基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ラッシュライフ 伊坂幸太郎

あらすじ
神様、神様を解体するもの、泥棒×2、くっついてまたばらばらになる死体、無職、金でなんでも買えると信じている男、買われた女、神を信じる男、強盗する老夫婦
全員が全員、ビリヤードのたまのようにぶつかりあって、それぞれのポケットにおさまっていく。そんな物語。


感想 ネタバレ無

うひゃー、あきらかに明らかに俺の中での伊坂幸太郎最高傑作だなぁああ。砂漠が一番だと思ってたけど、ラッシュライフが一番になってしもうた。砂漠は2番手だ。残念な話だ。

自分がこういう話が好きなのはわかっていたけど、まるで未完成のパズルが完成したようなそんな感覚を持った。

何人もの話がつながってつながってつながってそれぞれの結末にいたるっていうんだけれども、そのつながりかたが、興奮させるのだ。

いろいろな視点から進展していくので、面白さにむらがあるかもしれないと思ったけれど、そんな心配は無用だった。全部、全員面白かった。等価だ。等しく面白かった。なかなかすごい絶賛ぶりだ。ほれぼれするね。信者だよ。

ネタバレ有


神を解体する、だとか神を閉じ込めるだとか、伊坂作品には神をなんとかするっていう表現がよくでてくるなあーと思った。けどよく考えたらこの二つしかなかった。別によく出てきてないです。

泥棒が凄くいいキャラだったり、金至上主義の親父が凄くいい味を出していたり、解体されたはずの高橋がすごすぎたり、基本的にびっくりしつづけてしまった。

豊田さんもいい人すぎるんだが、結末にも大喝采といっていいぐらいの話なんだが、きっとこの素敵なラストのあとには豊田さんは逮捕されてしまうんだろうなぁと思うと悲しいのである。

郵便局強盗に行ったらすでに強盗が入っていて、その強盗がいちもくさんに逃げて行ったのにも笑ったが、これに関しては罪にとわれないだろう。強盗が強盗されたと通報するわけもないんだから。ただきっと若者を撃ったのはだめだろうなぁ、逮捕だろうなぁ。

盗みに入ったところにすでに泥棒がいたり、強盗に入ったところにはすでに強盗がいたり、盗みに入った帰りに老夫婦に銃を突き付けられて金を奪われるとか、とにかく面白くてしょうがないシーンばかりだったなぁ。

「撃った?」
「拳銃で」
 豊田が言うと青年が吹き出した。「拳銃でですか。それはすごい」
「本当だよ。見るかい?」豊田が冗談めかして言う。
ムキになる必要もなかったが、信じてもらえないのも悔しかった。
「結構です。そういう意味では僕もすごいですよ。僕は人を殺しました。今、トランクに入っています」


人を撃った男と人を殺した男が出会ったり、とにかく滅茶苦茶だ。カオスだよ。

まぁしかし、主人公なんて決めるのに意味はないのだけれども、それでもあえて主人公は誰なんだろうと考えたら、豊田だろうなぁ。基本的に他のすべての人たちの行動は、すべて豊田のための行動になっているしな。

神を信じる男は宝くじを落として、泥棒はそれを拾って犬にやり、その犬は豊田さんが飼う。

精神科医は拳銃を買い、だが鍵をなくしそのカギを使い豊田さんは拳銃を手に入れる。

金で買えると何でも思っている男は豊田と出会って、例外に出会う。豊田も自分が気付かないうちに40憶を守ったのだとは知らない。それと同時に譲れないものを手に入れたのだ。

かっこえー話じゃぁー。正直豊田が自分の犬を譲れと言われて譲らなかったシーンは泣いた・・。

「ところであんたのいま、一番大切なものは何だね」
「強いて言えば」豊田は半分は冗談のつもりで「この犬ですよ」
「いや、実はな、その犬を私に譲ってもらいたいんだ。ちょうど犬が欲しかったところでな」
「え?」
「その犬だ。もちろん、ただでとは言わない。かわりにそうだな」
「あんたさえよければうちの会社を紹介してやろう。無職ならちょうど良い。口約束ではない。この場で契約書を作ってやる」

『恐れるな。そして、俺から離れるな』
老犬は自分にそう言った。
豊田は男の手にはつかまらなかった。膝を立てると自力で立ち上がった。
「恐れない」と小声で呟いていた。
心が決まった。その場で深々と頭を下げていた。
「ありがたい話ですがお断りします」
「こいつは手放してはいけない気がするんです。譲ってはいけないもの。そういうものってあるでしょう?」


今まで金で何でも買えると思っていた男が、たかだかぼろい老犬すらも買えないというこの構図に興奮するのだ。エキサイティングだよ。そのあと後悔するぞ、お前の人生がどうなっても知らんぞとお決まりの文句を言う金持ちに向かって、いえ、私の人生はもうどうにもなりません。

あぁーやっぱり逮捕されるからかねー。逮捕されるから、いろいろ出来るんですね。すでに人生がどうにもならないから。 それはそれで悲しい。

ひょっとしたら逮捕されないかもしれないけど。40憶の宝くじがあるかぎり、逮捕されたとしても何かに困ることはないだろう。

途中まで、これは同じ時間軸上で起こっていることなのだろうと思っていたが、途中で違う事がわかってから、さらに面白さが増した。わかったのは、精神科医の夫がロッカーを見に行ったときにまだ空いてないといったところか。

そして一日ごとにみんなが何か特別な日に、と書かれた展望台に登っていく。

てっきり全員が同時に登っていく話かと思ってたぜ〜。 面白い・・・・です。

よくこんなにまぜこぜにしてかけるなぁ。

イッツオールライト!