あらすじ
昔はバンドに生きた男も今はしがないサラリーマン・・・。周りの粋がってたやつらも次々に丸くなり、自分もどんどん丸くなっていく。突っ張ってもサラリーマン金太郎のようにうまく行くわけでもなく・・・。さらには女にも逃げられる。
感想 ネタバレ無
ジャンルで悩んだが、まぁ恋愛小説家と思いカテゴリ恋愛新設。 そういえば恋愛小説なんて全く読んだこと無かったな。これも恋愛小説家どうかよくわからないし。
同じ著者の他の作品だとハードボイルドワンダーエッグも読んだけど、あっちが気に入ればこっちも気に入るという感じ。作品全体をとうして空気が同じなのだろうか。作者買いしやすい作家ともいえる。
文体はまるで神林長平の天国にそっくりな星と同じなような気がする。しかしさらに軽い。
後ろの著者近影で結構歳を言ってる事に気づいてびっくり。もっと若いのかと思ったら・・・。 その歳でこんな感じで文章を作れるんだから凄いと思う。何よりテンポがいい。
サラリーマン生活を経て作家になったみたいだけど、ここに書かれているお客様相談室の内容も実体験を含んでるのだろうか。やたらとおもしろかったけど。
ハードボイルドワンダーエッグの時も思ったけれど最初の方は読むのやめよっかな・・・ていうぐらいノリが遅いんだけど、3分の1ぐらい読み進むと読むのがやめられなくなる。なんでだろうなぁ、展開を一気に盛り上げていくのがうまいのかもしれない。
ネタバレ有
神様からのひと言。お客様の声にはすべて耳を傾けてなるべく全て実現させるんだーみたいな事を馬鹿専務が言っていたがどこに行ったってそんな無謀な事をしたら崩壊する罠。
小説家が、読者のニーズに応えて萌えキャラをばんばん出すようなものである。
しかしやはり一番最初がつまらなく感じたのは、涼平が飛ばされた先のつまらなさに比例していたのかな。じょじょに篠崎の凄さが見えてきて、羽沢もただ敬語が使えないオタクなだけじゃなくて、宍戸が加わって、っていうところからやっとスタートラインにたったっていう感じだったな。
それまではおはなしの はじめに ぐらいだったような気がするよ。
しかしそこまでに180ページぐらいも使っているんだが。もっともこの180ページの中にこの会社が本当に腐ってるところがほとんど書いてあるんだから、最終的に当然会社をボッコボコにする時の爽快感の布石なんだからしょうがない。
何にだってそういう展開は必要だ・・・。宍戸が入ってきたときは、そのまま恋愛関係になってリンコが戻ってきてまさかの君が望む永遠的三角関係になるのかと思ったらそれはなかった。
まぁそりはそうか・・・。
会社の体質を何故誰も告発しないのかの篠崎のセリフ
手の中に握ってるものが、たいしたもんじゃないことを知ってるのに、手のひらを開くのが怖いんだ。全部こぼれ出ちまうのが。本当にたいしたもんじゃなかったってことを知っちゃうのをさ。誰も彼も。俺も
そして告発しようとして飛ばされ、失語症に陥り、最終的に自殺してしまった神保に対する言葉
「馬鹿だな・・・・何も死ぬこたないのに」
ぽつりと篠崎が言った。
「おでん鍋を飛び出しちまえば、いいだけの話なのに」
ここでいうおでん鍋というのは会社の事。しかし篠崎のセリフは一つ一つ気に入っている。地味にいいキャラしてるぜ・・・篠崎さん・・・。そしてこのセリフはどこかで聞いたことがあると思ったら、桜庭一樹作品に共通してるなぁーと思った。
桜庭一樹作品で、大人になるまで待てばいいだけの話なのに・・・ というようなセリフがあったが、大人になっても似たような世界ばっかりですよという話ですね。大人になっても何かしら我慢しなくてはいけないんですから。いつだってやるなら行動は早い方がいいと思うわけです。
仮におでん鍋を飛び出したとしても、そこに待っているのはちょっと具が違うおでん鍋じゃないだろうか。
運よく自分の都合のいいところに行けたとして、また違う問題が浮き上がってくるもんだ。
そしてこのタイトルの神様っていうのは、多分お客様の事だけじゃないんだろうな。
「また、よろしくぅ」