基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

人工知能学者とSF作家がタッグを組んで、AIの能力が向上し人間の仕事がなくなった未来の社会を想像する──『AI 2041 人工知能が変える20年後の未来』

AI 2041 人工知能が変える20年後の未来 (文春e-book)作者:カイフー・リー(李開復),チェン・チウファン(陳楸帆)文藝春秋Amazonこの『AI 2041』は、人工知能学者の李開復(元Google中国の社長)が2041年における未来予測と解説を担当し、『荒潮』などの著…

2043年、ブドウを死滅させるウイルスの蔓延によりワイン産業が危機に瀕した世界を描き出す、極上のワインSF──『拡散 大消滅2043』

SF

拡散 上 大消滅2043 (文春文庫)作者:邱挺峰文藝春秋Amazon『拡散』は、台湾の作家邱挺峰の作家デビュー作にあたる、近未来ワインSFである。最初、書名だけ見てありがちな終末SFだと思い食指が動かなかったのだが、読み始めてみればワインの愛好家によって書…

人工知能とボットに仕事の大半が代替され、多くの人間が薬物を服用し能力を向上しながら労働するようになった世界──『マシンフッド宣言』

マシンフッド宣言 上 マシンフッドセンゲン (ハヤカワ文庫SF)作者:S B ディヴィヤ早川書房Amazonこの『マシンフッド宣言』は、インド生まれのアメリカ人作家S・B・ディヴィヤの第一長篇となる。21世紀の近未来を舞台に、人工知能とロボットに人間の労働…

第12回アガサクリスティー賞大賞受賞作にして、医療的な仮想空間・介助用ロボットの可能性を謎解きと絡めて描き出す意欲作─『そして、よみがえる世界。』

そして、よみがえる世界。作者:西式 豊早川書房Amazonこの『そして、よみがえる世界。』は第12回アガサ・クリスティー賞の大賞受賞作である。前回のアガサ・クリスティー賞の受賞作は話題沸騰の逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』だったのでその次の選考に…

「幸せ」を追求するのはいいことなのか?──『ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常』

ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常作者:エドガー・カバナス,エヴァ・イルーズ,山田陽子みすず書房Amazon「幸せ」であることは、良いものであるように思える。なぜなら、幸せは良いものだからだ。トートロジーだが、こう考える人は多いだろう(…

飼い犬が野生に放り出された時、何が起こるのか?──『犬だけの世界:人類がいなくなった後の犬の生活』

犬だけの世界: 人類がいなくなった後の犬の生活作者:マーク・ベコフ,ジェシカ・ピアス青土社Amazonイヌを飼ったことがある人たちは家庭内で一度は、腹を出してごろんと寝ているイヌを眺めながら「これじゃあ(野生を失ってしまった家庭犬じゃあ)絶対野生に…

孤島に聳えるオメガ城へと6人の専門家+一人のジャーナリストが集められる、森博嗣最新ミステリィ長篇──『オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei's Last Case』

オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case (講談社ノベルス)作者:森博嗣講談社Amazonこの『オメガ城の惨劇』は、有料会員サービスへと移行したメフィストで目玉として連載されていた森博嗣による小説にエピローグを追加した長篇小説に…

異種移植の歴史と未来を語る本──『異種移植――医療は種の境界を超えられるか』

異種移植――医療は種の境界を超えられるか作者:山内一也みすず書房Amazon現代は臓器が損傷を受けたり病気で蝕まれた時、臓器移植という手段をとることができる。とはいえ、問題は多い。拒絶反応が起きないように考慮する必要があるし、そもそも臓器が欲しい人…

AIを搭載した義足と足を失ったダンサーが”共生”し、新しいダンスを作り出す、長谷敏司10年ぶりの最高傑作────『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』

プロトコル・オブ・ヒューマニティ作者:長谷 敏司早川書房Amazon長谷敏司、『BEATLESS』(2012)に続く10年ぶりのSF長篇がこの『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』になる。長谷敏司がその間何もしていなかったわけではなくて、短篇も数多く書いているし、…

誰もが手話ができる島には、耳が聴こえないことがハンディキャップにならない共同体ができた──『みんなが手話で話した島』

みんなが手話で話した島 (ハヤカワ文庫NF)作者:ノーラ エレン グロース早川書房Amazonこの『みんなが手話で話した島』は日本では最初に1991年に築地書館から刊行された単行本の、30年以上の年月を経ての文庫版である。テーマになっているのは、アメリカ・ボ…

ヒューゴー&ローカス賞受賞の、対話が可能なのかすらもわからぬ相手との決死の外交を描く宇宙・ファーストコンタクトSF──『平和という名の廃墟』

SF

平和という名の廃墟 上 帝国という名の記憶 (ハヤカワ文庫SF)作者:アーカディ マーティーン早川書房Amazonこの『平和という名の廃墟』は、前作『帝国という名の記憶』で長篇デビュー作ながらもヒューゴー賞を受賞したアーカディ・マーティンの第二作にして二…

脳内のニューロンを修復もすれば破壊もする、ミクログリア細胞について──『脳のなかの天使と刺客』

脳のなかの天使と刺客: 心の健康を支配する免疫細胞作者:ドナ・ジャクソン・ナカザワ白揚社Amazon近年、『「うつ」は炎症で起きる』などうつ病をはじめとした精神疾患と身体的な炎症の関係性が(一般向けの本でも)注目を集めるようになったが、本書『脳のなか…