基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

黒い家/貴志佑介

黒い家 (角川ホラー文庫)

黒い家 (角川ホラー文庫)

 読みやすい文章と、絶妙なタイミングで挿入される衝撃的な展開の数々でぐいぐい読ませる。相変わらずの蘊蓄を垂れ流し、恐ろしいイベントでホラーってこういうものやったんや! と気がつかせてくれる作品である。正直いって貴志佑介の書く蘊蓄は、好きではないのだけれども・・・。蘊蓄自体は別にいいのだけれども、いまいち信憑性にかける。幻肢痛の話とか、切断前に手足に痛みがあればその感覚が保存されて切れた後も痛むのだ、と自信満々に書いているけれど少なくとも確定はしていない。Wikipediaでは未だに答えはわかっていないと書かれているが、ちょっと前に読んだ脳神経関係の本では、脳の神経では指やらあしやらの神経はどこか別の部位とつながっていて、その部位が残っているせいで片方が無くなってもそれが繋がってた別の部位の神経はまだ残っているので、あるような気になるとかそんなんで答えが出ていたような気がする。心理学的な知識の方もなんか適当なんだよなあ。それを作中で素人がこんな話を聞いた事があるよーっていう風に話すのならば間違っていても当然だからいいんだけれども、専門家に語らせてしまうからおかしくなる。

 ここで出てくる生命保険会社の話は、作者本人が保険会社に勤めていた事もあってなかなかのリアリティ。根っこの部分の生命保険の話がしっかりしていたので、ただのサイコホラーで終わらせずに、より面白くなっていたと思う。潰し屋とか本当にいるのだろうか。この小説の中では三善さんが一番好きだったのだがあっさりと殺されてしまっていて目が点になった。おいおい、お前仮にもプロじゃないのかい、あれだけスゴそうだったのに。さすがに相手がそこまでしてくるとは思わなかったんかな。ついでに話題をキャラクタの話に持って行くと、貴志佑介の書く主人公が今のところクリムゾンの迷宮とこの本書、二人とも好きになれない。なぜなら相当馬鹿だからだ。今回でいえば、わけのわからない精神疾患を抱えていると思われる相手に明らかに自分だとわかる手紙を送りつけたり、わざわざ金石が主人公に身が危険だから逃げろとまで言っていて、さらに主人公自身相手が危険な存在で、彼女の存在まで知られていると認識しているにも関わらず警告を彼女に促すことさえしない。最終的に彼女を襲わせるために作者の意図したやったことだろうが、普通真っ先に警告するだろ・・・・。危機管理能力の欠如だな。 
 それにしてもクセになる怖さだった。何が怖いのかうまく説明できないのだが、心理学的なアプローチだったり実際危険な存在が目の前にいるのに周りは対処してくれない怖さだったり、しかもそんな野放しになっている見えている危険が自分の家の中をごそごそやってたり包丁もっておっかけてきたらそりゃこええですよ。もう何が何であろうとこええですよ、そりゃ卑怯ってもんですよ。というわけですげえこわい作品でしたよ。ちなみにこのおばはんのビジュアルが漫☆画太郎のおばあさんで固定されてしまって怖さ三倍だった。