基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ジョーカー清/清涼院流水

ジョーカー清 (講談社文庫)

ジョーカー清 (講談社文庫)

 むさぼるように読んでいる。コズミックよりちょっと前の話ということで、あまり関連性を見いだせない。いったいどういう仕組みが浮かび上がるというのか。リアルワールドでは明らかに違法建築な幻影城で連続犯罪が起きる! そこにはJDCの第二班副班長であるキリギリス太郎が居た! という物語なのである。だがキリギリス探偵程度では事件解決は不可能と見たJDC総代は戦力を逐次投入することを決定する。みんな忙しいのだ。手が空いた人間から幻影城に送り込まれてくる。コズミック流では、JDCのメンバーはピラミッド水野とあと一人か二人しか出てこなかったがここにきて大量投入される。ピラミッド水野があれだけ湧き立たせてくれるのだから、きっとこいつらもトンデモ人間でトンデモ推理を繰り広げてくれるのかと思いきや、やっていることが凄くまともなことだらけで、びっくりさせられる。何しろこいつらの能力名ときたら

キリギリス太郎→第二班副班長/俯瞰流考

事件を俯瞰して、自然体で思考する

鴉城蒼也→第二班/理路乱歩

歩いて右脳を刺激し、発想を得る

霧華舞衣→第一班/消去推理

可能性のないものを消去して真相に迫る

九十九音夢→第二班/ファジイ推理

女の勘で、漠然と真相を感じ取る

龍宮城之介→第一班/傾奇推理

常識に縛られず、とんちを働かせる

鴉城蒼司→JDC総代/集中考疑

事件の要点に集中して超絶推理する

 ・・・・いったいどこから突っ込んだらいいんだ?上から突っ込んでいくか。事件を俯瞰して自然体で思考するは別に能力じゃないよね。うん。ただ自分の得意な推理方法ってことだよね。はい、次。理路乱歩? 歩いて右脳を刺激して発想を得るってそれぐらい自分にだってできるわ! 別に能力でもなんでもないわ! ああ、人よりも歩くことによる恩恵が多いってことね。次は消去推理。はい、これただの消去法ですね。しかもこだわりすぎじゃないですか? 消去法で推理するのをまるで自分の専売特許のようにしているけれど、事件を俯瞰して自然体で思考しながら散歩でもして右脳を活性化させて消去法で推理すればいいやん。凄いのは九十九さんのファジイ推理である。女の勘で漠然と真相を感じ取る! こういうのを待っていたんだよ! なんか能力っぽいよね。女の勘で漠然と真相を感じ取るって。まあでもようするにただの直感だよね。龍宮さんもいったいどんな変態かと思いきや、常識にしばられずにとんちを働かせるってそれ俯瞰する人とちょっとかぶってない? この巻でこいつがやったことといえば凄そうなオーラをただよわせることと、わけのわからない理屈をこねくりまわして解釈を与えたことだけだな。あまりにもぶっ飛んでいる推理だったのでどうでもよくなってしまった。最後に総代である鴉城蒼司の集中考疑である。簡単に言うならば集中して推理するという誰でもやっていることなのだが、彼が特別なのは超絶推理と説明されているのだろう。普通超絶なんて言葉はつかない。推理は推理であり、頑張ってやった推理だとしても超絶なんて推理の前にはつかないだろう。まだ彼の推理を読んだわけではないが、それはもう論理を超絶した凶悪な推理を展開してくれることだろう。さすが世界に六人しかいないS探偵である。キリギリス程度はゴミだな。

 コズミック流にあるピラミッド水野の話は面白かった。何故ならやつの能力は超迷推理。漠然と推理し、必ず真相を外すのである。これは普通の人間には出来ない超能力である。歩いて右脳を刺激したり消去法で推理したり俯瞰で推理することは一般人にも出来ても絶対に推理を外すことなどなかなかできない。わざと外すならともかく、絶対に正しいと信じて外すのは無理だ。これこそ能力といえよう。だがジョーカーに出てきた探偵といえば普通に推理するだけだ。しかも解けない。がっかりもする。しかし、物語はこれで終わりではない。何しろまだまだJDCにはメタ探偵九十九十九やら懐疑推理を得意とする不知火善蔵、弁証法的思考で推理を展開する刃仙人がいるのだ。こいつらがきっと助けにきてくれる。そう思うとわくわくが止まらないのである。

 JDC総代である鴉城蒼司は電話で一日凶悪犯罪を40件近くさばいていて、一日でも留守にするとどんどん犯罪がたまっていくから動けないらしいのだがそんなに凶悪犯罪というのは起こるものだろうか。いや、まあそこは突っ込んではならないところかもしくは本当にそれぐらいあるのだろう。

 そういえば一か所気になった点があった。

翔子が生きた葵を見た最後の瞬間だった・・・・。

 普通に読めばただの死亡フラグなのだが、どうもおかしい。なぜなら確かに翔子と葵がここで会うのが最後で、すぐに翔子は殺されてしまうわけなのである。ただこの文だと殺されるのはどう考えても葵だ。わざわざ「生きた」葵としているのだから、当然その後死んだ葵を翔子が見るのだろうと考える。じゃないと生きたをつける意味がない。この辺ものちのち解決されるのだろうか。実は翔子と葵は入れ替わってたのだー! 的ノリで。しかしこの作品にいえば推理はあまり意味がないような気がする。最後に鴉城総代がいっているように、解決不可能の問題っぽい。

 次に殺される人間を推理してみると、キリギリス太郎あたりが怪しい。コズミックでもそうだったが、片思いやら何やらの描写が入った後その関係者が殺される確率がやたらと高い。もしくは葵か多恵が殺される。でも葵はなさそうだな。地味に重要人物のようだ。やっぱりキリギリス太郎だな。もう探偵もたくさんそろってきて二班の探偵なんていらないし。これを最後の事件と見定めて少しでもみんなのお役に立ちたいと奮闘するキリギリスさんが殺されてしまうのはかなしいが、それ死亡フラグなのよね・・・。