基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2012-01-01から1年間の記事一覧

群衆の心理

僕はとにかく人が集まるというそれ自体が嫌いで、学校も嫌いだったしオタクだがコミケには絶対に行きたくないしライブにすら行きたくない。人間というやつは群れると羞恥心がなくなったり、とにかく個人では絶対にしないようなことをしでかすようになる。コ…

『大衆の反逆』オルテガ・イ・ガセット

大衆が社会にもたらした変転について洞察された名著。80年以上前に出版された本だけど今でも色褪せない。この当時から本書で指摘される「大衆」の持っている基本的性質は変わっていないし、それどころかそのダメな部分として指摘されているところはより増…

なんらかの事情

ねにもつタイプ - 基本読書 の続編エッセイ。たぶん翻訳家だけど、エッセイも書く岸本佐知子さんの最新エッセイ集で、その文章、発想はすごいの一言。異質な発想、異質な考えが一行で挿入され、そこから連鎖して途方も無いところにまで読者を引き連れていく…

羽月莉音の帝国

見たこともない風景、考えたこともない状況、加速度的にスケールアップしていく物語の規模、まったく想像の埒外にあるものの、現実に存在するルールにはのっとっている破天荒なアイディアの数々。全十巻の『羽月莉音の帝国』がみせてくれたのは、そうした『…

言語が違えば、世界も違って見えるわけ

丁寧でよい科学ノンフィクション。僕は日本語が母語なのでこうして日本語をてけてけと書いておりますが、仮に母語が英語だったら、僕の思考プロセスはどう「影響」を受けていただろうか。言語は思考に影響をおよぼすのか、およぼすとしたらそれはどの程度な…

必ず結果が出るブログ運営テクニック100 プロ・ブロガーが教える“俺メディア”の極意

プロ・ブロガーなるものがこの世に存在するようで、その人たちはいったい何を考えてブログを書いているんだろうなあという興味。著者は二人共ブログの収入で生活を送っているプロ・ブロガーで、ブログを書いていきていくためのテクニックを100個羅列して…

人はいかに学ぶか―日常的認知の世界 (中公新書)

人生の大半を学生として過ごしてきた影響か、はたまた就職しても「資格」や「テストの点」をとらなければ自分の能力を客観的に証明できない影響か、僕はどうも「学ぶ」というと学校でやるようなつらくて苦しく時間のかかるお勉強をイメージしてしまいます。…

1面トップはロボットアニメ

毎週いくつものアニメが放映される中、気軽に読めるアニメ読み物というのは意外と少ないのではないだろうか。Twitterをぼんやりと眺めていたら小原篤さんのアニメコラムが書籍化されると流れてきて、小原篤さんがどのような人間であるのかも知らずに帰りに書…

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

先日⇒古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)』 - 基本読書 この本について書いたけれど、せっかくだからオススメの文章本である『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』を紹介しようと思う。主にコンサルタントや、報…

水道橋博士『藝人春秋』

僕は長いことテレビ無しの生活をおくっていて、著者である水道橋博士なる人物が浅草キッドなるお笑いコンビ? の、つまるところお笑い芸人であるとか、ビートたけしの弟子筋にあたるとか、そうしたことを一切知らないで読み始めたのだった。しかも本書は「芸…

機械より人間らしくなれるか?: AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれる

これはたいへんおもしろくかつ今後の社会を考えていくにあたって重要であろう一冊。チューリングテストをご存知だろうか? 数学者のアラン・チューリングが1950年に提案した試験であり、人間の判定者が姿の見えない相手とチャットなどを使ってやり取りを行い…

マーク チャンギージー『ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ』

視覚について興味深い研究結果がわかりやすく解説されていて凄い。たとえば「色覚はなぜ残ったのか」という疑問に対する仮説はこれまでいくつも出ていたようだが、本書で紹介されるのは「人間の肌の色の変化を見極めるため」ではないかという仮説だ。他には…

古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)』

世の中には溢れんばかりに文章講義の本が出ている。僕も何十冊も読んできた。そこまでくるともはや「自分の文章を向上させたい」という当初の動機からはかなりズレて「この文章講義は既存の文章講義とどんな違ったことを書いているのか」を中心に見ていくこ…

ハンヌ・ライアニエミ『量子怪盗 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)』

気をつけろ。ちょっと分厚いSFでも読むか〜と軽い気分で本書を読み始めるとすぐに霧の中に放り出された時のような気分を味わうことになる。説明もろくにされずに意味不明な新語が乱立し、聞いたこともなければ想像も難しい概念が幾度となく飛び出し、自分が…

大塚英志『物語消費論改 (アスキー新書 228)』

物語消費論をWeb以降の文脈の中で検証し精算するために書かれたという本書。そうかだから改ってついているのか。暇だったので適当に手にとったのですが(僕が大塚英志さんの本を手に取るのは大抵日常の隙間にふっと眼に入ってきた時なのです)、物語消費論は読…

トーマス・トウェイツ『ゼロからトースターを作ってみた』

タイトル通りの一冊だ。無鉄砲で先を読まず、無秩序に「原材料からトースターを作ってみせましょう」といってのける大学生だった当時のトーマス・トウェイツ君の無鉄砲さから本プロジェクトは始まる。本当に「ゼロ」からトースターを創ろうと思ったらまずは…

まなめ『カリスマニュースサイト管理人が15年続けたシンプルな情報収集術 (impress QuickBooks)』

Kindleがさっき届いたので試し読みの一冊目に選んでみました。情報収集について読みやすく、伝えたいことが詰まっていて余計な情報を排除された凝縮した内容。たぶん一冊の本にはならないぐらい短いけれども、Kindle本だとこうやって短いけど凝縮したものが…

遠藤 浅蜊『魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)』

これは大変面白かった。16人の固有能力持ちの魔法少女が生き残りをかけて一つの町で殺しあうバトルロワイヤル物というだけで僕が大好きな要素が2つも入っていて嬉しくてしかたがなく(能力バトル物とバトルロワイヤル物)、かわいらしいキャラクタで覆って…

中谷 宇吉郎『科学の方法 (岩波新書 青版 313)』

50年以上前に書かれたものとは思えない、今でも色褪せない「科学の方法」について。今年読んだノンフィクションの中では最も感銘を受けた一冊。それ故にかなりの力を入れて紹介しようかとも思ったのだけど、既に本書を下敷きにして2つのエントリを書いて…

山野井泰史『垂直の記憶 (ヤマケイ文庫)』

この本がスゴい!2012: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる⇐スゴ本のダインさんが2012年ベストに選んでいる3作を、読まずにはいられない。シャンタラムは僕も今年の初めに読んだし、戦争の世界史は8000円もする(高い)。一番手に入…

アリストテレース『詩学 (岩波文庫)』

先日読んだ佐藤亜紀『小説のストラテジー (ちくま文庫)』の中ではこのアリストテレスの『詩学』が少し紹介されていました。いわく『フィクションを──特にエンターテイメント的なフィクションを志している方なら、一度は目を透しておくべき本です。』『物語を…

赤塚 聡『ドッグファイトの科学 知られざる空中戦闘機動の秘密 (サイエンス・アイ新書)』

ドッグファイト(英: dog fight)は、空対空戦闘において、戦闘機同士が互いに機関銃・機関砲または短射程空対空ミサイルの射界に相手を捉えようと機動する状態を指す用語。格闘戦、巴戦とも。──ドッグファイト - Wikipedia 戦闘機は実際にお目にかかること…

ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー : あなたの意思はどのように決まるか?』

心理学者でありながらもノーベル経済学賞を受賞したあのダニエル・カーネマンの新刊とあっては読まねばなるまい。ハードカバーの上下巻で存在感抜群だが、意思決定の限界とシステムについてここまで網羅的なものは初めて読んだ。 本書では脳の働きを架空の2…

佐藤亜紀『小説のストラテジー (ちくま文庫)』

文庫化されたので読んでみたら、これが創作と受け手側が交わった時、どのように「快楽が発生するのか」といった分析や、フィクションが他者に伝わるとはどういうことかを分析した「記述と物語の関係」、また「物語はどの程度必要なのか?」といった原理的な…

田崎晴明『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』

良い本だ。読みながらいろいろなことを考えた。たとえば、言葉の限界について。放射線という言葉があるが、いったいどれだけの人がこの言葉の持つ意味を精確に説明することができるだろう? 放射線とは放射性物質から出る高いエネルギーを持った電子、光子な…

ジェインジェイコブズ『発展する地域 衰退する地域: 地域が自立するための経済学 (ちくま学芸文庫)』

国家に注目をして経済を語るのではなく、都市を中心にみることで経済の流れがわかると、端的に言ってしまえばそういう話だ。そしてタイトルになっている発展する地域と衰退する地域の境目はどこにあるのかといえば、それは「輸入置換」を通して輸入したもの…

和田裕介『Webサービスのつくり方 ~「新しい」を生み出すための33のエッセイ (Software Design plus)』

これはおもしろかった。ちょうど来年の目標はいくつか実現してみたいWebサービスを形にするに設定していたところだったので、なんとなく読んだのだけど。33のエッセイと題されているように軽い読み物(ただしコードが結構書かれている)として、気負わずにWe…

津田大介『ウェブで政治を動かす! (朝日新書)』

Kindle版で読みましたとさ。ランキングに載っていたので暇つぶしに買ったのだけど、これが予想外に面白かった。ただノンフィクションの場合僕は線を引きまくり、本を真っ黒にしてしまうのが最近の傾向なのでKindle版ではそこがちょっとやりづらいですね(特に…

真木悠介『時間の比較社会学 (岩波現代文庫)』

普段僕らは時間に対してもっと有意義に過ごせるのではないかと思い、時間が過ぎ去っていくのをみながら何もしなかったことを後悔し、さらには自分が死んだ後もずっと世界は進んでいくのだと想像して、自分の人生が広い大海のほんの一部分でしかない、自分が…

島本和彦『熱血時代~アオイホノオからの30年~ (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)』

ぐああめちゃくちゃ面白かった。島本和彦ファンは必読。ファンじゃない人は……これを買うとハマってしまうだろう。島本和彦デビュー30周年記念本? 30年間の歩みを、本人へのインタビューと各年代を代表する作品の印象的な一話と共に振り返っていくのだが…