あらすじ
ベルカ、吠えないの?
感想 ネタバレ無
タイトルマジ鳥肌ヤバイ。表紙も口をグワーとあけて威嚇するような、そんな犬の写真、まじやばい。
確かにこれは、作者のいうように爆弾だった。犬性というものの爆発というか、犬に関しての爆発だ!(意味わからない)
タイトルが鳥肌なのはもちろんだが、各章のタイトルもかなりいかす
「おれは解き放ちたいのだ」から始まってほとんどの章のタイトルが気に入っている。
「組長、おやすみ」「ロシア人は死んだほうがいい」「それってイヌの名前かよ」
「ヤクザの嬢、なめんな」「うぉん」「ベルカ、吠えないの?」
ヤクザの嬢、なめんな、はマジお気に入り。ヤクザの嬢凄いな本当に・・・。
一瞬のインパクトというか、一語で与えられるインパクトというのが本当に強い。その分長文になったときは少しだらだらしているように感じたかもしれないが、一瞬のひらめきが最高だ。
犬紀元など、徹底的に犬を中心に据えた物語が続くのかと思いきや、人間もたくさん出てくる。もちろんそれは、犬というものを語る時に人間は欠かせない要素のはずだが、それにしたって、人間、出番多すぎじゃね?とは思った。
まぁ、タイトル負けしている作品では、断じてない。タイトルをそのまま表現しているかのような内容だった。負けてもいないし、勝ってもいない、という印象だが。犬の歴史とともに、人間の歴史を語っている。
そして映画のような俯瞰形式の三人称ではなくて、神という視点から見る犬の歴史という体裁をとっている。これもまた、スケールを広げている。
ネタバレ有
ヤクザの嬢のキャラクターは異常だろ・・・。どこから出てきたんだよこんなやつ・・・。十一歳のくせに一番最初に発した言葉が
「エンコ、つめさせるぞ」
って将来有望すぎる。
しかし、クドリャフカって生のエピソードのままで誰でも泣かせてしまうような、感動的な話なのにあえてそれを、ほとんど描写しないでそのまま、その時点を犬紀元前と犬紀元後のようにして分けるとか、まったく描写されていないにも関わらず、その存在感を見せつけている。
わざと克明に書かなかったのが、好感が持てる。書けば、それを知らない人なら当然涙し、知っている人でも涙するような話なのにさらっと流す。
ヤクザの嬢が、親父を殺すとは思わなかった。ていうかあの辺は全く理解不能だ。突然乗り込むオヤジもオヤジだが、犬に襲わせて殺す娘も娘だ、このへんあっさりすぎるぞ。
やはり人間は主役ではないから、そういった細かい心の機微みたいなものには突っ込まないのだろう。かといって、犬には人間みたいな心の機微なんてないから、結果ひどく味のない朴訥とした、無愛想な作品になってしまっているが、そこがこの作品のいいところともいえる。
イヌがありありと状況を理解していたり、色々深い事を考えていたり、という事がないのが、いい。単純なシンプルな事しか考えていない。未来も過去もなく、ただイマがあるだけ、ただ出来事があるだけ。そうやって、次から次へと場面を変えて、いくのだ。
凄い話だった。