基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

これだけ楽しそうに映画を語る人を、僕は他に知らない。『Running Pictures: 伊藤計劃映画時評集 1』伊藤計劃

今は亡き伊藤計劃さんの、ウェブログ上に残された映画評をざっくりとまとめたもの。1とついているということは、2も出るのだろうか。正直、彼の死後出版された膨大なウェブログをまとめたタイプの書籍については、コンテンツの重複が多数みられ、死者を金…

さようなら、みんな『天冥の標 6 宿怨 PART3』:小川一水

可能な限りの想像力が打ち込まれた最高の物語がここにある。もうとにかく感無量という他ない。これだけの長大なシリーズが、一度もテンションを落とすことなくここまで続いて、さらにその凄さを増してきている。およそ考えたこともないような状況を現出させ…

人が生きていくためには物語が必要だ『敵は海賊・海賊の敵 (ハヤカワ文庫JA)』:神林長平

神林長平先生の戦闘妖精雪風に並ぶ人気シリーズ『敵は海賊』の最新刊が6年振りに発売された。こうして時間が経っても淡々と、当たり前のように出される新刊がとても嬉しい。毎度変わらぬ海賊・匋冥にこれを取り締まるアプロ、ラテルの迷刑事、彼らが巻き込…

並列的に読む方法とその利点

本の読み方を聞かれて改めて思い返してみたら割とシステマチックに多数の本を同時に読み進めていたのでいったんまとめておく。自分が少しでもたくさん、そして楽に読むためにやっていたらいつのまにかこの方法になっていた、というだけの話で、こうすること…

良い読者である為にはなにが必要なのか

ナボコフは自身の文学講義の中で良い読者になるためにはどうあるべきか、次の十の定義から四つを選びなさいといった。 1 読者は読書クラブに属するべきである。 2 読者はその性別にしたがって、男主人公ないし女主人公と一体にならなければならない。 3 …

見ることについて自覚的になる為に『イメージ: 視覚とメディア (ちくま学芸文庫)』:ジョン バージャー

著者であるジョン・バージャーは美術批評家なる肩書きをもった人物である。芸術として絵画をみるとき、それから商品を売ろうとするときの広告をみるときなど、それぞれのパターンで人が「見る」時にどのような社会的、文化的、メディアの違いからくる制約を…

めんどいけど、ひつよう。『MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体』:田端信太郎

たいへんおもしろく読みました。「メディアとは何か」といった基本的な問題からはじまり、メディアの分類、現代の情報環境についての抽象化した仕分け、デマが飛ぶと何が問題なのか、メディアのブランド価値とは何なのか、参加性と多様性のメディアの違いと…

善と悪とかどうでもいいが、人はやろうと思えばこんな凄いことが出来るんだなあ『夜見の国から~残虐村綺譚~』池辺かつみ

圧巻。アメリカでは銃乱射大量殺人事件が続くが、一人の人間でもやる気と健康な肉体と武器があればけっこう大層なことができる。というか、人をたくさん殺すことができる。善とか悪とかが言いたいわけではなく、単純な事実として、ひとりの人間がキレると、…

おもしろそうな洋書を探す日々

洋書は安いし読むのに時間がかかるから経済的である上にお勉強になるのでいいことづくめではあるものの、経済的には英語ブームがきて英語文法本を買いあさっているので結局あんまり変わっていない。とりあえず英文法は英文法のトリセツシリーズが最高にわか…

実のある言葉を読みたいなら。『ノマドと社畜 〜ポスト3.11の働き方を真剣に考える』谷本真由美

谷本真由美(@May_roma)さんはいつのまにか現れていて僕が気付いた頃にはすっかりネット界というかTwitter界の人気者かつ実力者という立場になられていた。ちなみに谷本真由美さんのことを知ったのは2日前にCakesの記事を読んでからなので、えらそうに紹…

世界認識はひとつじゃない『動物と人間の世界認識―イリュージョンなしに世界は見えない 』日高 敏隆

森の中にはダニがいる。木の上とかにいる。ダニはそこで獲物をじっと待っている。混血動物の生き血が栄養源だからだ。だから混血動物が木の下を通り掛かるのを待っている。たまたま哺乳類が通ると、ダニは即座に落下してその身体にとりつく。どうやって哺乳…

環世界が合わない同士は合わせづらいものよ。『人間仮免中』

統合失調症を煩いながら25歳年上の彼氏と生きたり死にかけたりしながら日々を生きる実録日常漫画。日常とはいえ大きなイベントを扱っていて、一巻でいちおうまとまっている。まあとにかく、おもしろかった。絵が中学生ぐらいの子が描いたような感じだし、…

経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み (中公新書):猪木武徳

経済学が完璧だったことはない。なんどもバブルを繰り返し恐慌を繰り返してきた。安定したインフレ状況などを通じて俺たちはそんな時代をもはや過去のものにしたぜガハハと笑っていたほんの数年の期間もあったがその直後に恐慌が起こったりして、それ以来多…

なぜ本を読むのか

「なぜ本を読むのか」などと、読書を日常の動作とし、趣味をこえて生き方にまで干渉している人間が言い始めたらそれはひとつの異常事態である。が、何を隠そうこの僕こそがこの数カ月「いったい自分はなんでこんなアホみたいに本を読んでいるんだろう」「ア…

さいきん経済について学ぶのがおもしろい

大学では経済専攻ということに建前上なっていたのだが、経済学の必要単位の中になぜか哲学の講義とか文学の講義とかまったく関係なさそうなものが多数含まれていて、そんなのばっかりとっていたら結局経済のけの字もわからずに卒業してしまった大馬鹿大学生…

積読のいいところを考える

僕は基本的に積読をしません。読むものを買って、読み終えたら次の物を買うのです。先に読もうと思うんだったら先に買えばいいじゃん、今買って部屋を無駄に圧迫する必要ないじゃん、と思っているわけですね。まあだから積読が減らないなどという発言をTwitt…

だらしなく生きる

僕はとにかく片付けが出来ない人間だった。小学生の時、僕の机の上にはものが出しっぱなしで、机の中にもゴミだかガラクタだかよくわからないものが散乱していて通知表にはいつもその事が書かれていた。今でも読んだ本はそのへんに出しっぱなしだし、ブログ…

『国際秩序 - 18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ (中公新書)』細谷雄一

すごく良い本。ニュース情報を聞いているだけだとついつい日中関係や日米関係、日韓関係といった二者関係を前提に全てを捉えてしまう中、国際秩序を面として捉え、乱立する大国間でどう秩序が保たれてきたか、表向きの条約や協定、その背後で動いている論理…

映画『ホビット 思いがけない冒険』

三時間近い長丁場ということでなかなか行けずに躊躇していたんですがこれがまあ素晴らしい。なんというかピーター・ジャクソン監督のこの世界は観ると「わあ、帰ってきた」という気分にさせられる。壮大な青空、険しい山道、のどかな森の中、薄暗くゴミゴミ…