- 作者: 田中ロミオ,山崎透
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/12/19
- メディア: 文庫
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さてさて、今回は中編が二つである。1巻2巻3巻とそれぞれほんわかした雰囲気の中にぴりっとした展開の毒だったり、七味みたいなものが入ったりしていたがこれはどちらかというと1巻に近い。立ち返ってきたような印象を受ける。妖精さんの超科学でしっちゃかめっちゃかして、ちょっとした教訓だったりオチを残して終わる。
- 妖精さんの、ひみつこうじょう
わたしたちがひごろたべているとりにくやぶたにくやうしにくはもともとはみないきてうごいているどうぶつだったのです。なんていうことを改めて実感させられる中編である。いや、別にさせられない。またはわたしたちが普段食べている野菜には、実は意志があるのかもしれません、とかいう哲学的な話である。いや、別にそんな話ではない。とはいえ書こうと思えば今書いたような、哲学的な流れにも出来ただろうし人は何かを殺すことでしか生きられない生き物であるということを強く意識させられるような作品にもチェンジさせられる中編である。いうならば深い。将棋にたとえれば、どんな攻め手でも受けられる凄まじい神の一手とでもいったところか。って将棋のことなんて駒の動かし方すら知らないのに適当こいちまった。こんなのばっかりだ、自分。 バリエーションが豊富だ。どんな風にでも書けるからこその、田中ロミオの安定性なのである。いろいろ書いた来たからな。
いろいろなものを作っている工場をめぐるのは、わくわくさせられる。チャーリーとチョコレート工場でも同じ事思ったな。一種テーマパークのようなものだもんな。あっちではパンを作って、こっちではチョコを作って、そっちではマーマレードを作るのだ。意思があるパンが自らを真っ二つにして食糧として提供するところはいうまでもなくアンパンマンを連想させてしまって、笑える。食パンが自らを真っ二つに引き裂くイラストが挿入されているのだが、絶叫ものである。
今回も笑える場面がたくさんあって、いつもだったら笑える場面特集ーとかいって3個ぐらい並べるのだが今は笑いについて本気だして考えてみたい時期なのでちょっと割愛する。笑いを追求中である。
- 妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ
ほとんど妖精さんと主人公しか出てこない。いきなり無人島に放り込まれる無茶展開。有野や濱口のように、取ったドー! とか野性味あふれる主人公が見られるのかと思いきや今回も妖精さんに任せっきりで気分は女王様(身分も女王様)。なんて便利なやつらだ、妖精さん。無人島にて国をうちたてようとするのだが、宗教が開発物の中に入っていたりしてシヴィライゼーションを思い起こさせる。この中編には国を作るためのノウハウがたくさんつまっている。この中編を読めば、あなたもすぐに国が作れるようになるだろう(シヴィライゼーション限定)。働かなくても生きていけるし何でも出てくるという理想郷はしかし、長くは続かなかった。いつもの行き過ぎた文明破滅エンディングである。非常によろしい。理想郷にいったんは住みながらも、あっさりとそれを捨てることができる主人公が強い。人間何事も引き際が大事である。
かなりの日数を無人島で過ごしていたが、どれぐらい住んでいたのだろうか。余裕で一ヶ月は過ぎていたような・・・。