済新報社Amazonこの『Slowdown 減速する素晴らしき世界』は、世界人口の増加も、経済の発展も、平均寿命も、負債も、技術革新も、すべての「加速」が終わって減速、あるいは停滞に向か…

押井守による縦横無尽の続篇映画語り──『映画の正体 続編の法則』

映画の正体 続編の法則 (立東舎)作者:押井 守立東舎Amazon20年に『押井守の映画50年50本』という、1968年からはじまり1年に1本、「今の押井守にとって、その年を代表する映画」を語る本が刊行された。押井守は今まであらゆる媒体で映画について語っているが…

宇宙飛行士の著者による、アポロ18号を主軸に据えあり得たかもしれない宇宙開発の歴史を描く宇宙SF──『アポロ18号の殺人』

アポロ18号の殺人 上 (ハヤカワ文庫SF)作者:クリス ハドフィールド早川書房Amazonこの『アポロ18号の殺人』は、アポロ17号でアポロ計画が終わり、その後宇宙開発が停滞に入ってしまった現代とは異なり、アポロ計画が18号まで持続し、さらに米ソの戦いが宇…

人類はいかにして直立二足歩行へと至ったのか?──『直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足』

直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足作者:ジェレミー・デシルヴァ文藝春秋Amazon人類は高い知性など他の動物にみられない特徴をいくつも持っているが、そうした特徴の中でも最たるものの一つに、「直立二足歩行をしている」が挙げられる。…

サイバー戦争の実態を解き明かす、セキュリティ専門家による終末のシナリオ──『サイバー戦争』

サイバー戦争 終末のシナリオ 上作者:ニコール パーロース早川書房Amazonこの『サイバー戦争 終末のシナリオ』は、サイバーセキュリティを専門とし、《ニューヨーク・タイムズ》紙記者である著者が7年以上の月日をかけてセキュリティ関係者に取材を重ねて「…

ジョン・ル・カレ×クリストファー・プリーストと評された、EUが崩壊したヨーロッパを舞台とするSFスパイスリラー──『ヨーロッパ・イン・オータム』

ヨーロッパ・イン・オータム (竹書房文庫)作者:デイヴ・ハッチンソン竹書房Amazonこの『ヨーロッパ・イン・オータム』は本邦初紹介のイギリス作家デイヴ・ハッチンソンによるSFスパイ長篇となる。本作は西安風邪の蔓延によってEUが崩壊し、みながみな好き勝…