基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

カーニバル 人類最後の事件/清涼院流水

BOOK1

 あまりにも壮大すぎる話で、とても一冊読んでから書いていたのでは体力が持たないと判断し前篇と後篇でわけて書くことにした。とりあえずBOOK1とBOOK2でわかれていて、恐らく文庫版もここで分かれていると思われるのでそこでわけてみる。もう本当にどうしようもないな。犯罪オリンピックと何の関係があるのかわからないけれども、毎日400万人の人が死に続け、それを阻止しようとJDCの探偵が走り回るのがBOOK1の内容である。何も一瞬にして400万人殺されたり、コズミックのように一人一人同じ殺され方で状況だけ違うように殺されていくわけではない。病気やら事故やらで死んだのも含めるらしい。その合間に、まるでマンネリ防止とでもいうように世界中の名所が爆破されていく。絶対現地の人がこれ読んだら怒るだろうなーと思いながら読んでいたけれど、たぶん現地の人は読まないだろう。たとえばアメリカだったら自由の女神、他にもエッフェル塔、ナイアガラの滝、ピサの斜塔・・・。池上永一もいっていたが、海外はこの国だったらここ! というような、目印とでもいうべき場所があるけれども日本だと東京タワーぐらいしか思いつく事が出来ない。JDC本部ビルが一応日本のシンボル的な意味合いを果たしているのだろうか。

 とりあえずなんとかコズミック、ジョーカー、カーニバル・イブは気になったところににすべてツッコミを入れながら読む事が出来た。しかしここからはもう無理だ・・・。もうこれ以上御大についていくことができない。今までは必死に走って追いついてきたけれど、苦しそうな自分を尻目に軽々と平然と四億人を殺して見せる御大を悔しそうに膝をつきながら眺めているのが今の自分にはお似合いだぜ・・・。何が凄いって、普通人類全滅とかいうネタはやらないんだよね、誰も。だって何の利益もないし。人類全員いなくなっちゃったら、利益とかないし。人類全滅の危機! とかいうのは隕石が降ってくるハリウッド映画とかでおなじみだけど、それは阻止する手段を考えればいいだけで、推理とかしなくていいもんね。ただ、カーニバルは実際毎日400万人の規模で人が死んでいるわけだから、この異常さがよくわかると思うわけよ。ていうかこの物語には終わりが見えない。コズミックだったら犯人は個人ではなかったけれども、真相をみやぶったら事件もおさまった。でもカーニバルは真相をみやぶっても事件が収まるとは思えないんだよねえ。そこがコズミック&ジョーカーとの違いだろうか。何か戦いは推理的なものから、ドラゴンボールとかのようなどっちが殴りあいで勝利するかみたいな戦いに変質してしまったような気がする。全世界の名所で理解不能な犯罪事件が起きて、しかもそれを推理する探偵達の本部は爆破されて、毎日400万人の人々が死んでいく・・・。ちなみに全世界の名所で犯罪が起きるので、紹介がそのつど入るのだがそれもなんとなく面白い。結局のところ名所は爆破されるか、凶器にされるか、消失させられるかのどれかという悲惨な末路をたどってしまう。特に凶器にされてしまう末路は最悪のケースで、現地の人が読んだら絶対キレるようなひどい扱いを受けている名所がたくさんある。ピサの斜塔をごろごろ転がして民衆を皆殺しにするとか並の発想じゃない。しかもそのレベルの凶悪犯罪が多発するし。

 それにしてもノベルス版は分厚い。凶器にも出来そうである。まあ全世界で毎日400万人死んでいくのだからこれぐらい分厚くなるのも当然、というか未だに信じられない気分である。毎日400万人死んでいくなんていう戯言を信じられる人間がいたらそれこそお目にかかりたいところだ。そんな信じられない事件を解決するために探偵たちも各地に散らばっていて、彼らのエピソードを一つ一つ書いていったらキリがない。しかも数ある事件をどれ一つとっても他のミステリィなら3冊は書かないといけないだろうな、というぐらいでかい事件ばかりなのだ。そんな犯罪を大量に盛り込んで、なおかつまとめあげた清涼院流水の偉大さが目に染みる。正直いって意味がわからないことだらけで何を書いていいのかわからない。とりあえずスタートから見ていくと、いきなり驚愕の事実が1行目から明かされる。いわく悲劇がスタートして4か月で、四億二千万人以上の死者を出して今なお継続中だというのだ。前の巻がJDC本部ビル爆破という衝撃から立ち直る間もなく人類は四億人も清涼院流水に殺されてしまった! さて、当然JDC本部ビル爆破がどうなったか気になって仕方がない読者(自分)なのであるが、途方もない事実をつきつけられて途方にくれる。このもやもや感がたまらん。しかもビリオン・キラー(十億人を殺す者)という名前から、十億人殺したらやめるんだろうと予想していたのだが、別にそれぐらいでやめるつもりはないらしい。あまりにも大きすぎる真実を伝えられると、人は慌てるよりまず先に冷静になる。今自分の心の中は空っぽである。ぽかーんという擬音が何よりも正しい。

 それでも何とかしてこの圧倒的大事件の数々に立ち向かっていかなければならない。とりあえず単純な事実の確認からいくと、JDCの探偵は350人中300人が死んでしまったらしい。この爆破事件によって総代は行方不明に、松尾天明は死亡、香澄水も死亡、他名前つきのキャラクターは大体生存である。名前のない探偵がどれだけ死のうが正直JDCは揺るがないだろう。サッカーみたいにチームワークが重要ならともかく、探偵の場合より能力のすぐれた人材が一人いれば全部解決するのだから。ってこんなことが書きたかったわけではない。何か規模の割に死んだ名前つきの探偵が少なかったことに、逆にショックを受けたのだ。何しろジョーカーでは平然とキリギリス太郎と鴉城蒼也君が殺されているのだ。今回は本部が爆破されたにも関わらず、死亡した人数も同じ、しかもうち一人は事務である。だが実際は本部というよりどころがなくなったことや、ホームタウンがなくなったようなもので衝撃度ははかりしれないがその前に四億人も殺されているといわれているのでそこまでではない。ジョーカーでキリギリスやら蒼い子が死ぬ間際に真相を悟っていったように、香澄水も真相を悟って死んでいった。だがその演出がとてもいい。眠りに落ちて推理力を高める「悟里夢中」の使い手が、死という永遠の眠りの中で真相にたどり着く! 燃えるぜ・・・。

 カーニバル・イヴの時に注目人物の一人として独尊の名前をあげたが、やはり強烈なキャラクターだった。

 自称・精神年齢三〇〇〇歳の独尊は「儂」という一人称を用いている。漂馬と独尊の地元が広島だということもある。広島では年齢を問わず、自分のことを「儂」と呼ぶ男は、そう珍しくはない。

 ほ、ほんとか? それって愛媛の水道には水の蛇口の他にポンジュースの蛇口もあるとかいう都市伝説的な話じゃないのか? 広島の人怒りそうだぞ。そして精神年齢三〇〇〇歳だもんな。実年齢二六歳のくせに。普通だったらただのいきすぎたナルシストとして精神病者扱いしてもよさそうな人間なのだが、能力の伴ったナルシストだからこそそんな扱いもできない。能力のあるナルシストって怖いな・・・。漂馬が独尊にむかて、魔界に帰れこの魔王が! といっていてしみじみとしてしまった。ネウロに向かっていうならまだしも、相手は普通の人間だぞ。しかしこの魔界ってのも無視できない話である。何しろここで起こっていることはおよそ通常じゃ考えられないことの連続であって、真犯人は魔王だった! といわれてもああやっぱりそうだったのとしか思えない土壌ができ上っている。そもそもこの事件を起こしているRISEの黒幕一人一人がどう考えてもRPGの世界から抜け出してきたとしか思えない設定のオンパレード。森羅万象を手中におさめるR・S(超伝導の磁器浮遊を利用して宙にふわふわ浮いている椅子に常に座っている。さらには牛のかぶりものをかぶっている。お前はニコニコのアーティストか。しかも身長はニメートル)に、役割を与えられた駒たちの能力も凄い。R(ラー)言語の監修者たる言霊使いブラック。駒達はビショップやらのチェスの役割を与えられている。さあさあどこから突っ込んでいいのやら。あえて突っ込まないという手段を選ぶ。さらにこいつらの本拠はオルハリコンで出来ており、犯罪現場に残される髑髏は未知の物質で出来ている。ていうか手下がチェスの役職っていうとどうしてもダイの大冒険を思い出してしまう。しかもオルハリコンとか出てくるし・・・。まあこの辺は全部読んでからだな。龍宮が突然人が変わってしまうっていうのも少年漫画的なんだよなあ。たぶん入れ替わりか、操られているのだと思うんだけど。これから先打ちのめされたクリスマス水野とか多恵とかが、ピンチになった時颯爽と現れる龍宮を想像するだけで脳汁が溢れんばかりに・・・。

 今回はおもに、新しい探偵たちの活躍が目覚ましかった。あれだけ日本中で彼にしか出来ないと何回も描写された総代の代わりをいともたやすく(ではないけれど)やってのけた独尊(実はこいつが鴉城ではないかと自分はにらんでいる。何しろ一〇回以上総代にしかできないといわれた電話探偵をそうたやすく出来る奴がいるとは未だに信じられない)に、唯一敵に肉薄し圧倒的迫力で数え唄を披露するUNO推理の使い手鵜の丸。

 「ひとぉーつ(一つ)」
 「人は謎を解くために生き続ける」
 「ふたぁーつ(二つ)」
 「不思議は解き明かさねばならぬ」
 「みぃーっつ(三つ)」
 「ミステリは論理の刃で解決する」
 「鈴風鵜の丸。今、犯人と対峙(退治する)」

 実際はひとぉーつとか二ぁーつとかの間に文が結構挿入されているのだが割愛。この場面の迫力がすさまじくて一瞬にして鵜の丸のファンになる。そしてなんといっても忘れてはいけない名探偵の一人が、年齢マイナス三か月から犯人を退治すべく犯罪と対峙する胎児探偵、半斗昏夢である。母親の胎内にいるときから推理するという十九も真っ青な名探偵に期待が高まる。さて、ここらで一旦終わりにしよう。今回も爆破で幕を閉じる。

 一九九六年十一月一六日(土)午後一時──。
 グリニッジ旧王立天文台・・・・全壊爆破!
 瓦礫の山の中。ビリオン・キラーの髑髏が輝く☆

 百歩譲ってグリニッジ天文台が爆破されるのをロンドンの人たちが心よく許してくれたとしても、☆がついてたらさすがにキレると思うんだよな・・・。

BOOK2

 な・・な・・・なんてこったああああああ。な・・・!? 最後まで読み終わって愕然とした。想像を絶する事実が幾つもラスト10ページぐらいで明らかにされていく中、一番最後のページがカーニバル・イヴと同じく究極の衝撃度を誇っている。十九が死んだ・・・!?これから先どんな理解不能な事件が起きても、あいつなら・・・あいつならなんとかしてくれる・・・という究極兵器、清涼院流水が派遣した究極生命メタ探偵十九が、この巻の最後で殺されてしまったのである。死んだとは一言も書かれていないが、胸に刃物を突き刺されて横に引き抜いたらいくら探偵神でも死なざるを得ないだろう。希望が圧倒的に断たれた。いやこんなこといっちゃうとあれなんだが、どうせ復活するのはわかってるよ。そりゃあ復活するよ。龍宮だって鴉城だって十九以外のS探偵が全員RISEの一員だった! とあかされたとき、なんじゃそりゃああもうだめだああああと絶叫を上げながらも頭の片隅では、やっぱり十九はこいつらの一員じゃないんだ! 十九はまだ僕らのヒーローなんだ! まだ十九がいるぜ! 十九ばんざーい! と興奮していた直後に十九が殺されてしまったのでこの落差がどうせ復活するとかいうこざかしい推理を考えなくさせるだけの超魔力をひめているのである。やっぱり御大は凄いぜ、この圧倒的演出力。マジな話、このあと物語がどう動いていくのかさっぱりわからない。RISE側は人類が滅亡しないために何かやっているらしいのだが、アレ? ってことはRISEが主導で人類をふるぼっこにしているのは確かなんだけど、人類をふるぼっこにするのも人類のためなのかしらん?と疑惑が。複雑怪奇。

 内容的にはBOOK1と同じく各地で起こっている事件を探偵たちがてんでばらばらに捜査しながらも、真相に近づいて行く感じである。その過程で探偵が死んだり探偵が増えたり死んだと思った探偵が敵に寝返ってたりくのいち探偵とかわけのわからんやつが出てくるしでおもしろい。だいたいくのいち探偵って、やってることは確かにくのいちなんだけど探偵の部分が見当たらないんだよな。何でわざわざくのいちっていう単語に探偵をつけなくてはいけないのだろうか。いやいやしかし世の中の人間はすべからく謎の探求者であって、自分だって読書探偵なのだからこれも当然である。そういえばあらためてサムダーリン雨恋、ロリ巫女の描写がされたのだが変態ぞろいのJDCの中でも際立っている。
髪:青のメッシュを入れたセミロングの黒髪サイドだけアップ。後頭部でリボンでまとめている。
服:淡い水色の振りそでに、真紅の袴。
足:ぽっくり
手:ピンクの手甲(!?)いつも唐傘を持っている。
目:青の伊達コンタクト
口癖:いったい〜
身長:153センチ(多分)
 絵心があったらイラストにするのに・・・!ちくしょう・・・!サムダーリンとメイルのやりとりはそれだけで非常に面白い。コズミックでも展開された、すべての殺人は密室殺人であるという問いにメイルが答えを出すのだが規模が違った。いわく地球は大きな密室だから、地球で起こった殺人はすべて密室殺人であるとかなんとか。そうか、カーニバルにまでくると必要なのは宇宙規模の推理だったのか。

 たくさんの探偵が死んだのでいったん整理しておこう。刃仙人、香澄水、松尾天明、十九(不明)、あれ・・他にも結構いたようなきがするけど思い出せない・・。ああ、あと浄華か。それから援助推理の御戸村も死亡。疑問なのが、浄華とか御戸村とか殺す必要がなかったんじゃないか? というところなんだよなあ。特に浄華なんか、重要キャラオーラを発散しまくってたのに、というかカーニバル・イヴであれだけ描写されていて新時代探偵の中じゃ割と重要だったのにあっさりと龍宮ファンに刺殺されるって呆気なさすぎて泣いた。刃仙人も突然トラウマを発揮して誘拐して殺されたし、いっけん意味のないエピソードが多いが、最後で必ずつながってくれると信じている。そして浄華が死んでしまったことによって、クリスマス・水野と浄華がピンチの時に龍宮が颯爽と現れて助けてくれるフラグは完全になくなってしまったわけだ、無念ナリ・・・。

 印象に刻みつけられたエピソードでもかいていこう。一番はいうまでもなく最後の十九殺人事件だが、ピラミッド・水野とクリスマス・水野のエピソードも勝とも劣らないかっちょええエピソードである。死してなお鮮烈なイメージを放ち続ける迷探偵がピラミッド・水野が実は誰よりもすぐれた名探偵だったかもしれないというこの事実は正直泣けるものがある。誰よりも事件を早く推理し、そしてわざと真相をかする形で推理をはずしていた──。それからフィンランドに出没する「ブラック・ムーミン」連続殺人事件。ムーミンのきぐるみをきて殺人をするらしいのだが正直ムーミンインパクトがでかすぎてどうでもいい。そして惨殺屍体連続パスタグルグル巻き事件。

 対立店の関係者を店内で切り刻み、死亡する前にパスタデグルグル巻きにする。被害者自身が酷評していたパスタに全身を包まれ、苦手な味の中で息絶える──世にも恐ろしい事件である。

 世にも恐ろしい事件ではないよね・・・。世にも奇妙な事件ではあるけれど・・・・。この事件ネウロで起こっても不思議じゃないな。
 そしてガリガリ・ガリレイが犯人のピサの斜塔ローリング事件である。

 悪夢のローリング・ピサの斜塔。今や圧搾機と化した斜塔は、一人二人ではなく十人単位、ダース単位で群衆を呑み込み、すり潰していく!

 とんでも事件。最期の印象的な事件は、鈍器とやゆされる清涼院流水自身の作品、コズミック・ジョーカーで撲殺される「C・J連続撲殺事件」である。もう無理だ、突っ込み切れない。とにかくこういった荒唐無稽な連続殺人事件が世界中で起こって、それを解決していったり殺されたりしながら進んでいくのが本書カーニバル 人類最後の事件の全内容である(まとめた!)