感想 ネタバレ有
これほんとに十巻で終わるのかどうか・・・。長くなる分には何の問題もないのだが。三巻である。まだ梁山泊は準備の段階だ。主な出来事としては方臘の信徒がついに行動を開始し、童貫の軍がついに動き出し、王進の元から張平と花飛麟が出てきて、楊令がついに梁山泊の頭領におさまった。
こうして羅列してみると、全てが動き出したな、という感じはする。次の巻あたりから大きく動き出すのは、と予測させるに十分な内容だ。
これから起こるであろう事を羅列してみるか。方臘軍と童貫軍との戦いがまずある。それから武松の呉用救出。これによってどうなるかわからないけれど、ひょっとしたら方臘軍と梁山泊がなんらかの形で連携をとるのではないか。方臘が梁山泊入りするという展開は全く見えない。さらに聞煥章建国の策がどうなるかで全く展開が変わってくる。ただ、もし仮に聞煥章建国が成立してしまったらこれ、もはや十巻なんかで収まるはずがなさそうに思う。三国志並の入り乱れ方になってしまうのではないか。宋、金、梁山泊、燕国の四つ巴に等しい事になってしまう。そんな事を想定していたらとても十巻とはいわないだろうから、燕国が建国されることはなさそうだなぁ。とすると聞煥章がどうなるのか、死ぬか、まさか梁山泊入りすることはあるまい。死ぬのか?
まぁよく考えてみても、根も葉もない想像であるからして、これぐらいでやめておこう。
二巻か、三巻で呉用が死ぬのではないか、と書いたけれどそんなことはなかった。
呉用がこれからどうなっていくのかも非常に気になるところである。しかし、一番予想外だったのはやはり方臘だろう。
「おまえは、俺の息子だ」
「はい」
「だから、教えてやっている。死ななければならない、理由をな」
「えっ」
方臘が、方天定に歩み寄った。次の瞬間、方天定の首は宙を舞い、階に落ちて転がった。
ゲェー! 息子を殺しやがった。このへんがこええところだよな、中国の常識。子が親を敬うのは当然として親は別に子どものことを好きにしていいっていうそういう感じのあれが。それでも殺すとは思わんかった・・・。
大抵こういうやつがだんだん火種になっていくのに、それを殺してしまうとは。そういう決断力というか描写を含めて、方臘のキャラ付がだんだん凄まじいものになっていく。呉用が方臘に心酔するのも時間の問題か、それとも武松が間に合うのか、楽しみだ。最期の言葉が えっ ってのもかわいそうな話だよな・・。
まさかこんなにでかくなっていくとは思わなかった。そして聞煥章の新しい国を作ろうというその思いのほかでかかった野望にびっくりだわさ。てっきり李富にかわって青蓮寺のトップに躍り出ようとかいうぐらいの事だと思っていたのに、さすがにタダじゃ終わらせないか聞煥章。聞煥章と扈三娘の長い長い長い伏線はいったいどうなるのだろうか。
楊令が子午山に戻っていったときの話が非常に泣ける。というか子午山の場面になると本当に心が洗われるような気分になる。誰がいってもそこに行けば精神も体も鍛えられるという、それでいて世間の毒々しさもない。あるいみ天国といっていいようなところだからだろうか。
「この山から、降りるのではなかった。何度も、そう思ったのでしょうね。しかし、おまえはいつも、ひとりであってひとりではなかった。おまえはそれを、受け入れたはずです。思いだしますよ、おまえが一度だけ、私に語ってくれた事を。肌身離さず持っていたもののことを」
「王母様」
「持っていますか、いまも?」
「はい」
楊令の手が、襟の中に入った。出てきた掌の上に、小さな袋がひとつ載っている。
鄭天寿!! お前の死は無駄死になんかじゃないぞおおおお。山田を見返してやったな!
ところで、鄭天寿、いい味を出しました。小者に急に正確づけが始まると末期も近いという読み方のいやらしさ。七人目の犠牲者であります。小説史上に残る犬死にであります。
山田とはこのセリフを言った編集者
鄭天寿犬死じゃなくてよかったなぁ。やはり過去があるというのは面白い。どのキャラクターにも過去がある。しかし実際のところ、死に方だけをみたら完全なる犬死にである。あれほどサクっと死んだのはやはり鄭天寿だけだろうな。サクっと死んだって意味わからんが・・・。
「宋江殿より託されたこの旗は、聚義庁の入口に掲げる。長く、苦しい闘いが続く。その闘いのすべてを、この旗が見守るだろう。この旗にむかって、恥じること無き自分であろう、と私は思う」
また、声があがった。
聚義庁の屋根に、『替天行道』と大書した、真新しい大きな旗が掲げられた。
ついに楊令きた!!!これで勝つる!
楊令伝で、キャラクターが死んでいった者たちの事を思い出して語る場面があるたびに、その場面を思い出して涙が出てくる。鄭天寿のように、早くに死んでいった人たちも思い返すから反則である。そしてついに旗があがった。やはりこっからどんぱちかね。動きだすのかね、物語が。非常に楽しみである。