基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ネクロポリス上下 恩田陸

初☆恩田陸

あらすじ
死者が立ち寄る町、アナザー・ヒル。お客さんと呼ばれる死者。特殊な地ゆえに周りからは敬遠される。そんな場所に主人公は、初めて行く事になる。


感想 ネタバレ無

文章は非常に読みやすい。 まぁ単純に文の量が少ないだけなのだが。

文章よりも、この独特な世界観が恩田ワールドなのだなぁと思う。かなり面白いと思った。

舞台を思わせるストーリー演出と次々と明かされていくアナザーヒルの様相でページをめくる手が止まらない。

久しぶりに次の展開が速く知りたくて文章をすっ飛ばすという怪奇現象を起こしてしまった。
そのせいで上下巻800ページ近くを普通に一冊読むぐらいの速度で読んでしまった。

まぁ文章が少ないというのが大きいが、それでも駆け足すぎたことは否めない。


もっとじっくり読むべきだった。 しかし反省してもしょうがない。 もう一回読み直すぐらいなら他の本を読むべきだ。


本編の感想を書こう。
この不思議な世界観にまず飲み込まれる。死人が生き返るわけではなくて、幽霊と交流する、こういうのは日本の映画には多いかなぁ。黄泉帰りとかあるし。

基本的にこういう概念は日本にしか無いのかな?と思える。 実際本書の中に出てくるものも日本の宗教が前面に押し出されているし。

というかこれは、最初やけに登場人物が推理するのでひょっとしてミステリーなのかな?と思った。結局最終的にはミステリーの要素も残しつつきっちりファンタジーしてたけれども。 なんかおかしいな

ただ、あまりにもわかりきった事を登場人物がくどくどと説明しだすのはちょっと簡便願いたいと言いたかった。不満点はここだけである。

ネタバレ有

ハナと主人公がくっつく話かと思ったら全然そんな事無かった。

ハナと主人公と苑子との三角関係になって楽しそうだと思ったのに・・・・同じような事を期待した読者は多かったのではないかと思うのだがどうなんだろう?

あんまりマリコが居た必要性を感じない。 

上巻が終わった時点で、まだアナザー・ヒルについて5日目だったのに驚愕した。(一ヶ月滞在する話) この後の展開が全く予想できないのはいいなぁ。

怒涛の展開で登場人物同様にこっちも情報は飽和状態。 最終的に完全なネタバラシがあったけれど、問題が多すぎて全部解決されたのかまだ解決されてない問題があったのかどうかわからなくなってしまった。

多分全部解決されてたと思うが・・・・。途中から多元宇宙的な世界観に変質してしまって余計こんがらがった。あとたとえ話が何回か出てくるけど、もったいぶって言ってる割にかなり解りづらい例え話だと思った・・・。セロハンテープのくだりの話とか、ミルクティーのたとえ話とか。

唐突な展開に戸惑う事も多かったが、それは展開の速さゆえしょうがない事だ。細かく考えなければかなり面白い話。 よって考えるのはやめよう。

死者をお客さんと呼ぶのはなんでだろうなぁと読み始めたときは疑問だった。基本的に訪れているのは生者なのだから、お客さんは生者では?と思ったが。

それは普通に死者の町というのが、いつでも普通の人と同じように存在しているという最初の固定概念があったからであった。 こんな風に、何年きても死者と話す事が出来なかったり、会えるのはそんなに長い間でもないという世界観を想定していなかった。

またやはりこういう話なもので、死と向き合うというテーマも感じた。 もっとも本書は死者と触れ合える事によって出来るさまざまな事について検証するのが本来の楽しみ方だと思ったが。
感じたのはここか

死は娯楽であり、安らぎである。
人々の認識は一致していた。弔うことも、娯楽であり、祭りなのだ。生者と死者を分け隔てたり、死者を必要以上に恐れることは、互いに不幸であり、不自然である。かつて、人間の世界では、それは地続きであり、生活の一部だった。


この世界では、死後の世界があるのはさも当然のように書かれているけど、そんな世界だったらいいなぁと思う。基本的に本の世界に生きたいと思ったことなんてこれっぽっちも無いが、この世界には切実に行きたいと思える。

死後の世界があるという実感が得られるのはいい・・・。

死後の世界なんてあれば安心して死ねるのになー。


合理性に関するセリフもなかなかいいものだと思った。

人間の言う「合理性」という言葉自体が曖昧で揺れているものなのだ。しょせんは、一人の人間の内側からしかものは見られないのだから。

しかし、エピローグで双子が出てくると、最後までゾクっとさせてくれるなぁとむしろ気分がいい。 続編とか作られる予定はないのだろうか。あれば読みたいなあ