基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

四季 春 森博嗣

あらすじ
天才、真賀田四季の少女時代を書くミステリー。

感想 ネタバレ無

相変わらず森博嗣の書く本は安定して面白い。どれを読んでも、まず満足いくものになっているだろう。

読んでいなかったのに特に理由はないけれど、文字数が少ないから敬遠していたというようなところはあるかな。もちろん、文字数がすべてではないけれど。ヘッセのシッダールタだって、200ページ無かったような気がする。

2時間かかるかかからないかで読み終わるので、普段本を読まない人たちのニーズにもこたえられているのだろう。どうも今は文字数が少なければ少ないほど売れる傾向にあるみたいだし。

久しぶりに森博嗣の本を読んだけれど、構成がとても上手いから、ついつい先に先にと読まされてしまう。スカイ・クロラシリーズを思い出すような文体もいい感じだ。

S&Mシリーズの登場人物もVシリーズの登場人物も出てくると知って、結構うれしいものがある。特にVシリーズは登場人物がかなりお気に入りなので、うれしい。

ネタバレ有


登場人物の名前が簡単に覚えられる。印象深い名前がつけられていると思う。

どうやって選んでいるのかは知らないけれど・・・。名前は大切だなぁと。

本当にいい小説はキャラクターの名前をいつまでも覚えていられる小説だといっていた偉い人が言っていたけど、まぁ一面はあっているかもしれない。

其志雄が大量に出てきて、途中で頭がこんがらがったけれども、すぐに修正が完了した。なかなかややこしい。

其志雄は、四季の双子の兄がまず一人。その兄の中にまた一人。四季の頭の中に一人。で計三人いたわけか。

最後、双子の兄の中にいた其志雄は統合して自殺してしまったけれど、頭の中にいた其志雄までしんでしまったのは、結局完璧に其志雄をトレースしていたがゆえに、肉体を持っている其志雄が死ぬことを決意した瞬間に同じ結論に達して死んでしまったということなんだろうかな。

四季が死ぬ事を選ばないことが不思議でしょうがないのだが、よくわからない。

「君だって、いつかは死ぬ。だけど、生きている間は、楽しいことができるんだ。それを大事にするっていうことじゃないかな」
「私、別に、生きていたいなんて思わない」
「どうして?」
「その質問は、まず、どうして生きていたいのか、に答えてからでなくては意味がないわ」
「だから、それは、楽しいからだよ」
「楽しいと思い込んでいるだけよ」四季は笑った。「生きていることが、どれだけ、私たちの重荷になっているか、どれだけ、自由を束縛しているか、わかっている?」
「生きていることが、自由を束縛している? それは、逆なんじゃない?」
「いいえ、生きなければならない、という思い込みが、人間の自由を奪っている根元です」


生きなければいけないということ自体がすでに自由ではないというのはわかるけれども、それに関しては四季は完全に自由だな。

生きていてもいいし、死んでもかまわないっていうなんだか今どきの中学生がいいそうな状態ってことだろうか。それはそれで面白いが。

四季が天才というよりも、ただの究極的な合理主義者にしか思えんな。もちろん人間的な能力に関して言えば、天才というよりもすでに種族が違うという感じだけれども。

それに、時間からも乖離しているといっているんだから、少し進化しすぎだな。時間から乖離しているという考え方自体はシッダールタに書いてあったことと似たような感覚で説明できると思う。

ここらで幕 次は夏