日本沈没のその後を書いた作家としても有名な谷甲州の軌道傭兵シリーズを読み始める。とりあえず1巻を読んでみて面白かったら次も読もうと思ったが、予想通りはまってしまった。
日本国内のハードSF作家は正直あまり多くないのだが、そのうちの一人。しかしよく考えてみるとミステリーと比べるとSF作家の数は圧倒的に少ないような気がする。ミステリーよりもSFの方が可能性に溢れていると思うんだがなあ。
あらすじ
まだ宇宙がほとんど開拓されていない時代。 シャトルが打ち上げ直後に攻撃をうける。また時を同じくして宇宙基地フリーダム2でも謎の爆発が・・・
感想 ネタバレ無
緊張感あふれるシーンを書くのが凄くうまいと感じるが、どこがどううまいのか全くわからん。全くわからんけど緊張感がこっちにまで伝染して腹が痛くなってきた。
また作者が、舞台設定を2005〜2010年あたりを想定して考えていてここに書いてある事はすべて現実に可能なことである。
だからSFではないとあとがきに書いているが(書いたのは1990年)全くもってそんな事はない。これはSFである。アポロ号の面々が月に初めて降り立った時、これでSF作家は廃業だな というような意味の事を言ったとされているが現実に今もSF作家は月に行く話を立派なSFとして成立させている。
人間が月にいけるようになった今でも人は月に行く小説を憧れでもって読むし、宇宙へのあこがれが尽きることはない。
多分現実感が無いからだろうな。今も宇宙飛行士が何人も宇宙に行っているが、多くの人間にとって宇宙はまだ見上げるものだし、そこに飛び出すなんて考えたこともない人がほとんどだろう。
現実にそれが可能かどうかは関係なく、宇宙に出たらSFだろうと思った。
宇宙に出るのが旅行として当たり前になって月にも誰もかれもが分け隔てなくいけるようになった時がSF作家が真に廃業する時だろうか。 そんな事はないだろうなぁ 月が身近な存在になったとしても、まだ火星も木星もいっぱいあるんだ、簡単に廃業させてたまるか。
本の感想に戻る。 2005〜2010年を想定して書いたと言っているから、時代設定はちょうどぴったし今である。 内容が今とあってるかは正直全くわからんが。宇宙の事なんて自分から積極的に調べていかないと情報が下に全く降りてこないから今日本が衛星を何機うちあげているとか、何人が今宇宙にいっているのかとか、全くわからん。この小説で書かれているぐらいの事は確かに今の時代でもできそうだと感じた。
ネタバレ有
生身の人間が真空中で行動できる限界は二分程度だと言われていた。から始まる真空に突入するシーンの緊張感は凄かったなぁ。
宇宙がいかに危険な場所で一歩間違えたら即死する空間だというのをまざまざと思い出させるような内容だ。
未来世界を舞台にしたSFばっかり読んでいると宇宙ちょろいじゃんとか思うようになってくるが、本作に関してはそんな事は全く無いからな。
要するに2007年現在の話だから・・。 それにしても話が凄く細かい。真空にすると同時に温度が下がってまつげが凍ってしまうとか。
またレーザーが完全に実用化されていたり、原子炉で動いて、宇宙から海の中にいる潜水艦の位置を探知する衛星とか存在していたがこれはもう今現実に作られているのかなあ。レーザーを発射する衛星はもちろんあるだろうが、潜水艦の位置を探知する衛星ってのはどうだろう。
宇宙に6時間も一人で放置されるシーンがあったが、描写がいい具合に精神が狂いそうでよかった。むしろそのまま精神崩壊をおかしても面白かったなぁと思ったがそれじゃ話が進まないな。
真っ暗な宇宙空間に助けがくるかもわからないまま放置されたら発狂しそう・・・ってか発狂するだろうな。
宇宙飛行士はこういう訓練もするみたいだが。 それにしても主人公へたれすぎてふいた。
無謀にも突っ込んでやられてまた反撃をこころみて、今度は口車にのせられて後ろを向いた瞬間にボカンと殴られるとか・・・ お前もうちょっと用心しようぜ。
あと絵がついていたが、人間の絵はアメコミ的な絵で正直気持ち悪い。 しかし人間が出てくる絵が一つしかなくて、あとの絵は宇宙船と宇宙服だったからよかった。
こういうメカニック系の話だと絵がついてる方が想像の手助けになってくれて非常に助かる。ブルドーザーでさえ文章だけじゃ形が正確に想像できないのに、宇宙船ともなると専門用語が多すぎて全く形状がわからん。想像力が足りないだけだろうか・・・・。