基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

闇の左手/アーシュラ・K・ル・グィン

この人ゲド戦記の人だったとわ。記憶の彼方に吹っ飛んでいったゲド戦記だけれども、面白かったのは覚えている。

ヒューゴー賞ネビュラ賞受賞らしい。だが考えてみるに、最近読んだ海外SFは例外なくヒューゴー賞を受賞していたかネビュラ賞を受賞していた気がする。特にヒューゴー賞は良く見るのだが、いったいどれだけのペースでヒューゴー賞を授与しているのだろう。というか、ヒューゴー賞にいったいどれだけの価値があるというのか。日本でいったらどの賞に匹敵するのか。それは置いておこう。

圧倒的なまでの描写力に思わず読むのをためらう。最初の4ページが受け入れられるか、否かで作品の評価が分かれそうだ。想像力の足りない自分が必死にイメージしなければ、ついていけない。最初の4ページは把握することがあまりに多すぎて、ためらうかもしれないがそこを過ぎれば綿密な世界観が広がっている。といっても、どうも説明が長すぎる+設定が多すぎるように感じるところが多々あり、かなり読み飛ばしながら、読み切った。だから大層なことはとてもいえない。

両性具有の異星人と、普通の人間が交流を持とうとする物語だが、両性具有の異星人っていうアイデアティプトリーの短編にあったような気がするが、汝が半数染色体の心である。違ったような気もする。もっとちゃんと書いておけばよかった。半数ずつ染色体をもったものが、交互に世代交代をしていく話と過去に書いているが、今読み返してもまったく意味がわからない、もうちょっと詳しく書いておいてほしいものだ。

アイ視点の時は、なんの問題もなく読み進めることができるのだが、エストラーベン視点の時にエストラーベンが自分を予と言うのは正直辟易した。ことあるごとに予が、予がってお前カレーでも食ってろ。予が、が異常にうざかったのと言っている事が訳がわからなかったので(読解力というか色々なものが足りていない)こいつ視点の話はほとんど読み飛ばしてしまった。それにしても両性具有というものを表現する時に予は最適か否か。ふむ、普通に考えたら最適なはずはないのだが、そもそも男と女に通じる一人称てのも難しい話であるが普通に私、でいいのでは? 僕にして僕っ娘風にしてもいいかもしれないが、訳のせいかしれんがこの作品の中でいえば両性具有といっても書かれ方は完璧に男であるからして僕じゃどうにも・・・。

そもそもにして、何故両性具有という設定でありながらも、書かれ方が完全に男っぽいのかという疑問がある。面白い方に考えてしまえば、作者が腐的発想の持ち主で、ボーイズラブ的な物が書きたいと妄想しているうちに男っぽくなってしまったという説はなかなかいい感じに面白くなるが、あまり有力ではなさそうだ。まぁ、両性具有だという設定なのだから、男っぽかろうが女っぽかろうがどちらでも本質に大した違いはないと思うので何の問題もないのだが。これをもし仮に、男の作家が書いたならあるいは両性具有は女性っぽすぎる! と非難を受けるのではないか。男が戦艦を彼女と称するのと同じようなものではないか。もし仮に女性の軍人だったら、戦艦は彼と呼ばれると思う。

個人的に二元論は、単純でわかりやすいから好きなのだがこの物語は二元論を肯定しているのか、否定しているのか、あるいはそのどちらでもないのか。両性具有というところからは明らかに二元論を否定しているかのようだが、本人は予は二元論じゃ!(うぜ)と言っているし。二元論全体論かと議論していることがすでに二元論であるという考え方にのっとって、どっちでもいーじゃん?そんなの、という立場をとっているのが本書であるように思う。アイとエストラーベンの間にある、愛とも友情ともいえる曖昧な絆のように世の中すべてはあやふやなのである。とかなんとか書いておきながらも、解説をよくよく読んでみれば、善悪のように両極端の二元論ではなく、陰陽のような相互に意味を引き出す道教的な方の二元論をとっていると書いてある。ふむん、理解出来なかったのは作中に出てきた神話みたいなところを読み飛ばしたことも関係しているだろう。いつもは、読み飛ばすぐらいならばよまねぇ、と割り切って読まずにしまいこむのだが、今回に限って言えば読み飛ばしてでも読む価値のある本だと判断して読み進めた。結果は正しかったわけだが。

 わたしは人生を愛する限りエストレ領の山々を愛するが、この愛には憎悪の境界線はない。その先は無知なのだと思う、そうあってほしい。

ここでは愛か、無知かの二元論という立場をとっているのだろうか。陰陽二元論でも境界線はあるはずなのだが、無いとすれば二元論といっていいのかどうか。憎悪が引き起こされるのは、無知のせいだというのには全く同意である。相手に対して憎悪が湧いたとすればそれはその相手の事をよく知らないからである。



前回と今回は、意図的に短く書いてみたのだが、いい感じだ。今までは3000文字を大体の目安に書いてきたが2000文字ぐらいが一番ちょうどよい感じに書ける気がする。これからは抑え気味に行こう。