あらすじ
あっちには殺し屋 こっちには自殺屋 そっちには押し屋。
感想 ネタバレ無
分類不能な殺し屋小説の誕生! と帯に書いてあるが、全くもってその通りだ。 殺し屋小説としかいいようがない
これと似たような話を、昔自分で考えた事がある。 自分で書こうと思ったわけではなく、こんな小説があったら面白いだろうな、誰か書いてくれないかな、というような願望だった。(正直なことをいえば、設定させ煮詰められれば自分でも書いてみたくもあった)
殺し屋どうしが町を徘徊するなか、気がついたら他の殺し屋と出会い、闘い、最後に残る殺し屋はなんだろうなぁーという話だった。
そのまま一緒というわけではないけど、あの時の理想を具現化してくれたようでうれしかった。確実に俺が書いたよりも面白いだろう。
俺にとって特別な一冊になるだろうという予感はある。
倫理観的に問題のある奴等ばっかりだ。そういうのが駄目な人間には、全く駄目だろう。 もっとも、俺はそういうのが駄目という人間にはあった事が無いが。世の中にはそういう人がいっぱいいると思っていた・・・が、案外居ないかもしれない。
平然と月並みな言葉でいうなら、ここに出てくる登場人物は呼吸をするように人を殺すやつらばっかりだし。
とりあえず、そういうのが出てくる小説なのである。 漫画版、魔王とも密接にリンクしている。
ネタバレ有
蝉はいいなぁー。漫画版でも二番目に好きなキャラだ。 一番目はその上司の岩西という自分の心理を考えるに、どうもこの一人一人がすきというよりも、二人合わせて好きらしい。
蝉が考える自由と、岩西の考える自由とか。岩西の蝉に対する微妙な感情とか。
殺されるターゲットの女がいざ殺される時に言った、あんた、女にも手を出すわけ?という問いに対する蝉の解答
「殺すのは、女と子供以外」などと、自慢げにいう殺し屋の映画だ。「そんなの、プロにあるまじきことだっつうの」蝉は口を尖らせる。唾がまた、婦人にとんだ。「医者が手術する時に、『男は治しません』なんて、言わねえだろうが。風俗嬢はどんなに不恰好な客が来たって、サービスをするもんだぜ。何が''No Women No Kids”だよ。そんなの、差別だよな。俺はあんな殺し屋なんて大っ嫌いだね」
なんつー明快な答えだ。 そしてひどい。だが、これでこそ殺し屋という気もする。どう考えても精神的におかしいですがね。
しかし、鈴木は本当に駄目なやつだなぁと読んでいてずっと思っていた。明らかに嘘がバレていても、嘘をつき続けるわ、アホなことに首を突っ込むは、見るからにおかしいのにバレバレの嘘をついて平然と突っ込むわ、明らかに罠なのに自分だけは大丈夫みたいな妙な自信で突っ込んで行くわ、久しぶりに登場人物に本気で嫌悪感を覚える奴だったな。エヴァンゲリオンの、シンジみたいな
前に読んだ魔王の主人公が全面的に共感を覚えるやつで、次の主人公が全面的に反感を覚えるやつときたもんだ。 次の伊坂幸太郎の主人公には、どんな感じを受けるかな?
しかし、こういう感情を起こさせるキャラは優れているという話も聞くし、よくわからんものです。
しかし、岩西の事がすき過ぎる・・・。死ぬシーンは思わずほろりとしてしまった・・・。なんでもジャック・クリスピンの歌詞を引用して話すところも、妙に小物なところも、やるときゃやるやつだってところも、全部好きなんだ。
ジャック・クリスピン曰く 人生から逃げる奴は、ビルから飛んじまえ
岩西、ビルから飛び降りる直前の蝉との電話
「俺は、おまえから自由だ、ってことだ。びっくりしたか」
「びっくりしねえよ」岩西の口調は、強がりを言ったり、部下をたしなめるようなものではなく、どちらかといえば、愛情のこもったものに感じられた。
「何だって?」
「おまえは、ずっと前から、自由だろうが」岩西ははっきりした声で言った。「俺とは別に関係ねえよ」
あぁーぁー岩西ぃー。
しかしスズメバチが一回も詳しくピックアップされなかったのは悲しかったな。毒殺専門の殺し屋とかなー。この殺し屋が大量に出てくるのがたまらなく楽しい。
最終的に残ったのは、全く情報を残さない押し屋とスズメバチだったわけだが。 やはり、最後に重要なのは情報なのかな、という気もする。
鯨も蝉も、死んでしまった。あれ、鯨は死んだんだっけ? 忘れてしまった。まぁいいや。