基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

経済ノンフィクション

地球的なカタストロフにいかに対抗すべきか──『気候変動クライシス』

気候変動クライシス作者: ゲルノット・ワグナー,マーティン・ワイツマン,山形浩生出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2016/08/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る気候変動、特に地球温暖化は毎日のほほんと暮らしていると変化が実感…

人工知能が事故を起こした時、誰が責任を取るべきか?──『人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き』

人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き作者: ジェリー・カプラン,安原和見出版社/メーカー: 三省堂発売日: 2016/08/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの数年怒涛の勢いでAI(人工知能)本が刊行されたこともあり、大体の論調も把握し…

行動経済学一代記──『行動経済学の逆襲』

行動経済学の逆襲 (ハヤカワ・ノンフィクション)作者: リチャード・セイラー,遠藤真美出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/07/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見る『行動経済学の逆襲』という書名から「いつのまにか行動経済学は逆襲が必要なほ…

コンテンツ業からサービス業へ──『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか』

デジタル・ジャーナリズムは稼げるか作者: ジェフジャービス,茂木崇,Jeff Jarvis,夏目大出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2016/05/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見るデジタル・ジャーナリズムが今ぱっとしないのはなぜなのか、そ…

お金の何が、世界を"動かして"いるのだろう?──『貨幣の「新」世界史――ハンムラビ法典からビットコインまで』

貨幣の「新」世界史――ハンムラビ法典からビットコインまで作者: カビールセガール,Kabir Sehgal,小坂恵理出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/04/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る貨幣の歴史について語った本は数多い。それ…

地球温暖化は金になる──『地球を「売り物」にする人たち――異常気象がもたらす不都合な「現実」』

地球を「売り物」にする人たち――異常気象がもたらす不都合な「現実」作者: マッケンジー・ファンク,柴田裕之出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2016/03/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見るコロラド川は干上がりつつあり、北極圏の氷は減り…

ドイツ帝国の正体――ユーロ圏最悪の格差社会

ドイツ帝国の正体――ユーロ圏最悪の格差社会 (ハヤカワ・ノンフィクション)作者: イエンス・ベルガー,岡本朋子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/01/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る自国の経済分析を見ていると暗澹たる気…

なぜ中国人はアフリカをめざすのか──『中国第二の大陸 アフリカ:一〇〇万の移民が築く新たな帝国』

中国第二の大陸 アフリカ:一〇〇万の移民が築く新たな帝国作者: ハワード・W・フレンチ,栗原泉出版社/メーカー: 白水社発売日: 2016/02/27メディア: 単行本この商品を含むブログを見るアフリカの経済やら政治やらを取り扱った本を読んでいるとどれも中国の関…

銀行救う暇があるなら家計を救え──『ハウス・オブ・デット』

ハウス・オブ・デット作者: アティフ・ミアン,アミール・サフィ,岩本千晴出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2015/10/30メディア: 単行本この商品を含むブログを見る一瞬ゾンビ物かな? と思ったが原題 HOUSE OF DEBTの、経済書である。本書の主張は中…

物を作って生きるには ―23人のMaker Proが語る仕事と生活

物を作って生きるには ―23人のMaker Proが語る仕事と生活 (Make:Japan Books)作者: John Baichtal,野中モモ出版社/メーカー: オライリージャパン発売日: 2015/12/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る23人のMaker Proってい…

パクリ経済――コピーはイノベーションを刺激する

パクリ経済――コピーはイノベーションを刺激する作者: カル・ラウスティアラ,クリストファー・スプリグマン,山田奨治(解説),山形浩生,森本正史出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2015/11/26メディア: 単行本この商品を含むブログを見る新しい物を創るには手…

目指せデータ駆動型社会(not ディストピア)──『ソーシャル物理学』

ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学作者: アレックス・ペントランド,矢野和男,小林啓倫出版社/メーカー: 草思社発売日: 2015/09/17メディア: 単行本この商品を含むブログを見る人間の行動は自由意志によってコントロールされて…

貧困撲滅の革命を起こした男──『ムハマド・ユヌス自伝』

ムハマド・ユヌス自伝(上) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)作者: ムハマド・ユヌス,アラン・ジョリ,猪熊弘子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/09/08メディア: 文庫この商品を含むブログを見るムハマド・ユヌス自伝(下) (ハヤカワ・ノンフィクション…

問題を正しく認識する為に──『世界を破綻させた経済学者たち:許されざる七つの大罪』

世界を破綻させた経済学者たち:許されざる七つの大罪 (ハヤカワ・ノンフィクション)作者: ジェフマドリック,Jeff Madrick,池村千秋出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/08/21メディア: 単行本この商品を含むブログを見る原題は「Seven Bad Ideas How Mai…

新しい時代の技術と格差論──『ザ・セカンド・マシン・エイジ』 by

ザ・セカンド・マシン・エイジ作者: エリック・ブリニョルフソン(Erik Brynjolfsson),アンドリュー・マカフィー(Andrew McAfee),村井章子出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2015/07/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る新しい技術が出…

幼児教育の経済学 by ジェームズ・J・ヘックマン

これは128ページしかないのだが、その分コンパクトに論点がまとまっていてなかなかおもしろい。元になっているのはたぶん40ページぐらい? 電子書籍で読んだのでページ数がわからないが、30パーセント分ぐらいのヘックマンによる論文で、その後この論文に様…

いつも「時間がない」あなたに: 欠乏の行動経済学 by センディル・ムッライナタン,エルダー・シャフィール

書名だけ見ると「時間」をどうにかする本なのかな? と思ってしまうところだが、時間や処理能力、貧乏から飢餓までを含めた「欠乏」が人間の行動にどのような影響をおよぼすかについての本である。たとえば、2日何も食べていない人間は3食きちっと摂ってい…

金融は人類に何をもたらしたか: 古代メソポタミア・エジプトから現代・未来まで by フランクリン アレン,グレン ヤーゴ

2007年の世界金融危機から8年も経とうとしているのにいまだに度々話題に上る2015年。わけのわからない理屈でとにかく住宅の価値は上がり続けるんだから今買わなければ馬鹿であるし、どのような貧乏人でも住宅を買うことができるのだと言ってリスクを隠して売…

海賊と資本主義 国家の周縁から絶えず世界を刷新してきたものたち by ジャン=フィリップ・ベルニュ,ロドルフ・デュラン

これは海賊の概念を我々が普段想定するような「海で船を襲って身代金をとったり荷物を奪ったりする、海の盗賊」的なところからさらに抽象化し、資本主義や国家のルールから不可避的に発生する海賊システムが存在するという「組織論」で、真新しくて考え方が…

なぜローカル経済から日本は甦るのか (PHP新書) by 冨山和彦

アベノミクスによるトリクルダウンの効果を非常に一面的に見積もっているのではないかとか、貿易赤字はそこまで問題じゃないでしょと思ったり、細かいところで異論があるけど発想部分は面白かったな。それは著者が学者ではなく経営コンサルタント、経営者で…

社会保障亡国論 (講談社現代新書) by 鈴木亘

鈴木亘さんの本を初めて読んだのは年金について論じていた本だったか。今回は年金含め日本の社会保障費がいかにヤバイことになっているかの解説と、それについての具体的な対策を論じている。実際社会保障費はヤバイ。消費税は上がり、後退を続ける年金に明…

知の英断 (NHK出版新書 432)

知の逆転 (NHK出版新書 395) - 基本読書 の続編? といっていいものかどうかわからないが版元もインタビュアーも同じ。知の最先端というハイパー二番煎じもあったがあっちは知の最先端でなぜかカズオ・イシグロに話をききにいくなど、人選がよくわからなかっ…

強欲の帝国: ウォール街に乗っ取られたアメリカ by チャールズ・ファーガソン

アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞をとったインサイド・ジョブの監督が書いた本がこの『強欲の帝国』だ。映画の補填というか、情報量としてはこちらの方が多い。本書はアメリカの腐敗した状況について率直に、シンプルに述べていく。政治面や日本の…

マネーの支配者: 経済危機に立ち向かう中央銀行総裁たちの闘い by ニール・アーウィン

これはいいcentral banker物。中央銀行物といえば経済学なんてものがまるでなかった果ての国に経済学を導入して立て直していく物語(実話だが)の傑作であるルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書) - 基本読書があるが、本作は世界中の経済を危機に陥れないた…

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)

初出は1972年で、増補版が2009年に出ている名著なのだが、いまさら読んだ。そして、めちゃくちゃ面白い! 日銀に長らく努めていた服部さんがアフリカ中央の小国ルワンダの中央銀行総裁にODAの一環で送られたあとの6年間が語られているのだが、日銀…

脱貧困の経済学

まあ軽く。雨宮処凛さんと飯田泰之さんの対談本。評判がよいのでちくま文庫で最近出たのを読んだのだけど、これがまたおもしろい。雨宮処凛さんが元フリーターで現場を主として活動する人だというのは知っていたのですが、そうした「現場の貧困の声」と「経…

貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える

非常に面白い一冊。読んでいて貧困問題に対しての当たり前だと思い込んでいた考え方がいくつも変更されたし、そもそも「問題の根っこがどこにあるのか」という本質を改めて問いなおした点が良い。言うまでもなく問題の根っこは現実に根ざしており、著者らの…

入門経済思想史 世俗の思想家たち

驚くほど面白い。絶賛を贈る。これは単なる経済書ではない。ちくま学芸文庫から出ているし、お硬い本なのかなと緊張しながら読みだしたが、筆致は読みやすく好奇心を煽り、文章が面白い。難解な用語が説明もあまりないままに頻出しがちになる経済書たちと違…