基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

サターン・デッドヒート グラント・キャリン

本書は突撃爆撃ハードSF未来系宇宙冒険である。

あらすじ

土星の衛星で、異星人の置き土産が発見された。 それを調べたところ、土星の周辺には同じようなものがいくつかあるらしい。それをめぐり、地球vsスペースコロニーの一分一秒を争うレースが始まるのだった。

感想 ネタバレ無

凄い面白いなー。 どこが凄いかというと、色々あるな。まず物語の性質上何回か星に向って降りるシーンがあるんだが、そこにおける描写が凄い。ハードSFとしてのラインを保ちながら話の緊迫さを表している。しかもそれを何回もやって全く飽きさせないところが凄い。

また、居住空間についてもかなり設定が作りこまれている。結構、スペースコロニーと名だけ出して詳しい描写をしないハードSFが多いような気がするが、よく書かれていたように思う。

また最初は不甲斐無い主人公がきっかけによって度胸と勇気(この二つって一緒?似て非なるもの?)を得て成長するのも良かった・・・。 結構ハードSFだと科学描写を書くのに精一杯で不甲斐無い主人公ってのは動かしにくいと思うんだが(まあこれはSFに限った話じゃないかな?)そこも良かった。また男と男の友情の物語でもある。

読み終わった後に少し物悲しくなってしまったものだが、解説の最後に続編があると書いてあって非常にうれしい。

ネタバレ有



やはり一番好きなシーンはヘタレ提督が巨大なる土星を見たときのシーンだな。感動を通り越してその巨大さに圧倒された緊張感がこっちにまで伝わってきて自分も実際に物凄くでかい土星を見ている気分になって鳥肌がたった。

「この光景を見た、たった八人の人類の中に、今、あなたも入ったんだ。これを見るとみんな、人間がすっかり変わってしまう」


実際このあとの提督が微妙に変化していくのに気付いた時土星でっかいなあと改めて思うわけで。 土星とか、木星を見た人間の描写をSF読んでてよく見るけれども、ここまで素直にすごさが伝わってきたのはこれが一番かもしれないな。 どんなSFでも、初めてでかい惑星を見たときの人間の人生観が変わってしまうほどの衝撃を受けるというのは統一見解らしい。

もっともそれぐらい当然だろうな。 何しろ土星なんて地球の9倍で木星にいたっては地球の11倍だからな、大きさ。見たら・・・・どうなるかわからんな。


次に好きなシーンは、タイタンに降下するシーンと土星に降下してる最中に地球の船が危機的状況に陥ってそれを助けに行くシーンだな。

最初タイタンのことを土星と勘違いしてしまった。無知もいいとこだな。タイタンは土星の衛星の一つである。 タイタンに降下するシーンの凄いところは、ハードな描写をしている最中にもかかわらず文の疾走感が全く途絶えてないところだと思うんだ。 

地球の船を救いに行くところはほんとに鳥肌もんだ。自分を妨害した相手のためにわざわざ自分の身を危険にさらしていくってそれだけならヒーローものによくある話だが、主人公は表向き度胸がそなわったけどまだまだ中身はヘタレで、恐怖で泣き叫び、失禁し、死に恐怖しながら助けに行くんだから・・・。

続編に期待がかかる。おそらくすぐに読み始めることだろう