基本読書

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餓狼伝2 修羅の道/夢枕獏

感想 ネタバレ有

二巻である。やっていることは一巻とまったくかわっていない。男と男が格闘するのみである。

ここにきて夢枕獏、さらに新キャラを出してきた、それも主人公を食いかねないほどのキャラクターである。もはや三巻で終わらせるつもりなんてさらさらない。本人もあとがきで4巻になりそうだ、なんてアホなことをいっているが、三巻を読んだ時点でその約束が守られるのはなさそうだ、と思うだろう。何を思ったのかトーナメントを開催したのである。それはジャンプのお約束だろう、と突っ込みたくなったが確かにこういう単純な話である、というか格闘においてトーナメント方式のバトルというのは何よりもやりやすい方式なのではないか。何しろ闘う舞台と、理由をわざわざ作る描写を省く事が出来るのである。今まではいちいち主人公である丹波に四国に移動させたり横浜に移動させたりと割と忙しい活動をさせながら、敵とわざわざ待ち合わせをしたり待ち伏せをしたりと、闘うのにもそれはもうたくさんの苦労をしてきたのである。それに丹波、確実に無職である。こいつが金を持っている筈はない。どうやって四国まで移動したの?と心底疑問である。まぁこいつなら走って移動しそうな気配はあるのだが。それをトーナメントは恐ろしいほどに簡単に解決してくれる。場所はでかいところを用意してくれるし、敵は勝手に集まってきてくれるし、闘う理由はいわずもがな、全員共通の目的に向かって突き進むことになる。単純に闘うことのみを求めたこの小説にとってこれ以上便利なものはない、と言い切れるぐらい便利な存在がこのトーナメントなのである。これでお金のない丹波はわざわざあっちにいったりこっちにいったりしないで済むし、相手もわざわざ丹波を狙ってあっちに行ったりこっちにいったりしなくていいのである。そしてトーナメントというのは大体漫画でも引き伸ばしに使われる代名詞というぐらいのレベルであって、それはもう時間をかけようと思えばいくらでもかけられる存在なのである。これが四巻で終わるはずがない、とトーナメントが開催される気配を感じた時に思った。

バキも、トーナメントをやっていた。あれは面白かったなぁ。渋川先生とか愚地とかもあの頃はまだ第一線で頑張っていたというのにいつからあの二人はかませ犬的な存在になってしまったというのか。なんなんだよピクルって。そう、つまり格闘といえばトーナメントなのである。トーナメントなくして格闘なしだ。

藤巻との戦いはまたしても途中で中断である。一巻の終わりも梶原との一騎打ちは中断で終わった。なんだこれは、生殺しなのだろうか? 何故最高の戦いを二回も続けて中断されなければならないのか。さすがに次では何らかの決着をつけてもらえるとは思うのだが。

梶原との一騎打ち、かなり中途半端に終わったように思えるのだが丹波が完全に納得してしまっている。理由がよくわからない。あれだけ執着していたのに、どちらかが倒れるまでやらなくていいのだろうか。

それにしても、である。凄いのは文章だけじゃなかった。いや、文章が凄いのはその通りなのだが、読んでいてその感覚まで伝わってくる。たとえば筋肉の描写である。首が太くて、腕が太くて体全体のバランスがしっかりととれている、というだけの描写なのに、いったいそれがどういう状況なのかまるで自分のことのように伝わってくるのだ。きっと自分に筋肉がついていたらこんな感じなのだろうなぁ、と想像力を喚起させる。こんな事はあまりない。

第一章でカマセ犬的存在が次々と1ページぐらいの描写でやられているのはなんか笑ってしまった。かませという言葉がこれほど相応しい奴らもいるまい。

どんどん強いやつが集まってきてどんどんどんどん面白くなっていく。ついに松尾象山が少しだけ闘ったし、川辺も長田も姫川もその実力を表していないし、グレート巽にいたっては名前だけしか出てきていない。こいつらが一体このあとどんな死闘をくりひろげるのか・・・。