- 作者: 舞城王太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/04/15
- メディア: 文庫
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やはり生きていくとしたら友人というのは大切なものだなあと実感させられる。いやでも時と場合によるかな。何しろここに書かれている友情やらなんやらってのはとてつもなく綺麗だ。男二人に女一人で三角関係にも陥らずに、大した確執もなくずーっと一緒に居て何の問題も起きないのだから。そういう関係ならば、この世界ならば、友人ってのはとてつもなくいいものだろう。こういう関係性は、実際には手の届かないものだからこそ至高だ。世界は密室でできている。コズミックでも登場人物の一人がいっていた。実は世の中には密室じゃない場所なんて無いんじゃないでしょうか。実際解釈をひねくれればどこもかしこも密室だらけ。もし開放的な場所でも精神的な密室という抜け道が存在する。やっぱり世界は密室でできている。ただタイトルと中身の関連性がよくわからん。そもそも最後の青春ノリに密室が何一つ関与してねーじゃねえか。確かにラストは凄いけれど、一冊の本としてそれはどうなんだ。まあいいか。ここでの密室は別にメインではなくて、青春のひとコマ、要するに普通の青春物だったらスポーツやらなんやらに打ち込んでいる時にこいつらは密室を解いていたというだけだ。読んでいて車輪の下を思い出して、無性に悲しくなった。世の中精神的な密室だらけだ。色んなものに縛られて、閉じ込められている。自分の本心を部屋にしまいこんで周りと折り合いをつけて生きている。この小説では最後に、友紀夫がルンババの父親に反逆したけれど、これによって一つ、精神的な密室から解き放たれたのではないだろうか。子どもは親に反抗してはじめて人間になるのだ。ハンス少年にも、友紀夫少年のような存在がいてくれたらよかったのに。