基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧

寄生虫なき病 by モイセズ ベラスケス=マノフ

これは素晴らしいと思ったがちょっと難しい本だ。内容が難解なわけではなく、これを受け取ってどう判断したらいいのか難しいという意味で。本書の主張自体はむしろ明確であり、シンプルであり、非常にわかりやすいものだ。「我々の環境は殺菌されすぎており…

月の部屋で会いましょう (創元海外SF叢書) by レイ・ヴクサヴィッチ

SF

岸本佐知子さんの名前が訳者にある時点でこの本がへんてこであることは確定的に明らかなのであるが、それはそれとしてこの本はとてもおかしい。普通人は読むときに、次に起こることを、次に来る文章を予測しながら読むものだ。人間が立ち上がれば動くし、思…

霧に橋を架ける (創元海外SF叢書) by キジ・ジョンスン

SF

SFというよりはファンタジーを主体にした短篇集。短いものはほんの数ページで、表題作だけ特別に長く100ページなので、ショートショート集のような趣きがある。短い話にもかかわらず強烈な「感覚」を感じさせる作品が多い。それは違和感であったり、いらつき…

あなたのなかの宇宙:生物の体に記された宇宙全史 by ニールシュービン

宇宙は随分昔にどかーんと爆発してどかどかどかーっと広がっていって今も広がり続けていて、その時爆発により発生した莫大なエネルギーから物質が産まれ、宇宙が膨張と冷却をしていくうちにあれやこれやがその辺でこねこね固まっていって地球っぽいものとか…

脳科学は人格を変えられるか? by エレーヌフォックス

原題がRainy Brain, Sunny Brainなのでまた大きく書名を変えたものだが、本書の中心的な主題は「なぜ悲観的な性格と楽観的な性格があるのだろう」「どのような要因でこうした性格が決定づけられているのか」「こうした性質は変更することができるのだろうか…

絶対音感神話: 科学で解き明かすほんとうの姿 (DOJIN選書) by 宮崎謙一

「ほんとうの姿」と副題にあるように、「実際絶対音感ってどうなのよ」という一冊になっている。「どうなのよってなんなんだよ」と思うかもしれないが、たとえば「そもそも絶対音感ってどういう能力なわけ?」「何人に一人ぐらいの割合でいるんだ」「という…

プリティ・モンスターズ by ケリー・リンク

小説を読んでいると完全にキャラクタの心情が掴める、あるいはぐっと身近な物に感じられ家族か何かのように親しみを持つ一文や、その世界そのものへの愛着へとつながるような、「何かが完全に適切なやり方で表現されていることへの感動」を覚える一文という…

The Happier Dead by Ivo Stourton

Ivo Stourtonは日本では既訳の本はあるのかな? Ivo Stourton 翻訳で調べても出てこなかったけど、まああまりメジャーな作家ではないことは確かだろう。2007年にデビューした後、これまで『The Night Climbers 』と『Book Lover's Tale 』の二冊を出していて…

第一次世界大戦 (ちくま新書) by 木村靖二

今でこそ「第一次」世界大戦となって世界中に知れ渡っているが当時は当然第二次がないのだから第一次もクソもなく、それどころか開戦時は今知られているような大規模な戦争に発展してしまうと考えていた人間も少なかった。戦争が起こるにいたった起点も今か…

問題をどう解くか: 問題解決の理論 (ちくま学芸文庫 ウ 22-1) by ウェイン・ウィケルグレン

1980年に出ていたものがちくま学芸文庫にて最近文庫化されたので初読み。これは名著だ。たくさん「この人は頭の回転が速いなあ」と思う人にあってきたが、頭の良さにもいくつかのパターンがある。純粋に計算能力や記憶能力が良いといった地力が強いタイプ。…

アカマイ 知られざるインターネットの巨人 by 小川晃通

あ、アカマイの本が出たのか、と思って購入。ある面においてはGoogleと同じぐらい重要な企業にもかかわらずあまり表には名前が出てこない企業なので詳細な解説本が出るのならと一も二もなく飛びついてしまった。何がそんなに凄いかって数年前まで世界のWebト…

チャイナ・ハッカーズ by ウラジミール

昨年春に米セキュリティ会社・マンディアントが発表したレポートを読んでから初めてサイバー戦争関連の情報に興味を持つようになった。同レポートによれば、中国人民解放軍直下の大規模なサイバー攻撃部隊が米軍や関連企業にサイバー攻撃をしかけてきている…

ゴーストマン 時限紙幣 by ロジャー・ホッブズ

小説の文章というのは不思議なものだ。何十年書き続けた作家の文章が円熟の極みに達する──ということはあまりない。下手なヤツはそこそこうまくなる可能性がある。一方で上手い文章を書く奴はその一番最初の作品からして、どうしようもなく引き込まれる文章…

ミッキーマウスのストライキ!: 米国・アニメ労働運動100年史 by トム・シート

元ディズニー・スタジオのアニメーターでもある著者の書いた、労働組合運動史。そもそも労働組合運動の歴史なんてものをあまり読んだことがなく、アニメーターのともなれば皆無だ。日本でもアニメ制作業者たちの労働環境の劣悪さなどはたびたび問題にあがる…

星を創る者たち by 谷甲州

SF

この『星を創る者たち』は谷甲州氏による宇宙土木シリーズを一冊にまとめたもの。宇宙土木シリーズってなんだそれ、凄い言葉のインパクトだなと思うがのちに説明する。何冊もあるシリーズのうちの一冊というわけではなく、連作短編集の形としてこの一冊で完…

素直に生きる100の講義 by 森博嗣

100の様々な発想を元に、1発想につき見開き2ページで簡単なエッセイが書かれている本。100の講義シリーズの第三弾だ。ただ、内容につながりがあるわけでもないので別にこれから読んでも問題ない。定期的に出るので森博嗣さんの日記のように読んでしまう。内…

RPF レッドドラゴン

TRPGの手法を用いて「最高のフィクション」を生み出すためのシステムなどといって出てきたロールプレイングフィクション(RPF)などというイマイチよくわからないものが最初このレッドドラゴンのウリ文句だった。それってようはTRPGのリプレイってだけでしょ…

SFマガジン700【海外篇】とSFマガジン700【国内篇】

SF

多数の作家が入り乱れて短編を寄稿するアンソロジーが僕はあまり好きではない。多数の短編が味わえるといっても、作家ごとに好みに差は出てくるし、それ以上にクォリティに差が出てきて面白くないものが連続したりすると買ったことを後悔してしまう。何より…

読書会『SFマガジン700【海外篇】』の開催報告書

昨日8月3日に大阪駅周辺にて『SFマガジン700【海外篇】』を題材にして読書会をやってきました。無事6名の方に参加表明いただき(当日体調不良1名発生により読書会自体は5名)、だんだん賑わってきました。この読書会、正式名称は誰得読書会というのです…

原作と映像の交叉光線 by 千街晶之

なんだかかっこつけた題名だが、ようは原作付きで映像化された作品を原作と比較しながら読んで(みて)いこうという、ただそれだけの本である。ただそれだけといっても原作の映像化は全部が全部同じようになるわけではない。原作にできるかぎり、セリフまで…

情報汚染の時代 (角川EPUB選書) by 高田明典

ツイッターにタンブラーに動画サイトにアルゴリズムで自動的にニュースを取得してくるサイトに……今やどこにいっても常時更新が行われるサイトばかりで、情報を取得して時間を潰そうと思えばいくらでも出来てしまう。いたるところで情報が吐出されて、話題は…