基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

幻のように揺らめき続ける、汚らしくも美しい街──『黄泥街』

黄泥街 (白水Uブックス)作者: 残雪,近藤直子出版社/メーカー: 白水社発売日: 2018/10/12メディア: 新書この商品を含むブログを見る中国の作家、残雪の第一長篇の復刊版である。最近、SFファン交流会というイベントの、文学を語ろうの回で、牧眞司さんが『…

チェコSFのたどった道筋を振り返る──『チェコSF短編小説集』

SF

チェコSF短編小説集 (平凡社ライブラリー お 26-1)作者: ヤロスラフ・オルシャ・jr.,平野清美出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2018/10/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る『チェコSF短編小説集』である。なぜ突然平凡社からSF、それもチェコ…

存在しないものを奪い返す──『兄弟の血』

兄弟の血―熊と踊れII 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: アンデシュルースルンド,ステファントゥンベリ,ヘレンハルメ美穂,鵜田良江出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/09/19メディア: 文庫この商品を含むブログを見る兄弟の血―熊と踊れII 下 (ハヤカワ・…

失われた技術を復元する──『ジャイロモノレール』

本書はジャイロモノレールについての概説書である。ジャイロモノレールとはレールが一本の鉄道の名称である「モノレール」にジャイロスコープを利用し、無支持で走行できる安定性を付与したものになるが、この技術は20世紀のはじめ頃(1900〜1910年)に開発さ…

何を、どのように書いてきたのか──『筒井康隆、自作を語る』

筒井康隆、自作を語る作者: 筒井康隆,日下三蔵出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/09/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る作家・筒井康隆がこれまで自作をどのような考えのもと書いてきたのかをデビュー作から順々に語ってい…

驚きを与えられたい一方で、心地よさを望む──『ヒットの設計図――ポケモンGOからトランプ現象まで』

ヒットの設計図なんてあるわけがないだろうと、書名を見た段階では反射的には思ったわけだが、それはそれとして世の中のヒットのいくらかは確かにもっともらしく説明することができる。たとえば、人気映画の続篇なんかは、大概の場合そこまで大きく外れるこ…

ロケットエンジンの基礎が概観できる最高の一冊──『宇宙はどこまで行けるか-ロケットエンジンの実力と未来』

宇宙はどこまで行けるか-ロケットエンジンの実力と未来 (中公新書)作者: 小泉宏之出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2018/09/19メディア: 新書この商品を含むブログを見る中公新書は『小惑星探査機はやぶさ』や『NASA─宇宙開発の60年』など、素晴…

男と女、虚構と事実、過去と未来、微妙でありながら大胆──『両方になる』

両方になる (Shinchosha CREST BOOKS)作者: アリ・スミス,木原善彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/09/27メディア: 単行本この商品を含むブログを見る『両方になる』はスコットランド生まれのアリ・スミスによる長編七作目になる。邦訳としては2003年に…

10人の人間とライオンと馬に取り憑かれた魔術師──『魔術師ペンリック』

魔術師ペンリック (創元推理文庫)作者: ロイス・マクマスター・ビジョルド,鍛治靖子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/09/28メディア: 文庫この商品を含むブログを見るロイス・マクスター・ビジョルドの代表作の一つ、五つの宗教や魔術が存在する世界…

〈水なし洪水〉が押し寄せた人類の終末を描く──『洪水の年』

SF

洪水の年(上)作者: マーガレット・アトウッド,佐藤アヤ子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2018/09/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見る洪水の年(下)作者: マーガレット・アトウッド,佐藤アヤ子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2018/09/22メデ…

植物状態の患者に意識はあるのか『生存する意識──植物状態の患者と対話する』

生存する意識作者: エイドリアン・オーウェン,柴田裕之出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2018/09/19メディア: 単行本この商品を含むブログを見る植物状態というと、通常は意識が完全にシャットアウトされ、意思疎通をはかることが困難な状態だという理解…

ドーピングはいかに人体に作用するのか──『走る、泳ぐ、ダマす アスリートがハマるドーピングの知られざる科学』

走る、泳ぐ、ダマす アスリートがハマるドーピングの知られざる科学作者: クリス・クーパー,西勝英出版社/メーカー: 金芳堂発売日: 2018/09/07メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るアスリートのドーピング使用が発覚してメダルが剥奪…

SFファン交流会向けに作った冬木糸一の文学リスト

先週の土曜日、SFファン交流会で文学について牧さんと西崎さんと語る機会がありまして、事前に質問に答えて作ってきたリストが下記になります。特に縛りはありませんでしたが、いちおうSFファン交流会ということでどれもSFっぽい要素のある作品を選ん…

毎朝目が覚めると別の人間になっている──『エヴリデイ』

SF

エヴリデイ (Sunnyside Books)作者: デイヴィッドレヴィサン,David Levithan,三辺律子出版社/メーカー: 小峰書店発売日: 2018/09/10メディア: 単行本この商品を含むブログを見る毎朝目が覚めた時、別の人間に乗り移るとしたら、その人物はいったいどのような…

早川書房の電子書籍「海外SFセール」がきたので個人的オススメを紹介する2018年版

SF

去年も早川書房は「海外SFセール」をやっていたのだけれども、今年もやりはじめたようなので個人的おすすめを紹介します。今回も大体半額になっている! お得! しかもシリーズ物が多くて素晴らしい。とくにセール対象が代わり映えしないようなら前回の記…

”時間”とは人間にとって何なのか── 『タイムトラベル 「時間」の歴史を物語る』

タイムトラベル 「時間」の歴史を物語る作者: ジェイムズグリック,夏目大出版社/メーカー: 柏書房発売日: 2018/08/27メディア: 単行本この商品を含むブログを見る「タイムトラベル」といえばこれを読んでいる多くの人は「あーはいはい」とその意味するところ…

我々は今後土をどう扱っていけばいいのか──『土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話』

土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話作者: デイビッド・モントゴメリー,片岡夏実出版社/メーカー: 築地書館発売日: 2018/08/31メディア: 単行本この商品を含むブログを見る『銃・病原菌・鉄』みたいな書名だが中身は土と農業の話である。著者のデ…

華文ミステリにして重い百合──『元年春之祭』

元年春之祭 (ハヤカワ・ミステリ)作者: 陸秋槎,稲村文吾出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/09/05メディア: 新書この商品を含むブログを見る華文ミステリである。著者の陸秋槎さんは現在金沢に住んでいるようだが、本自体は普通に中国語で書かれ、刊行さ…

人類はこれから何を目指すのか──『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』

ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来作者: ユヴァル・ノア・ハラリ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2018/09/06メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るホモ・サピエンスが特別な地位を築き上げることができたのは、伝説や神…

”神のお告げ”を聴く分隊長──『接続戦闘分隊: 暗闇のパトロール』

SF

接続戦闘分隊: 暗闇のパトロール (ハヤカワ文庫SF)リンダ ナガタ 早川書房 2018-09-05 AmazonKindle 本書は『極微機械ボーア・メイカー』や『幻惑の極微機械』などで知られるリンダ・ナガタによるミリタリーSFである。ミリタリーSFというと有名ドコロの…

デビュー作にして超ド級の傑作ハードSF──『ランドスケープと夏の定理』

SF

ランドスケープと夏の定理 (創元日本SF叢書)作者: 高島雄哉出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/08/30メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る本書『ランドスケープと夏の定理』は第5回創元SF短編賞を受賞した高島雄哉の、受賞作を端緒とする…

全長1.6キロメートルにも及ぶ巨大な竜──『竜のグリオールに絵を描いた男』

竜のグリオールに絵を描いた男 (竹書房文庫)作者: ルーシャス・シェパード,内田昌之出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2018/08/30メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見るなぜこの世界には竜がいないのか。他の何がなくてもいいから、竜だけは──”恐竜…

映画の空間をその手に──『空想映画地図[シネマップ] 名作の世界をめぐる冒険』

空想映画地図[シネマップ] 名作の世界をめぐる冒険作者: A.D.ジェイムソン,アンドリュー・デグラフ出版社/メーカー: フィルムアート社発売日: 2018/06/25メディア: 単行本この商品を含むブログを見るほとんどの映画で登場人物たちはあっちこっちに移動する。…

VRのさまざまな活用事例について──『VRは脳をどう変えるか? 仮想現実の心理学』

VRは脳をどう変えるか? 仮想現実の心理学作者: ジェレミーベイレンソン,Jeremy Bailenson,倉田幸信出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/08/08メディア: 単行本この商品を含むブログを見る期待と異なるところがある上に、邦題が内容とあってないなど微妙な…

レジリエンスは万能薬ではない『逆境に生きる子たち──トラウマと回復の心理学』

逆境に生きる子たち――トラウマと回復の心理学作者: メグジェイ,Meg Jay,北川知子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/08/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る「レジリエンス」という心理学で用いられる用語がある。これは親の…

兵站に焦点をおいたミリタリーSF──『星系出雲の兵站』

星系出雲の兵站 1 (ハヤカワ文庫JA)作者: 林譲治,Rey.Hori出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/08/21メディア: 文庫この商品を含むブログを見るミリタリーSFといえばおおむね超光速航法があり、人類よりも高度な技術力を持つ敵エイリアンがいて、英雄的…

連続殺人犯の記憶を植え付けられた少女──『忘られのリメメント』

SF

忘られのリメメント作者: 三雲岳斗,yoco出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/08/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る三雲岳斗といえば世間的には『ストライク・ザ・ブラッド』や『ダンタリアンの書架』が有名だろうが、鮮やか…

早川書房が「文系も楽しめるサイエンス」電子書籍ノンフィクションほぼ半額セールをやっているからオススメをピックアップ

病の「皇帝」がんに挑む 人類4000年の苦闘(上)作者: シッダールタ・ムカージー出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/09/25メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る突然早川書房が「文系も楽しめるサイエンス」としてサイエンスノンフィクショ…

その菌に感染したものは、知能が爆発的に増加する。ただし──『天才感染症』

SF

天才感染症 上 (竹書房文庫)作者: デイヴィッド・ウォルトン,押野慎吾出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2018/08/02メディア: 文庫この商品を含むブログを見る天才感染症 下 (竹書房文庫)作者: デイヴィッド・ウォルトン,押野慎吾出版社/メーカー: 竹書房発売…

魔術的な描写で小説の可能性を広げる短篇集──『オブジェクタム』

オブジェクタム作者: 高山羽根子出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2018/08/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る高山羽根子さんのデビュー作である『うどん キツネつきの』に続く第二作品集がこの、短篇を3つ集めた『オブジェクタム』…