基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

三国志 十二の巻 霹靂の星/北方謙三

ネタバレ有

さぁついに十二巻である。孔明またしても策をミスる。お前、これで何度目のミスだよ! 一度なら偶然だが二度三度と起こればもはや必然という言葉を知らないのか。魏延が嫌いだからって、馬謖を使ってその馬謖が致命的なバカだったんだから仕方ない話だ。というかやはりこれはもう必然であるな。今までの孔明のミスが全て人が思うとおりに動かないことから来ている。

人が全員思うとおりに動かないと成功しないような作戦を立てる方が間違っていると言い切ってしまってもいいのではないか、何しろもう何回も失敗している。南を平定したところまではよかったんだが・・・。

いろいろなところから恐ろしい男だ・・・孔明・・・といわれているが結局成功していないのだからしょうがない。でかい夢ばかり語っていてそれが成功しないのなら、俺、将来ビッグになるぜ! といっているやつと同じである。いや、努力は限りなくしているから違うか。むむむ・・・恵まれない孔明

曹丕がドSで司馬懿がドMという設定はいったい何の意味があるのだろうか。普通こういうのって、さりげなく描写して読者にこいつドSじゃね?みたいな感覚を持たせるぐらいのが多い気がするんだが直球で二人ともドSとドMだから正直対応に困る。罵られて興奮する司馬懿を読んでいて複雑な感情が込み上げてきた・・・。

そういえば全く考えてもみなかったが、この時代同性愛も結構ありそうなものだが、そういったことは全く描写されていないな。吉川三国志も、というかただのエンターテイメントで誰も男同志の同性愛なんて読みたくないが。実は曹操は男が好きだった! なんていう新解釈聞きたくもないしな。

ドSとドMとまるで逆の方向性ながら、結局二人とも最愛の女性を殺してしまうという結論にたどり着くのはやっぱり何事も一回転して繋がっているんですよ、という事だろうか。この二人の絆は読んでいて面白いものがあったのだが、曹丕は憤死、無念である。

この北方三国志、憤死する人間が異常に多い気がする。曹丕は憤死だし曹休も憤死だし劉備軍のびじんも憤死だしどれだけ血管が弱いんだこの時代の人間は。もう少し頑張れ。

山に登った馬謖に対して司馬懿が、山に登った馬鹿な若造とか、馬鹿に守らせたとか、ものすげー罵倒である。こんなこと言ってるやつがベッドの中じゃ罵ってくれと懇願してるんだから世の中わからないものである。それにふさわしいだけの馬鹿をさらしたんだから、しょうがないことではあるが。

馬謖が馬鹿をさらした時はあまりの馬鹿さ加減に、思わずはやく死ねばいいのにと思ったものだったがいざ馬謖がほんとに死ぬとなると涙が止まらん。というか孔明馬謖のやりとりは反則だろう。

孔明も割と残酷な男である。おまえは悪くない、おまえを使った俺が全部悪いんだってそれ最大級の侮辱ですから・・・。こんな事を平然といえるあたりやはり名軍師といえなくもない。

孔明の回想。もう孔明も50に近いのではなかろうか。出てきた当時はまだ20代だったのに時の流れの速い事よ。
やはりじじいになると昔の事を思い出すのだろう。

 歩け。いや、駆けよ。
 言葉とは別に、、劉備は自分にそう語りかけたのだ。
 天を仰いだ。漢中の空には、雲が垂れこめている。孔明は、眼を閉じた。
 殿が早く逝ってしまわれたので、お礼を申し上げるのを忘れてしまいました。救っていただいた、お礼を。
 孔明は、駆けております。力のかぎり、駆け続けております。殿も戦によく負けられましたが、この孔明も負けております。同じですな。殿が先に逝かれたことだけが、違ってしまいましたが。

充分に生きたけどな、劉備は。駆け続けております、で泣いた。確かに劉備と会う前の孔明からしたら、全力疾走もいいところだ。孔明が昼夜問わず働いている描写が一度ならず書かれていたから実感もこもる。そして劉備もよく負けたが孔明もよく負ける。そういえば曹操もよく負けていたなぁ。豪傑は勝負に負けるという法則でもあるのだろうか。劉邦も負け続けて最後に勝った。英雄は負ける。

 「泣くな」
 趙雲は、まだ眼を見開いている。
 「男の別れだ。さらば」
 趙雲の眼が、静かに閉じられた。


またさらばかよ。さらばばっかりだな、と思ってちょっと前のを読み返してみたが、さらば、なんていって死んでいったのは趙雲が初めてだった。蜀の武将の死にっぷりはみんな半端ない。タイミング良すぎるだろ。関羽雲長、帰還できず、にもちょっとびっくりしたがさらば、もびっくりだわ。

潔い男たちばかりで感化されそうだ。今、車にひかれて死にかけたら、さらば、といって死んでいってしまいそうだってこんなこと前にも書いたな。これで孔明もほとんど一人になってしまったな。十二巻で趙雲が死ぬのは予想通りといえば予想通りだったので特に衝撃もなく。次で孔明が死んで終わりだろう。さて、行こうか。