基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

未来の社会の在り方に大きな影響を与える『2050年 世界人口大減少』から再生可能エネルギーへの転換を問う『グローバル・グリーン・ニューディール』などを紹介(本の雑誌2020年5月号掲載)

ふりかえり 2020年5月号に書いた本の雑誌原稿の転載をする。この月はなんといっても『2050年 世界人口大減少』が良い。人口が与える影響は経済のみならず環境や政治体制にも大きな影響を与えるので、この数字が将来的にどうなるのかは未来を見通す上では…

財政赤字は、新型コロナ危機を脱する唯一の道という現代貨幣理論の理屈──『財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生』

財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生作者:ステファニー ケルトン発売日: 2020/10/06メディア: Kindle版この『財政赤字の神話』は、アメリカの経済学者でMMT(現代貨幣理論)の第一人者、民主党のチーフエコノミストやバーニー・サンダース上院議員…

イスラエルのSFを集めた、恐ろしく質の高い傑作アンソロジー──『シオンズ・フィクション』

シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選 (竹書房文庫)発売日: 2020/09/30メディア: 文庫この『シオンズ・フィクション』は、イスラエルSFの傑作16篇を集めたアンソロジーである。訳者の一人である山岸真さんが本の雑誌などで凄い凄いと書いていたので期…

なぜ今感染症のリスクが増大しているのか──『史上最悪の感染症 結核、マラリアからエイズ、エボラ、薬剤耐性菌、COVID-19まで-』

史上最悪の感染症: 結核、マラリアからエイズ、MERS、薬剤耐性菌、COVID19まで作者:オスターホルム,マイケル,オルシェイカー,マーク発売日: 2020/08/26メディア: 単行本COVID-19が2019年から流行をはじめてから、日本でも怒涛の勢いで感染症関連のノンフィク…

第二次世界大戦で枢軸側が勝利することで、日本合衆国が爆誕した世界を描き出すロボ・バトル物、三部作が完結!──『サイバー・ショーグン・レボリューション』

サイバー・ショーグン・レボリューション (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者:ピーター トライアス発売日: 2020/09/17メディア: 新書この『サイバー・ショーグン・レヴォリューション』は、第二次世界大戦で枢軸側が勝利し、日本合衆国が爆誕。しかも日本合衆…

時間旅行が当たり前になった世界特有の精神病理を描き出す、時間SF✕ミステリ──『時間旅行者のキャンディボックス』

時間旅行者のキャンディボックス (創元推理文庫)作者:ケイト・マスカレナス発売日: 2020/09/10メディア: Kindle版この『時間旅行者のキャンディボックス』はケイト・マスカレナスのデビュー作にして、時間旅行が当たり前に存在する世界での様々な精神的な病…

人類の英知がこの一冊に詰まった文明速攻再始動マニュアル──『ゼロからつくる科学文明 タイムトラベラーのためのサバイバルガイド』

ゼロからつくる科学文明 タイムトラベラーのためのサバイバルガイド作者:ライアン ノース発売日: 2020/09/17メディア: Kindle版この『ゼロから作る科学文明』は、もしもあなたがタイムトラベラーではるかな未来から過去の世界に飛んでしまい、さらに戻る手段…

テクノロジーの進歩で記録はどれだけ伸びてきたのか──『スポーツを変えたテクノロジー アスリートを進化させる道具の科学』

スポーツを変えたテクノロジー―アスリートを進化させる道具の科学作者:スティーヴ・ヘイク発売日: 2020/09/15メディア: 単行本スポーツとテクノロジーは切っても切れない関係だ。ほぼ裸の人間が水中を泳ぐだけの水泳のような一見テクノロジーが一切関係ない…

老化は治療可能な病気である──『LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界』

LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界作者:デビッド・A・シンクレア,マシュー・D・ラプラント発売日: 2020/09/16メディア: 単行本この『LIFESPAN』は、老化の原因と若返りに関する研究者/長寿研究の世界的権威であり、同分野で50件に及ぶ特許を取得し10以…

人類の理性と共感を信頼するピンカー『21世紀の啓蒙』から国家の自由を問う『自由の命運』などを紹介(本の雑誌2020年4月号掲載)

まえがき 本の雑誌2020年4月号に掲載された新刊めったくたガイドの僕が書いたノンフィクションガイドをここに転載します。この号は非常な大作揃い。この本が日本で刊行された後に色々と騒動が持ち上がったスティーヴン・ピンカーの大作『21世紀の啓蒙』から…

自然界に存在する準結晶を求めた、科学者の大冒険──『「第二の不可能」を追え! ――理論物理学者、ありえない物質を求めてカムチャツカへ』

「第二の不可能」を追え! ――理論物理学者、ありえない物質を求めてカムチャツカへ作者:ポール・J・スタインハート発売日: 2020/09/03メディア: 単行本2011年のノーベル化学賞を受賞したのは準結晶の発見をしたシェヒトマン博士だった。「準結晶」とは、説明…

不眠症に睡眠時無呼吸から睡眠時性的行動症まで、多様な睡眠障害の症例を解き明かす極上の一冊──『眠りがもたらす奇怪な出来事: 脳と心の深淵に迫る』

眠りがもたらす奇怪な出来事: 脳と心の深淵に迫る作者:ガイ・レシュジナー発売日: 2020/08/26メディア: 単行本この『眠りがもたらす奇怪な出来事』は、睡眠医学が専門で長年睡眠障害センターで勤務するガイ・レシュジナーによる、睡眠にまつわる様々な臨床例…

予知能力を持った一人の女性の人生を2043年まで描きあげた『クラウド・アトラス』著者による幻想文学──『ボーン・クロックス』

SF

ボーン・クロックス作者:デイヴィッド ミッチェル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版この『ボーン・クロックス』は、19世紀から第二次世界大戦前、1970年代に現代ロンドンと幅広い年代&場所&職業の人間を通して一枚の複雑な絵を描きあげた『クラウド・…

都市ならではの生物多様性──『都市で進化する生物たち』

都市で進化する生物たち: ❝ダーウィン❞が街にやってくる作者:スヒルトハウゼン,メノ発売日: 2020/08/18メディア: 単行本通常、都市は人間以外の生物にとって良い環境とは思われていないだろう。緑や自然を切り開き、種の多様性を減少させる、必要悪的な存在…

続きがでなくて悲しかった最近のSFたち

25日発売のSFマガジン2020年10月号、ハヤカワ文庫SF50周年号で、50周年を記念して渡邊利道さん、鳴庭真人さんと僕の3人で座談会をやっています。SFマガジン 2020年 10 月号発売日: 2020/08/25メディア: 雑誌あまり明確なテーマはなくざっくばらんに最近のハ…

二人殺すと天使によって地獄に引き摺りこまれるようになった世界で起こる連続殺人事件を描き出す特殊設定ミステリ──『楽園とは探偵の不在なり』

楽園とは探偵の不在なり作者:斜線堂 有紀発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版本書は、メディアワークス文庫から『キネマ探偵カレイドミステリー』でデビューした斜線堂有紀による、二人以上の人間を殺すと天使によって地獄に引き摺りこまれるようになった…

あり得たかもしれない宇宙開発史を描き出す、主要SF賞総なめの話題作──『宇宙へ』

宇宙【そら】へ 上 (ハヤカワ文庫SF)作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF)作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版この『宇宙(そら)へ』は、メアリ・ロビネッ…

タイポグラフィがどのようにSF映画の物語に寄与しているのか?──『SF映画のタイポグラフィとデザイン』

SF映画のタイポグラフィとデザイン作者:デイヴ・アディ発売日: 2020/08/18メディア: 大型本この『SF映画のタイポグラフィとデザイン』は、まさにその名の通りにSF映画に存在するタイポグラフィとデザインに集中して取り組んだ一冊である。大型本で、所狭し…

進化と物理法則のつながりを深堀りする傑作『生命の歴史は繰り返すのか?』やスノーデンが半生を綴る『独白:消せない記録』などを紹介(本の雑誌2020年3月号掲載)

まえがき 本の雑誌2020年3月号に掲載された新刊めったくたガイドの僕が書いたノンフィクションガイドをここに転載します。連載3回目。毎月連載なんで「いやー紹介したい本がいっぱいあって困っちゃうなー」という時もあれば「そんなでもないな……」みたいな月…

基礎科学の重要性──『「役に立たない」科学が役に立つ』

SF

「役に立たない」科学が役に立つ作者:エイブラハム・フレクスナー,ロベルト・ダイクラーフ発売日: 2020/07/29メディア: 単行本この『「役に立たない」科学が役に立つ』はプリンストン高等研究所のエイブラハム・フレクスナー(1866-1959)、ロベルト・ダイクラ…

押井守の演出・映画論が(自分のも他人のも)堪能できる映画半世紀──『押井守の映画50年50本』

押井守の映画50年50本 (立東舎)作者:押井 守発売日: 2020/08/12メディア: 単行本この押井守の映画50年50本は、1968年から始まって一年に一本ずつ、「いまの押井守にとっての、その年の代表する」映画をピックアップして語ろう、という本である。押井守の映画…

なぜ、無意味な仕事ばかり増えているのか?──『ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論』

ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論作者:デヴィッド・グレーバー発売日: 2020/07/30メディア: 単行本この『ブルシット・ジョブ』は、文化人類学者であるデヴィッド・グレーバーによる「クソどうでもいい仕事」についての理論である。「クソどう…

言語発明&形成の進化史──『言語の起源 人類の最も偉大な発明』

言語の起源 人類の最も偉大な発明作者:ダニエル・L・エヴェレット発売日: 2020/07/17メディア: 単行本言語はいつ生まれたのか。この問いに何万何千年前のある瞬間──というわかりやすい答えが現状あるわけではない。そのうえ、音声がどのような形であれ残って…

2019年の傑作日本SF短篇がこの一冊に! 竹書房から新生した《ベスト日本SF》シリーズ──『ベストSF2020』

SF

べストSF2020 (竹書房文庫)発売日: 2020/07/30メディア: 文庫12年に渡って日本SF短篇の中から傑作をよりすぐって編集されてきた東京創元社版の年間日本SF傑作選が昨年終了してしまった。だが、その後を引き継ぐのがこの『ベストSF2020』! 刊行は東京創…

意識せずとも必要な情報を伝えてくれる穏やかなデザインへ──『カーム・テクノロジー 生活に溶け込む情報技術のデザイン』

カーム・テクノロジー 生活に溶け込む情報技術のデザイン作者:アンバー・ケース(Amber Case)発売日: 2020/07/14メディア: 単行本現在、生活していく上で身の回りには欠かせない電子機器・パソコン・スマホアプリケーションで溢れている。web会議をするために…

様々な宇宙の形、時空の形を知ることができる格好の時間入門──『時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて』

時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて (ブルーバックス)作者:高水裕一発売日: 2020/07/20メディア: Kindle版時間は逆戻りするのか。普通に生きていると時間は一定の方角に向かって流れていくので逆戻りなどするような感じはしないが、実は…

史上もっとも偉大な科学予測の試みとクラークに評された、科学と人類の未来について論じた先駆的名著──『宇宙・肉体・悪魔──理性的精神の敵について』

宇宙・肉体・悪魔【新版】――理性的精神の敵について作者:J・D・バナール発売日: 2020/07/17メディア: 単行本この『『宇宙・肉体・悪魔──理性的精神の敵について』』は、X線結晶構造解析のパイオニアであり分子生物学の礎を築いたと言われるJ・D・バナールによ…

地上で最後の一人となった女性による、美術と哲学と狂気の内面世界を描いた実験小説──『ウィトゲンシュタインの愛人』

ウィトゲンシュタインの愛人作者:デイヴィッド・マークソン発売日: 2020/07/17メディア: Kindle版デイヴィッド・マークソンによるこの『ウィトゲンシュタインの愛人』は、何らかの理由で地球上で最後の一人になった女性が、淡々とその生活と過去のことを記し…

ドーキンスによる無神論者のためのビギナーズ・ガイド──『さらば、神よ──科学こそが道を作る』

さらば、神よ 科学こそが道を作る作者:リチャード ドーキンス発売日: 2020/07/16メディア: Kindle版この『さらば、神よ』はリチャード・ドーキンスによる無神論者になるためのビギナーズガイドである。原題は「Outgrowing God A Beginner's Guide」で「outgr…

フランケンシュタインからジキル博士にモロー博士、ホームズまでが混交するごった煮エンタメの傑作!──『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』

メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者:シオドラ ゴス発売日: 2020/07/16メディア: Kindle版この『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』はアメリカ在住作家のシオドラ・ゴスによる第一長篇に…