基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

皆殺し映画通信 by 柳下毅一郎

これはかなり凄いぞ。一冊読むだけで日本映画の見取り図を手に入れられるの。かなりダメな見取り図だが。日本映画ばかりをレビューしていくのだがことごとくツッコミが入る。つまらないなら見るなよ、というのが何かにたいして「つまらない」といったときに…

ロボットと未来について

Immigrants from the future | The Economist New roles for technology: Rise of the robots | The Economistロボット産業についての話で面白い記事だった。ロボットというのは人間が行けない場所にいったり、人間にできないことをやらせたり、あるいは肩代…

イリヤの空、UFOの夏 by 秋山瑞人

どうしてか死ぬほど面白い物語を書く作家に限ってやたらと書くのが遅かったり出なかったり完結しなかったりする。秋山瑞人はそうした要素をすべて兼ね揃えている作家の一人だ。原作付きの『E.G.コンバット』で1992年にデビューして以来20年以上のキャ…

マネーの支配者: 経済危機に立ち向かう中央銀行総裁たちの闘い by ニール・アーウィン

これはいいcentral banker物。中央銀行物といえば経済学なんてものがまるでなかった果ての国に経済学を導入して立て直していく物語(実話だが)の傑作であるルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書) - 基本読書があるが、本作は世界中の経済を危機に陥れないた…

借りの哲学 (atプラス叢書06) by ナタリー・サルトゥー=ラジュ

本書は「借り」の哲学について語っている。大学生の頃は新自由主義にかぶれていたものだった。ところが誰もが自由であるといっても誰もが「産まれた時から国家というシステム、歴史によって創りあげられたシステム」の中で生きるという「借り」を背負ってい…

2014オールタイム・ベストSF(検討中)

SF

ハヤカワ・オンライン|早川書房のミステリ・SF・ノンフィクション:新着ニュース早川がオールタイム・ベストSFアンケートというものをやっている。今まで一回も選んだことがなかったのでこの機会に一度選んでおこう。順位付けと五作に絞るのが難しくていった…

Afrofuturism: The World of Black Sci-Fi and Fantasy Culture by YtashaL.Womack

Afrofuturismという言葉があるらしい。知っているだろうか。Afroは髪型のアフロをさしているわけではなく、この場合アフリカ系の、という意味だ。Afro-Americanであるならばアフリカ系アメリカ人、というわけだ。本書の言葉を借りるなら「一般的にいってAfro…

フラニーとズーイー、訳文を比較してみる

フラニーとズーイ (新潮文庫 サ 5-2) by サリンジャー - 基本読書を久しぶりに読み直して、やはり傑作だと確信を得たが、読んでいて「どうもかつて読んだものと随分違うような気がするなあ」という違和感が常につきまとっていた。訳が違うのだからあたりまえ…

星の涯の空 by ヴァーナー・ヴィンジ

SF

ヴィンジの新作だー、と喜んで飛びついた人間はいったいこの日本にどれぐらいいるんだろう。なんだか全然話題になっていない。なかなかお目にかかれない奇想と、それを支える世界の土台を入念に作りこんでいき、しかもそこに大きなプロットを複数走らせてぐ…

Privacy is dead『Dragnet Nation』 by JuliaAngwin

日本だとあまり話題になることもないが、privacyの侵害が安全と比べた時にどの程度まで許されるべきものなのかという議論が米国では活発だ。GoogleのサービスであるGmailはメールの中身を読み取って内容に合わせた広告を出してくるし、検索履歴から滞在時間…

エピゲノムと生命 (ブルーバックス) by 太田邦史

実際のところ身長や体重については生まれつき決まっている部分が少なくはないこと(一卵性双生児についていえば90%程度の類似率)がわかってはいる。たとえば一卵性双生児で読書障害を持つ割合は6割近くなるし、自閉症やアルツハイマーも共に50%程度の相関…

ウンベルト・エーコ 小説の森散策 (岩波文庫)

もうすぐ絶滅するという紙の書物について by ウンベルト・エーコ,ジャン=クロード・カリエール - 基本読書 を読んでからエーコを読むぞモードに入っている。熱が続く限り、エーコ本を次から次へとレビューしていくがまずはこれからいこう。『ウンベルト・エ…

〔少女庭国〕 (ハヤカワSFシリーズJコレクション) by 矢部嵩

SF

位置付けるのが非常に困難な小説で、その新機軸っぷりが楽しく、唯一無二であっという間に見たこともない場所へ連れて行ってくれる怪作が、この『〔少女庭国〕』だ。なんとしてこのお話を、読んでいない人間に面白く伝えたものかと、今画面の前で途方にくれ…

もうすぐ絶滅するという紙の書物について by ウンベルト・エーコ,ジャン=クロード・カリエール

本好きの中でも頂点といってもいい領域にいる二人、ウンベルト・エーコとジャン=クロード・カリエールの対談本になる。この二人(あわせて蔵書10万冊)が、その書物の世界、その迷宮のような果てしなさと繋がりを擬似的に体験させてくれる。本好きのなかに…

He's a clever son of a bitch『The Martian』 by AndyWeir

いやあ、これは抜群に面白かった。元は著者のAndyWeirによってkdpで個人出版されたものの人気が爆発して最近ちゃんとした出版社から再出版された作品。シンプルながらそのオリジナリティは他の比するものがなく、先がわからないどきどき感と「今自分はかつて…

マインクラフト 革命的ゲームの真実 (単行本) by ダニエル・ゴールドベリ,リーヌス・ラーション

マインクラフト自体への分析が主な本かと思いきや、製作者であるマルクスの個人的な人生に文章が割かれている。本人が書いたものならまだましだが、ただのちょっと文章を盛り上げていくのがうまいだけのノンフィクション作家が書いた、雑な伝記はかんべんし…

文体について

自分の中でひとつの文体が固まってきた感覚がある。七年もblog書いて、書いた総文字量が四百万文字を越えようかというのだから、いまさらな話ではある。つい最近までひとつの記事の中でですますとだ、であるが混ざっているぐらいだったから、月日も書いた分…

仁義なきキリスト教史 by 架神恭介

これは面白かった。キリスト教史の登場人物たちを、ヤクザに置き換えて小説として再構成している。一発ギャグのような思いつきで一冊書き切ってみせたその筆力が凄い。そしてやくざと宗教の見立ては読んでみると驚くべきことによく馴染む。何を言っているの…

脳と機械をつないでみたら――BMIから見えてきた (岩波現代全書) by 櫻井芳雄

これは良書。書名にあるBMIとはBrain Machine Interfaceの頭文字をとった略称で、脳で機械を直接操作するシステムのことを主に指している。これにより自身の身体が動かせなくても自身の分身のように機械を自在に動かせるようになったり、パソコンのマウスを…

Beyond the Rift by PeterWatts

『ブラインドサイト』のピーター・ワッツによる最新短篇集。長編であるブラインドサイトはなかなかの出来だったけれど、短篇集はどうかな、と思ったら、これがまた凄い。長編より短編の方がむしろキレているのではなかろうか。もちろんブラインドサイトの評…

フラニーとズーイ (新潮文庫 サ 5-2) by サリンジャー

久しぶりに読み返してみた。僕のような特に専門教育も受けておらず特段の極秘情報を持つわけでもない人間がこうした感想を書くことにドレほどの意味があるのかわからないが、サリンジャーの作品はどれも僕の中で深く根を下ろしていて読むとやはり引き込まれ…

KDPで本を出すことについて

冬木糸一のサイエンス・フィクションレビュー傑作選作者: 冬木糸一出版社/メーカー: 冬木糸一発売日: 2014/02/21メディア: Kindle版この商品を含むブログ (14件) を見るKindle ダイレクト・パブリッシング (KDP) で本を出しました。サイエンス・フィクション…