基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

コールドスナップ・対談集・未必のマクベス

Cakesの連載の中で僕が一番楽しみにしているものがあって(まあ有料には入ってないんだけど……)、それは新・山形月報! なのだ。⇒新・山形月報!|山形浩生|cakes(ケイクス) 一ヶ月に一回だったり二回だったり不定期ではあるのだが、一回一回手短に様々な…

文章のスタイルはいったいいつ確立されるものなのだろう

村上春樹の初期エッセイをなんとなく今読み返している(村上春樹堂シリーズ)。村上春樹という作家はデビューが割合遅かったこともあってか、出てきた時点でほとんど文体が完成している作家だった。エッセイの調子も、小説の文体も、もちろんその後の研鑽を…

経済は「競争」では繁栄しない――信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす愛と共感の神経経済学 by ポール・J・ザック

これは面白かった。書いてあること自体は物凄くシンプルだ。オキシトシンという化学物質が人間の中で増量することによって、いつもより優しく、寛大で、協力的で、思いやりのある行動をとるようになりますよという話で、延々と様々な実験結果を参照しながら…

疎外と叛逆ーーガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話

ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサ(リョサじゃなかったっけか?)といえばつい最近ジョサの方が(慣れ慣れしいなおい)ノーベル文学賞をとったこともあって、二人共名実ともに世界的大作家の感がある。本書はその二人が1967年に行った対話(バルガス・…

医療の選択 (岩波新書) by 桐野高明

国家を考える時にそこに問題がないことはありえないが、とりあえずおおまかな分類としてエネルギーや教育、政治、地方自治に加え医療含む福祉をどう分配するのかなどは重要な論点となるだろう。本書はその中でも特に医療について我々はどのような選択肢をと…

地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか: 太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来(DOJIN選書) by 宮原ひろ子

「宇宙気候学」について書かれた一冊。いや〜けっこうこの手の本は読んでいる方だと思っていたんだけど宇宙気候学なんて聞いたことがなかった。本書の副題にもなっているが、地球も太陽系の中の一つの惑星として存在して、宇宙からの影響を受けているという…

Invisible Beasts by Sharona Muir

いんびじぶるびーすつ。目に見えない獣が人類を襲う──! 的なパニックサスペンスSFかとおもいきや見えない動物を見ることのできる目をもった女性が、生物学的な分析というよりかは、自分が観察してわかったことなどを体験談を交えて語っていくスタイルだった…

突変 (徳間文庫 も) by 森岡浩之

SF

作家・森岡浩之とはこういうものも書けるのか、とまったくもって驚きの作品。これまでどちらかといえばライトノベル的な、ノリの軽いアクション物や少年少女のスペースオペラを書いてきた森岡浩之が突然出してきたがこの特殊災害サスペンスSF『突変』。この…

プロット・アゲンスト・アメリカ by フィリップ・ロス

人間の一生、人間の理性なんてものは時代の流れに嫌でも影響を受けてしうまうひ弱なものだ。あまりにも当たり前の話だが、アインシュタインが石器時代に生まれていたら何もできない。ユダヤ人の虐殺が行われているときに、迫害される側として理性をいくら保…

地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書) by 増田寛也

人口減少への各種統計数値をベースにした危機の解説とその対策案が主な内容で、危機に関しても対策に関してもそれぞれまったくその通りだと頷く内容。一方で疑問点としては、人口減少速度を低下させるための対策が必要なことは確かだけど、仮定として今後1…

柴野拓美SF評論集 (理性と自走性――黎明より) (キイ・ライブラリー) by 柴野拓美

『宇宙塵』なる日本SF界屈指の同人誌を主宰者として発行、長年編集長として活躍し、同人誌でありながら多数のプロ作家を見出し、自身も翻訳活動、解説など様々な文章を書いてきた柴野拓美氏の評論集になる(2010年没)。いやあ、これは良い本だった。「…

あのひととここだけのおしゃべり―よしながふみ対談集 (白泉社文庫) by よしながふみ

漫画家・よしながふみさんが女性漫画家・小説家(やまだないと、福田里香、三浦しをん、こだか和麻、羽海野チカ、志村貴子、萩尾望都)と少女マンガについて語ったりフェミニズムについて語ったりボーイズラブについて語ったり表現について語ったりする対談…

人間は料理をする by マイケル・ポーラン

さいきん時間に余裕ができたので自分で料理をするようになって、最初はレシピを見て普通に作っていた。やってみるとこれがけっこう愉しいものである。「出来たものが店先に並んでるんだからそれを買って自分の時間を自由に使うのが良いんじゃないの」と思っ…

狼少女たちの聖ルーシー寮 by カレンラッセル

大人になったとしても、みな子供の時の原初的な恐怖みたいなものを覚えているものではないだろうか。僕の場合は両親が喧嘩をしているのを見る度に「この二人は離婚するのではないか」「その場合自分はどうしたらいいのか」とずっと考えていたことを覚えてい…

未必のマクベス by 早瀬耕

徹夜小説という、面白すぎて徹夜してしまうような小説に対する呼び方がいつから出来たのかあいにくわからないが、僕は好きな本ほど徹夜したくないと思う。徹夜したくなるほど面白い小説であればこそ、集中力が落ちた状態で一読めを乗り切ってしまうことにも…

The Madonna and the Starship by James Morrow

James Morrowの新作。この人名前に聞き覚えがあったんだけど翻訳は本としてはないようだ。ただ短編がSFマガジンにはどうも載ったことがあるみたい※@biotit(橋本輝幸)さんに教えてもらいました。ありがとうございます。@huyukiitoichi 短篇は翻訳されてます…

ぼくらの映画のつくりかた by 機本伸司

機本伸司さんはもともと『神様のパズル』や『メシアの処方箋』などのように、どちらかといえばハード系に分類されるようなSFを書いてきた作家の一人で、ライトノベル的なキャラの立て方と作風のハードさがあいまったところが好きだったのだけどそういえば名…

Memory of Water by Emmi Itaranta

作家:Emmi Itarantaのデビュー作。ほとんどの情報が明かされないまま話が進行していく、世界崩壊後の世界を描いたもの。洋書SFをあさっているとほんとに今はこの手の「世界崩壊後の人類」を書いた dystopian fictionが多くてお前らそんなに今の世界を崩壊さ…

西尾維新対談集 本題

いやあこれは面白かった。西尾維新と五人(小林賢太郎、荒川弘、羽海野チカ、辻村深月、堀江敏幸)の対談集。西尾維新という作家は読者が多いだけにいろいろと否定的なことを言われることも多いし個別の作品をみていくとまたクォリティにばらつきがあるけれ…

コールド・スナップ by トム・ジョーンズ

舞城王太郎訳に惹かれて読もうと思った人間がいるだろうが、僕はそのうちの一人である。10篇の短篇集。舞城王太郎文体を求める人間にとっては期待通りの一冊となるだろうし、それ以上にトム・ジョーンズという作家の凄さに気がつくことになるだろう。これほ…