基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

恐るべき子供たち/コクトー

恐るべき子供たちとか言われて真っ先に思い浮かぶのが恐るべき子供達計画というただのゲーマーなのであるが読んでみたわけである。感想のひとつとしてイラストが良い! とか書いてあるけれど絵ごころのない自分には、絵の才能のない人間ががんばって書いちゃったへたくそな絵がいっぱいのっているようにしか見ることができない。ダルジュロスとか考える人にそっくりで笑ったし、エリザベードが鼻を高くしようとして、鼻に洗濯ばさみをはさんでいる絵はあまりにもブサイクすぎで笑いすぎた。しかも美人と書かれているのだから違和感を隠せない。もう何十年も前の小説なのだから、そんなところに突っ込んでも仕方がないことなのであるが。

16歳になったポールがザリガニが食べたくて涙を流すところとか、ジョジョのあのキャラを思い出してしまう。読んでいて悲しくなってくる。おもな登場人物4人が最後まで子供だったのは疑いようもないところだが、ダルジェロスはどうなのかと不思議な気持ちである。

世界自体が狂っているような作品で、解説を読んでみたら阿片中毒で入院中に書いた作品だという。やっぱりなという感じではあるが、その内容は意外な程まとまっていて驚いた。いや、まとまっていたのかどうか、詳しいところはよくわからないのだが少なくとも小説として読めることは確かである。内容、あらすじは確かにまともなのであるが、文章が現実をとらえていない。そのうえやたらと置き換えて表現するのであるが、大袈裟であったり夢を見てんのか? というような、ファンタジーか何かのような文章なのである。

最初の雪合戦がまるで本物の戦争か何かのように書かれているところから、あれ〜?と思っていたが最後までその違和感が消えることはなかった。二人が昇天していくさいのわけのわからない表現のオンパレード。みょうに象徴的な物事の配置。子供部屋だったり、エリザベードと結婚した男だったり(名前忘れた)ダルジェロスに似ているアガートだったり、ポールとエリザベードをまるで神か何かのように敬う二人の人物と地の文だったり。
ミステリー的な面白さで見るとすれば、この思わせぶりな物事の数々、あまりにも思わせぶりすぎて、ちょっと考えればすぐにどんな意図のもと配置されたのかわかるかのような象徴の数々に謎を解きたくなる衝動が生まれてくる。わかりやすい謎が多数配置されていると言った方がいいか。簡単に解釈出来る方のわかりやすいではなくて、読んでいてすぐに謎だと認識できる謎だという意味である。これは楽しい。まるで自分の頭が良くなったかのように感じさせてくれる。

恐るべき子供たち、思わせぶりなタイトルだが、特に恐れるようなところは無く、子供ならだれでもやるようなことをやっているだけで、特定の子供を指したものではない。今回にあたって登場人物の恐ろしいところは、ずっと子供部屋で過ごしたせいで20を超えてもずっと子供で居続けたというところである。子供は天使であるというが、それは同時に悪魔でもあるということなのだ。どちらか一方だけなんてことはあり得ない。誰もが卒業する子供時代を卒業することができずに子供のままで居続けたことが恐ろしいのである。

エリザベードが暗躍してジェラールとアガートをくっつけようとするところからラストまで盛り上がりっぱなしであった。まるでラスボスか何かのように振る舞うエリザベードと、それを知らずに結局くっついてしまうジェラールとアガート。この時代のことはよくわからないのだが、結構簡単に結婚というやつはおこなわれてしまうものらしい。今までのふやふやした、とらえどころのない世界観がこちこちと固まっていく、というとあまりに抽象的すぎる表現だがそんな感じ。終わり方に批判が集まっていると解説に書いてあるが、自分にはこの終わり方以外考えられない。世界に存在してはいけない存在だったのだ、エリザベードとポールは。この二人の物語を描くのならば、その結末は両者の死でしかありえない。それが世界を生み出した者の義務であると思う。二人が死に向かう場面の描写は神話の一端、極楽浄土か何かを覗いているかのような陶酔感が支配していた。