基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

暗号解読/サイモン・シン


あらすじ

暗号を解読してきた人たちの汗とロマンを描く。

感想 ネタバレ有


いやー、びっくりした。暗号解読がこんなに面白いジャンルだとは全く思ってなかった。

そして凄いのは、その面白さをわかりやすくそのまま伝える事が出来たサイモン・シンかなと思う。

たとえ話がうまい事はノンフィクション作家の大事なスキルだと思うが、サイモン・シンのそのスキルには脱帽。

どんなもんかなーと読み始めてみれば、最初の換字式暗号からあっというまに引き込まれて、長いことやぶられなかった換字式暗号をどうやって解くかのところにいったところですでにクライマックスだぜぇー!って感じであった。

頻度分析とか考え付いたヤツはマジで天才だな。

惜しむらくは初期の暗号はすべて、アルファベットじゃないと暗号を作ることが難しいって事か。そのまま応用しても表意文字+音節文字である日本語は難しいと書いてあるが、悲しい事である。

そして、全く知らなかった暗号鍵の配送の問題。戦争において兵站のみならず、暗号まで運ばなくちゃいけなかったというのは全く驚くべき事だった。というか、あまりにも暗号が身近ではなさすぎたせいで、書いてある事全てがショッキングなことだった。その性質上、あまり表沙汰にならないのはしょうがないことだけれども。


エニグマ機の誕生にも心奪われた。事実上最強と思われたエニグマ機と、それを破る必要性にかられて、周りの国があきらめてなお研究を続けたポーランドの底力には感動させられる。エニグマ暗号機も、名前だけは知っていたけれど、実際問題どんなものなの?と言われても全く答えられなかったが、今エニグマ暗号機ってどんなものなの?と聞かれたら万の言葉を尽くして説明出来る気がする。

あくまで気がするだけである。

そして暗号を創る天才と解読する天才を読んでいくうちに世界にこんな凄い人間が居たのかと唖然とする。

こんなやつらがぽんぽん生まれてくるんだから、量子コンピューターもすぐに出来てしまう気がする。

天才というよりも、ただの性質かな。しかしそういった人間の出現が明らかに科学が発達してからの時代から頻出してるってのが気になるな。

科学が出来てから時間が加速している気がする。革命的な発見をする人間がぽんぽん生まれてきたら、そりゃ世界は科学文明によって滅びるとかいう思想も出てくるな〜と思った。

そして悲しいのが、そういう凄い事をやった人達というのが、世間の正当な評価を受ける前に死んでしまう事があるという点か。

少し引用

     デニストンの娘は、父のかつての同僚から一通の手紙を受け取った。「あなたのお父さんは偉大な人でした。英語を母語とするすべての人は、永遠とは言わないまでも、長くその恩恵を被ることでしょう。悲しむべきは、彼がどんな仕事をしたかを知る人がほとんどいないことです」

しかし、数学を専攻し続けた人間は、あまりそういった世間の評価とかには拘らない気がする。あくまで自分の個人的感想ですがね。


こっから下巻

ナヴァホコードに興味をひかれる。歴史上解読されなかった極めて稀な暗号。しかし普通に話している言葉が暗号になるなんて凄い。一体普通の言語が誰にもわからないなんて、どんな発音でどんな文字体系なんだろうと気になって仕方がない。どこに行けば会えるんだ?ナヴァホ族に。もういないとか。

そして天才というのはこういうのをいうんだなという一例

イギリスが生んだ万能の天才トマス・ヤング
二歳にしてすらすらと本を読むことができ、十四歳になるころには、ギリシャ語、ラテン語、フランス語、イタリア語、ヘブライ語、カルデア語、シリア語、サマリア語、アラビア語ペルシャ語トルコ語、エチオピア語を学び終えた

欲張りすぎ・・・・サマリア語とか、聞いたこともないし。どこのドラクエ言語?


そして、途中から時代が現代に近づくにつれ、インターネットが出現する。これによって今まで自分とは直接関係が無いように感じていた暗号が、あまりにも身近なところに存在していたことに気づかされる。

よくよく考えてみると、インターネットをしていて何回も暗号化に関する文章が出てきていたのを思い出す。こんなにも身近なところに暗号があったのに、今まで全く意識しなかったというのが恐ろしい。クレジットカードの情報はどうやって守られているのか、などなど、そういった事が詳しく理解できただけでもこの本を読んだ価値はあった。

今までこのサイトは暗号化されていますという表示があっても、なんとも感じなかったのがこれからはこまごまと意識する事になりそうだ。

全く意識していなかったが、ネットを使っている自分達は鍵配送問題と闘った学者達や、それを阻止しようとした政府と闘った人達に守られていたのだとわかった。

単純な1クリックに複雑な鍵のやりとりがあるとか、想像もつかんわなー。

そして最終的に量子コンピューターの話題へと移っていくわけだけれども、ここで登場するのもやはりトマス・ヤングというところが凄い。

最初に量子の原型となるものを発見したのもトマス・ヤングなんだなぁ。全く凄いやっちゃ

暗号が人を惹きつけるのは、やはりそれが単純に面白いからなんだろうなーと。暗号を解いたときのその喜びは、何事にも代えがたい喜びなのだろうと勝手に想像する。最後に書かれている翻訳者達の、サイモン・シンの出した問題への奮闘記は本当に読んでいるだけでその喜びが伝わってくる。 そんな一冊。