基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

新しいテクノロジーを前に、我々はどのように「会話」すべきか?『あなたが消された未来――テクノロジーと優生思想の売り込みについて』

あなたが消された未来――テクノロジーと優生思想の売り込みについて作者:ジョージ・エストライクみすず書房Amazon生物は遺伝子によってある程度その姿かたちや能力が決定付けられているが、近年のバイオテクノロジーの進歩によって我々はその「生まれ持ったも…

七つの作中作を通して殺人ミステリを数学的に定義しようと試みる本格ミステリ──『第八の探偵』

第八の探偵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:アレックス パヴェージ発売日: 2021/04/14メディア: Kindle版この『第八の探偵』は、7つもの作中作が入り乱れるイギリス作家による本格ミステリである。著者アレックス・パヴェージは本書がデビュー作となるが、異…

世界初のペンギン学者と、ペンギンの奔放な性行動について──『南極探検とペンギン』

南極探検とペンギン 忘れられた英雄とペンギンたちの知られざる生態作者:ロイド・スペンサー・デイヴィス発売日: 2021/04/26メディア: Kindle版この『南極探検とペンギン』は、1910年頃から本格的に実施された別々の二チームによる南極点到達の冒険譚と、そ…

脳に直接電気刺激を与える実験の先駆者を追う『闇の脳科学』から新しい技術によって蔓延する虚構のプロパガンダを暴き出す『操作される現実』まで色々紹介!(本の雑誌掲載)

はじめに 本の雑誌2021年1月号に載った原稿を転載します。毎回、連載ではある程度取り上げる本の間に話題的なつながりだったり連続性があったらいいな〜と思いながら選んでいるんだけど今回は見事に一切何の繋がりもない本ばかりである。虚構のプロパガンダ…

数学概念が人類に生まれつきそなわっていないことを示す、数と言語人類学──『数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた』

数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた作者:ケイレブ・エヴェレット発売日: 2021/05/08メディア: 単行本 はじめに 数の概念は、生まれつき備わっているものではない 数の概念がないなんてことがあるのか? 1〜3 おわりに はじめに 『ピダハン──「言…

命の値段には大きな格差が存在する──『命に〈価格〉をつけられるのか』

命に〈価格〉をつけられるのか作者:ハワード・スティーヴン・フリードマン,Howard Steven Friedman発売日: 2021/04/17メディア: 単行本 はじめに 民事裁判における命の値付け 現在の命の価値より未来の命の価値の方が低いのか? おわりに はじめに 命に値段…

『半分世界』の石川宗生による、なんでもないバックパッカーを描き出す紀行文──『四分の一世界旅行記』

四分の一世界旅行記作者:石川 宗生発売日: 2021/04/28メディア: 単行本この『四分の一世界旅行記』はSF・奇想短篇集の『半分世界』でデビューし小説家として活躍する石川宗生によるバックパッカーとしての旅行記である。四分の一世界旅行記と題されているよ…

冤罪事件を通して人間の本性と生物学的弱点、その克服への洞察に至る傑作──『冤罪と人類:道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』

冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか (ハヤカワ文庫NF)作者:管賀 江留郎発売日: 2021/04/28メディア: Kindle版この『冤罪と人類』は日本で起こった大規模冤罪事件を取り上げながら、最後にそうした冤罪事件が起こる理由を人間の〈道徳感情〉に求め、…