あらすじ
たんぺんが 7つ 入ってる
汝が半数染色体の心。 エトセトラ、エトセトラ。煙は永遠にたちのぼって。一瞬のいのちの味わい。ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?。ネズミに残酷なことのできない心理学者。 すべてのひとふたたび生まるるを待つ。
感想 ネタバレ無
どうでもいいけど解説がどの本を読んでも、ティプトリーが女であった事を明かされた事が衝撃的だ!という話しかしなくてイライラさせられる。どの本を読んでも解説といえばそのことだ。もうちょっとましなことかけ、と思わざるをえない。まぁ、それだけの衝撃だったのだろうと推測するだけだが・・・。ちゃんと解説してほしいものだな。しかしこの本も文庫が発行されたのは、1989年か・・・。ずいぶんと昔だなぁ。
まだティプトリーの作品で、翻訳されていないものがあるので、そちらも頑張ってもらいたいものだ。
短編集って、基本的にその中にはいっているもののなかから、ひとつだけ代表作をとってタイトルにするのが普通だとおもってたけれども、これは違うみたいだ。短編集自体に名前がついている例か。日本の作品だと珍しくない・・かな。
内容は染色体XYのに関係する性の話題から、実験動物に対する矛盾などなど。ほとんどすべての作品に共通するテーマのようなものは、生と死 だと思った。
最後の短編はそれしか表していない。これを最後にもってきた編集の気持ちもわかるきがする。
訳のせいか知らないが、ひどく読みにくかったような気がする。浅倉久志氏のほうが、よかったなぁと思わないでもない。
分量も、まぁ翻訳という作業ゆえ仕方ないことであるのだが、ちょっと多い。普通翻訳するとページ数は増えてしまうのだが、それにしても増えすぎでは、という気もする。
序文の人は割と好きだ。あえて解説などは不要なものであるといっているティプトリー本人のセリフを持ってきたりして、自虐である。
序文でまでもティプトリーショックについて述べているのは本当にもうどうしようもないことだが・・・・。
ネタバレ有
短編も7つしかないから一つずつ書いていくか。
汝が半数染色体の心。
半数ずつ染色体をもったものが、交互に世代交代をしていく話。非常に説明しづらいが、病気をしない人間のようなものがいて、しかしそれの子供はみすぼらしい存在が生まれてくる。しかしそのみすぼらしい存在から生まれてくるのは病気をしない人間のようなものである。そして当然劣っているものはより優れているものから迫害を受ける。
自分達だってありえたかもしれない世界の話でもある。遺伝子という考えのなんと奥深くて精密で危険なものよ。どこかの遺伝子配列が少しでも違っただけで全く違ったものが生まれてくるというそんな恐ろしさを書いたものでもあった。
エトセトラ、エトセトラ
ショートショートと言っていいぐらいの長さ。7ページしかない。
宇宙をすべて探索しつくしてしまった人たちの話。
この先には取り返すことのできない、長い衰退の道があるだけだ。始めてわれわれは、行く手に何もないことを知ったんだ
とあるけれど、衰退なんて生まれた瞬間に始まっていると思う。限界に達したから衰退をはじめるなんてそんなことあるだろうか。限界なんていう概念がそもそもおかしいし。
誰だって生まれた瞬間が一番すぐれている状態で、その瞬間から衰退が始まっていると思う。もちろん、種としても。人間が生まれた瞬間なんてものがあるのかしらないけれど、もしあるとすればそこからすでに衰退ははじまっているとしか思えない。
煙は永遠にたちのぼって
なんかよんだけどまったく印象にのこってない。変な狂ったやつがなんかしてたようなきがする。スルーで。
一瞬のいのちの味わい
これもなんだかものすごい規模の話だったな。一番最初から最後にはあんな話になるなんて全く想像もつかなかった。ちょっと最初から読み返してみたら、一番最初のところに最終的な結論を示している部分があった。ううむ。
しかしこれはすでに短編っていう文章量じゃないな。ほとんど中編だぞ。
それでいて前半のたらたらとして進まない展開はいらいらさせられたが・・・。
地球人が、精子だったという話だ。まとめてしまうとそういう話だったが、それだけだとあまりにも短いな。
地球に人間が生まれたのは、いつかどこかにある卵子に飛び込んでいくためだとか凄い発想だなと思った。そのために人は成長して、宇宙に飛び出して、他のものを探し求めていたのだと、
・・・・・荒れ野のなかの泉より掬し味わう一瞬のいのち
──ハイヤーム
つまりこの文が一瞬のいのちの味わいなんだろうな。本編にはあまりそういった描写はないが・・・・。自分たちが人生だとおもっているこの時間は、自分たちより上位のものからしてみれば一瞬の人生なのかもしれないとか、そういうことだろうか。ぜってーちげー ちょっとわかりづらいです。
ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?
うろうろ宇宙をさまよっていたらいつのまにかタイムジャンプしてて気づいたら200年後で、女しかいない世界にきていた、と。女性と男性を書きたかったんだろうなぁということがわかるぐらいである。ストーリーとしてひかれるところはあまりなかった。
ネズミに残酷なことのできない心理学者
実験動物として無残にも殺されていくネズミに愛情をもって接してしまう心理学者の話。
なんというか、一般人の矛盾をついた作品でもあったと思う。毎日保健所で何千もの動物が死んでいくのに、そこには誰もつっこまないで、身近なところでの動物の死にいつまでも注目するその矛盾。
動物園の動物に石を投げる人間に対する批難をしても、動物を檻に閉じ込めて自由を束縛する動物園側に対する批難をしないその矛盾。無残な虐待をかわいそうというくせに実験動物がどんなむごたらしい実験をされても、それは実験だからといって許容するその矛盾。
そういう事を書いていた。
もっとも、主人公はただのネズミ馬鹿といった感じだったが。しかも最終的にそういった感情をネズミの王に持ってかれて残虐なネズミ殺し野郎に・・・・。
すべてのひとふたたび生まるるを待つ
生と死の物語。見ただけで相手を殺すとかいう魔眼をもった幼女とかまるでライトノベルみたいな設定の話だが、実際はかなりグロテスクな話でもある。
今までの歴史が全て生と死の歴史であったことをのべて、死が生を成長させ、生が死を成長させてきたと。そして最終的に生が死を飲み込み、完全なるものが生まれる。これがあの有名な人がいってた男と女が一体になった完全なる全体というものだろうな。そしてそれが世界で唯一の人間となって、人間性の最終的な形となる。