基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

脳のなかの幽霊、ふたたび/V.S.ラマチャンドラン

あらすじ
神経科学による脳の解説本。

感想 ネタバレ有

通常、こういうものは、入門書というか、素人にもわかりやすく書くのは相当の知識がないと書けないのだが、非常にわかりやすい。こんなにわかりやすくていいのか!というぐらいわかりやすい。そして簡単だ。
特に、専門的な用語がほとんど出てこないのがわかりやすさの要因だと思っている。
大脳皮質とか、そういった部位の言葉さえ出てこない。通常そういった言葉を使って、説明したほうが、知っている人間にとってはわかりやすいのだがあくまでも患者での例を説明として使っている。こういった分野の本は、フロイト精神分析入門を読んだだけなのだが、フロイトの書いたものは単純に読み物として面白かったが、本当かどうか、それどころか本気でいっているのかどうかすらあやしい事を書いていたりして、面白かったものの、疑問の残る本だった。

この本はそして、わかりやすいだけではなくて、面白い。
心に残った事というか、覚えておきたい事をコピーして書いていくのが今回の目的だ。
確か読んでみようと思ったのは、心が脳の中に部位として存在していないという、ならば心とはどこにあるのかとかいう単純な疑問を追及している本が無いかと思って、手当たり次第に読んでみようと思ったわけである。
この本には書いていないが、まぁ手始めに手をつけるにはうってつけの本であった。

人間は天使ではなく毛のないサルにすぎない。


相貌失認は、側頭葉の紡錘状回と呼ばれる構造が左右とも損傷されることによって起きる。

共感覚とは、数字、たとえば5や6などを見た時に、色と共に思い出される感覚の事。だいたい200人に1人は存在する。これは脳の中に存在する、数字を認識する器官と色を認識する器官が隣り合っているため、クロス配線によってつながってしまうことがあるから。

しかし意識というのは、まったく面白いものである。たとえば脳のある部分に傷がつけば、存在が認識できなくなるものがあるとする。もしくは何かあるはずがないものを見た時に、脳はそれをあるはずがないから、それはなかったはずだ、としてそれを視覚野から消してしまい、見た本人はそれが実際にそこにある事にすら気づく事は出来ない。
例えば脳の右頭頂葉が損傷されると、半側空間無視という症状が発生する。視野の左側の世界が、あるという事はなんとなくわかったとしても、それに対してひどく無関心になる。
例えばひまわりの絵を描いたとして、その症状の患者は、ひまわりの右半分だけを描く。
もしこの世に宇宙人なんてものがいたとして、世界中何百万人も歩きまわっていても、脳が存在しないものとして認識の外に追い出してしまう、っていう事もあり得ないことじゃないって事ですね。


宇宙には「精神的なもの」、「物的なもの」という区別はなく、両者は同一であるという見解、これを中立的一元論という。

人は、他人が取った行動を見た時も、脳の中では自分がそれをしたのと同じ反応が起こる。これをミラー・ニューロンという。この能力が私たち人類を特徴づけているのかもしれない。

芸術的普遍性について 芸術の普遍的法則
1 ピークシフト
2 グループ化
3 コントラスト
4 孤立
5 知覚の問題解決
6 対称性
7 偶然の一致を嫌う/包括的観点
8 反復、リズム、秩序性
9 バランス
10 メタファー

ピークシフトについて
ラットに正方形と長方形を区別させる訓練をさせる。 正方形の時には何も与えずに、長方形の時だけチーズを与える。するとラットはすぐに学習し、長方形を好むようになる。このとき、より細長い長方形を与えると、ラットはそちらのほうをより好むようになる。これはつまり長方形性が高いということである。
これを像に当てはめると
女性の姿態の平均をとって、そこから男性の姿態の平均を弾くと、大きな胸と大きな腰と細いウエストが残り、次にその差を増幅する。
これがピークシフトである。

グループ化について
脳を活発に活動させるようなものが、アハ信号をできるだけ多く生み出そうとしているもの。

人間の脳には1000億の神経細胞があるが、、二つのパターンが重なり合うことはない。

芸術作品が何故生まれたかについて
実像「芸術作品」を作り、それをバイソン狩りのリハーサルや子供の指導のための「小道具」として使っていたのではないか

メタファーについて
無関係に見える二つのものが対地され、それによって、どちらか一方のある重要な面が強調される事。

共感覚について
芸術家や、詩人や、小説家──言いかえれば変わったタイプの人たち──に七倍もよく見られるという事実。
共感覚によって、一見無関係なものごとを結びつける能力が発達した結果、そういった職業についたってことか。
こういうのはやはり生まれ持っての才能というか、特性っていうんだろうな。

ブーバとキキの話は面白い。こんな事があったんだな、と思ったが、書くのはちょっと難しいな。

自由意思について
10分以内に、自分で決めたタイミングで指を動かすようにと言われた被験者が、指を動かそうとする約1秒前に、脳波の電位変化が現れた。
これが何を表しているかというと、指を動かそうという「意志」を自覚する一秒近くも前に、脳が指令を出しているということで、実際に行動をしきっているのは脳で、「自由意思」なんてものはないのではないかということ。

これも怖い話だなぁ。行動のほとんどは無意識な欲求に支配されているって言ったのはフロイトだけれども、あれをしようこれをしようと思って、ちょっと動くのもすべて脳の欲求によって動かされているなんてな。