基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

オランダ史上最悪の犯罪者と呼ばれた兄を告発した妹による、壮絶なる体験記──『裏切り者』

裏切り者作者:アストリッド ホーレーダー早川書房Amazon本書『裏切り者』は、映画にもなった「ハイネケンCEO誘拐事件」の実行犯として知られ、その後も犯罪を重ね「オランダ史上最悪の犯罪者」と恐れられるまでになった男ウィレム・ホーレーダーについて書か…

筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、サイボーグになることを選んだ男──『NEO HUMAN ネオ・ヒューマン: 究極の自由を得る未来』

NEO HUMAN ネオ・ヒューマン―究極の自由を得る未来作者:ピーター・スコット・モーガン東洋経済新報社Amazon ALSという病 筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気がある。体が徐々に動かなくなっていき、最終的には自発的な呼吸も行うことができず、意…

自閉症者だからこそのユニークな読書体験を描き出す、「読み」の探求──『嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書──自閉症者と小説を読む』

嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書――自閉症者と小説を読む作者:ラルフ・ジェームズ・サヴァリーズみすず書房Amazonこの『嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書』は、副題に入っているように、本書の著者が自閉症者と共に色んな小説を読んで語り合ってみたという、た…

厳重に階層が固定されたミツバチの社会を蜂視点で描き出す、神話的なディストピア文学──『蜂の物語』

蜂の物語作者:ラリーン・ポール早川書房Amazon週刊少年ジャンプにはこれまで様々な打ち切り漫画が生まれてきたが、僕がその中でも最も打ち切りがショックだったのが、マキバオーなどで知られるつの丸による『サバイビー』だった。ミツバチを主人公に、その生…

ヒューゴー、ネビュラ、ローカスと主要SF賞を総なめにした、エモーショナルな往復書簡時間SF──『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』

こうしてあなたたちは時間戦争に負ける (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者:アマル・エル=モータル,マックス・グラッドストン早川書房Amazonこの『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』は、アマル・エル=モータル、マックス・グラッドスト二人の共作による…

モルモン原理主義者の思考から大学に行くことで免れた『エデュケーション』から、なかったことにされてきた女性たちを浮かび上がらせる『存在しない女たち』まで色々紹介!(本の雑誌掲載)

はじめに 本の雑誌2021年2月号掲載の原稿を転載します。月によってオススメの本の冊数にもオススメ度にも変動があるわけだけれども、今回取り上げた原稿はおもしろいものばかり。特に『エデュケーション』の凄まじさ、『存在しない女たち』が明かす「なかっ…

我々が宇宙で暮らすためには何が必要なのか?──『スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法』

スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法 (ブルーバックス)作者:向井千秋,東京理科大学スペース・コロニー研究センター講談社Amazon近年、イーロン・マスク率いるスペースXや、アマゾンのジェフ・ベゾスのブルー・オリジンなど、民間の宇宙関連企業が大きく伸び…

二人組の作家エラリー・クイーンがどのように小説を書いてきたのか、その愛憎入り交じった過程について──『エラリー・クイーン 創作の秘密』

エラリー・クイーン 創作の秘密: 往復書簡1947-1950年作者:ジョゼフ・グッドリッチ国書刊行会Amazonこの『エラリー・クイーン 創作の秘密』は、二人組の小説家であった伝説的ミステリ作家エラリー・クイーンの執筆が具体的にどのように成し遂げられてきたの…

更新世へのタイムトラベルを通して、現代人類とホモ・ハビリスのロマンスを描き出す異色の時間・文化人類学SF──『時の他に敵なし』

時の他に敵なし (竹書房文庫 び 3-1)作者:マイクル・ビショップ竹書房Amazonこの『時の他に敵なし』は、1982年に刊行されネビュラ賞も受賞した、マイクル・ビショップによるタイムトラベル・ラブロマンスである。今回が本邦初訳で、この時代にあらためて翻訳…

早川書房の1500作品が50%割引の大型電子書籍セールがきたのでオススメを紹介する

SF

三体Ⅱ 黒暗森林(上)作者:劉 慈欣早川書房Amazon早川書房の1500作品が最大50%割引という大型の電子書籍セールが来たので、僕が読了済みのものからオススメの作品を一部紹介してみよう。早川書房は定期的に電子書籍セールをやるが、前回の大規模なものは確…

世界2900万部超えの怪物中国SF三部作、ついに完結──『三体』

三体Ⅲ 死神永生 上作者:劉 慈欣早川書房AmazonSFとしてはこの10年で最大の話題作である、作家劉慈欣による『三体』。その三部作が、先日刊行されたばかりの『三体III 死神永生』(ししんえいせい)でついに完結!中国本国で大いに盛り上がり、その後ケン・リュ…