- 作者: 折原一,結城信孝
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1992/08/03
- メディア: 文庫
- 購入: 17人 クリック: 277回
- この商品を含むブログ (40件) を見る
読んでない人はさっぱりわからんだろうので整理すると
原作者→典型的なダメ人間。俺は小説書いて生きていくといいながらニート生活を続ける。親も困っている。締切間際になっても書けなくて、本当のダメ人間かと思いきや突如何かが下りてきて傑作を書く。だが友人に原稿を渡したらなくされてしまい、お前とは絶交だ!とのたまう。のちに盗作者が受賞したのを知り、憎悪に身を任せる。
精神的に白鳥を攻める方法、すなわち奴を内側から崩す方法。
①電話─しつこく電話をかける。これは初歩的だが効果はありそうだ。
②手紙──省略
③張り紙──省略
④婚約者──省略
白鳥翔に対する憎悪が、数々のアイデアを思い浮かばせる。推理小説のストーリーを組み立てるより、ぼくには悪事を働く才能のほうがあるのではないだろうか。いや、真の推理作家の下地があるからこそ、アイデアが豊富に湧いてくるのだろう。この調子なら、作家として、一本立ちしても、なんとか食っていけそうなきがした。
だーかーらー。その推理作家としての下地を生かして復讐なんてやめて次の新人賞にむけて作品を書けって。友人を殺されてショックというのが復讐の動機の一つでもあるらしいが、いやがらせを考えているときとか復讐を考えている時にあいつがもっているものは全部本当なら僕が持っているはずのものだったんだ・・・! というひどい反感でもってひねくれているだけでほとんど友人のことを回想することがない。あんなにいい友人なのに全く思い出さないなんて本当に最低の野郎だ。途中で決意をあらたにするのだが、親友のためにという動機が社会の正義のためと同列に語られていたりと妙なことになっている。
原作者の友人→友情からこのダメ人間を飲みにつれていったり、手書きで書かれた汚い原稿をタイピングし直してやる。しかも無償で。必死こいて終わらせて早くあいつの喜ぶ顔がみたいからとうきうきして届けにいったら電車に置き忘れる。謝ったらひどい罵倒をされて泣きながら友人の家をでる。間違いなく本作のヒロインはこいつ。さらに原稿を拾った人間が、友人に対して電話をかけてきて百万円と交換してやると横暴なことを言い始めたにもかかわらず百万円で友情が復活するなら安いもんだ! と狂喜乱舞して百万円用意する。だがこいつが原作者だと勘違いした盗作者に殺される。浮かばれない人生。
盗作者→たまたま友人が置き忘れた原稿を拾い、最初は返しに行くという律儀なところをみせるが妙なタイミングが重なり渡せず。しばらく考えた結果自分で応募したらええやんという結論にたどり着き、応募してしまう。見事受賞し、金をいっぱい手に入れたが書ける人間ではないのでどうしようと慌てる。
とここまでが7割ぐらいを読み終わった時点での感想である。途中でこれは書いておいた方がいいかもなと思いメモっておいたのだ。もちろん本書の最大の見所は叙述トリックを生かした最大のどんでん返しであって、さらには感情をトリックとしてもちいているのだから上で書いたようなどろどろとした非難はすべて裏返り傑作だ! という評価に至るのである。正直いって凄い。ここまで感情を煙にまいてぽーんと放り投げて解決させてしまうとは思わなかったよ。最後には現実と物語の境界線もあやふやになってきて、最近読んで傑作だと思う作品はどれもメタ的な要素が入ってきている。ああでもやっぱり最後まで原作者の友人はかわいそうなやつだったなあ。こんなに悲惨なやつそうはいないよ。