基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

戦総のリアル/押井守・岡部いさく

勝てっ!勝てっ!勝てっ!
勝てば全て解決するっ…………!
      ──カイジ

押井守が好きなので読んだが、正解だったな。対談と銘打ってある物の、実際85パーセントは押井守が語りつづけるという理不尽っぷり。はたして岡部さんは必要だったのか?と首をひねらざるをえないものの、押井守のあの反論を許さない、アニメや漫画を例にとりまくりながら理論武装していくやり方についていくのは、他の人じゃ無理なのかなとも思った。なんて書いておきながら実際のところ、軍事的な知識なんて皆無に近いし岡部さんなんて今回初めて知ったぐらいだから何を言っているんだお前は・・・・という感じなのではあるが。

しかし押井守に突っ込めない人間を対談の相手として選ぶのはどうなのだろう。遠慮してないでバカバカ突っ込んでいけばいいのに。いやいや押井さん、それはありえないでしょ、と臆せず言える人だったらもっと面白くなったのではないかと。別に討論番組とかでやっている、あの討論をやるために討論をしているような意味のわからない人たちの真似をしろというわけではなくて、もう少し発展性のある会話が欲しかったとも思う。
一度軽空母を4隻日本海近辺(だったっけ?)に浮かべて二隻ずつ巡回させろ、みたいなことを押井守が言ったことに対してかなり岡部いさくが納得いきかねる、という返答をしていたが弱い弱い。結局怒涛のように押井守が利点を並べたてて、一つ二つは確かに、と頷いていたらいつのまにかその話が終わってしまっていた。もうちょっと反抗しろ!

最初から最後まで遠慮がちに話す岡部さんはまあ面白いっちゃあ面白かったけれど。宮崎駿とでも対談させればよかったのだ。 特に最初の方の岡部さんの発言は、うんとか(笑)とかしかない。こいつは相槌を打つためにここにいるのだろうか? と不安になったものの、後半は多少喋っていた。

押井守が最近のアニメから昔のアニメから自分のアニメからなにからなにまでを含めて話をするから面白いのであって、別の人間が同じ事を言ったら何をバカなことをいっているんだこいつは、と一笑に付されるレベル。知識ばかりがあってもどうにもならないけれど、語るためには知識ぐらいなくては駄目だ、ということを証明したようなものだ。戦争のリアルを語るアメリカ軍一兵士とかならばまだしも、知識しかない押井守が言う事がいったいどれほどの信憑性があるというのか。だれも信憑性なんか求めていないのだろうが。アニメは最近の、コードギアスガンダムマクロスから宇宙戦艦ヤマトまでさすがに幅広く話に出てくる。さすがに押井守らしく、基本的にけなしているのだが。実際のところけなしているようでいて、実は褒めているということが多々あるので押井守はよくわからない。やたらとRPG-7を褒めている。もちろんRPG-7について何も知らないのでそれについてどうこう言えるわけではないのだが、実際に撃ったその衝撃がすごかったから凄いものだと思っただけじゃないの? という反抗心が起き上がってくる。

 この間大ヒットした『男たちの大和』だって、あれは世にも不思議な映画で、登場人物全員が被害者。乗組員の水兵から息子を死なせた母親に至るまで。大和の艦長も、命令を伝えにきた、あの参謀のなんとかまで被害者で。「このことを貴官に言うしかない」とか言ってさ。言うしかないって、なんだよそれは(笑)。行かせたのお前なんだから。十分ごとにみんな滂沱の涙。その映画が当たるってどういうことなの?

見た事ないのにこんなこというのもなんだが、そう言われてみればそんな映画のような気もする。予告編しか見た事ないけれど、やたらと悲劇的。どいつもこいつもやられている。たしかにそらどうなんかい? といいたくもなる。だが実際映画を見ていたら多分絶賛していただろうな。そういうの嫌いじゃないぜ。

自衛隊が実は強いっていう本が売れているんだよね、という話で始まる。なんでなんだろうっていって問いかけたままで終わっているが、ちょっと考えてみよう。考えてみようってそんな大したことじゃないけど。日本人が自衛隊の強さを信じたいからなんじゃないかな? だって強かったら自分に都合がいいからね。なんか世界情勢が、大分まえから怪しい。アメリカは戦争を始めるし、日本にもいつテロが起こるか分からないっていう不安感は高まったよね。心のどこかで日本も攻められるかもしれないっていう考えがあるはず。大多数の人はそうなったらアメリカが守ってくれると思ってるだろうけど、自衛隊が強いっていうことさえ信じていればもしアメリカが守ってくれなくても大丈夫。中国が攻めて雇用が、北朝鮮が攻めてこようが自衛隊が強ければ大丈夫。だからみんな自衛隊が強いっていう情報が好きなのじゃないかな。

 やっぱり敗者であることの居心地よさにみんな涙してるだけ。『雷轟』のあとがきに書いたとおりルーザーなんだよ。ルーザーであることのほろ苦さと自己憐憫に浸ってるほうが楽だから人間はルーザーになる。ルーザーであることのほうが容易なんだ。

そりゃそうだ。日本がちょっと戦争をにおわせた行動をとるだけですぐに戦闘は悪い事だなんだっていったいどこからそんな意見が出てくるのか。まるで世界で唯一核を撃たれた日本が世界で一番戦争を知っていて、その犠牲者たる日本人は戦争に対して何を言ってもいい立場であるかのように傲慢にふるまう。実際に核を味わった人間が今日本に何人いるっていうんだ。というかそもそも、闘わずして国を守れると思っている。非戦闘を訴えていれば相手は攻めてこないと思っている。もしくは襲ってきてもアメリカが守ってくれるとでも思っているのだろうか。日本人は戦争から疎外されているっていうけれど、その通りだよ。戦争が起こっても自分たちとは全く、全然、関係がないとでも思っているのだもん。一生自分達は闘わないでもいいと思っているんじゃないだろうか。ってそんなこともう何回も言われ尽くしてきたことだけどね。韓国なんか兵役があるからね、親しくしていた韓国人が全員兵役経験者だと知った時は、こいつらと喧嘩するのだけはやめよう・・・と神妙な気持ちになったもんだ。自分の国を自分で守れる力があって、初めて国家として成立しているということが日本人にはわかっていないのじゃないか。もちろんそういう自分だって日本人なのだから何も偉そうなことは言えない。兵役にとられるわけではないし、知りあいが戦争にいって帰ってこなかった、なんていう経験も、無い。攻撃されて日本が完全に占領されてからじゃ何もかも遅すぎるよ。どっかに占領されて何で戦力をもたなかったんだ!ってそりゃアホな話で。国民全員ダライ・ラマならともかく。

 面白いのは、日本人って日本人であるアイデンティティを自分で声高に確立しなくていいじゃないですか。

確かに。でもそれはやっぱり島国の特権じゃないのかねぇ。長いこと自国だけでやってきて、それが普通になってる。長期間占領されたことだってない。日本で生まれて、日本で育ったらそれだけで日本人として確立されている。それはやっぱり土地との関係性もあるんだろうと思う。未来永劫それじゃダメだっていっているが、そりゃなんだって未来永劫は無理だろうけれど当分日本のアイデンティティが失われる、なんていうのは想像もつかない。日本人が日本で生まれて、日本で暮らす限りアイデンティティが失われるようなことはないんじゃないか? 移民とかが大挙して押し寄せてきたり、日本沈没みたいに日本の土地がなくなっちゃう! なんてことが起こらない限り。

レッドサンブラッククロスでも書いてあったけど、時代を経るにつれてどんどん戦闘の時間は短くなっていく。威力はもう核爆弾でいくとこまでいっちゃったけど、あとはもう軽量化、簡略化の段階でしょう。いかに手軽に攻撃できるか、みたいな。本当に空母みたいなのが必要なのかよくわからんのだよね。歩兵が必要なのかどうかすらわからない。軍隊の費用を全部無くしちゃって、その分を全部ミサイルにして(ミサイルの知識も全然ないからどんなのがいいとかわからんのだけど)敵地にバンバン落としまくればいいんでねーの? とかシヴィライゼーションで核弾頭を敵地にばんばん落としてたら、全部の国に宣戦布告されたけど核落としまくったら余裕で世界を支配できたっていうあれみたいもので。
どこまでもゲームの話なんだけどね。まったく本の内容に関係ないな。

しかし本の内容といっても、大半が冗談とも本気ともつかないような雑談の連続であって、かろうじてついていける話といえば小銃の話だけである。しかもその知識といったってFPSをさんざんやって覚えたまがいものの知識でしかない。ガリルとかM4カービンとかAKとか頭の中にイメージは浮かんでくるけれどそれはあくまでゲームの中の話であって。FPSって言えばやっぱり海外だけれど、それはやっぱり戦争があまりにも身近だからってこともあるのだろうか。FPSをやることによって人を撃つことに抵抗がなくなるとかいう洗脳じみた話があるけれど、あれってほんとなんだろうか? COD4みたいなゲームは日本じゃつくられないのかな?ロストプラネットはできた、メタルギアソリッドはできた、いやでもメタルギアソリッドはどうなんだろ? 個人的にいえば日本じゃやっぱりリアル系とかを問わずにFPSは作れない。それはやっぱり戦争のリアルっていう問題になっていくのかもしれないけど違うのかもしれない。