- 作者: 清涼院流水
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/05
- メディア: 単行本
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前半100Pはよかったのだが、ゲームブック部分は異常に疲れた。ていうかハードカバーでゲームブックは勘弁してほしい。ページを何回も移動するのが大変だ。ワンパターン気味になって、読まなくてもほとんどの文章が予想できるようになってしまうのでBADENDの数はもう少し少なくしてもいいんじゃないだろうか。20回ぐらいDEADENDになったような気がする。Fateか! そして何よりも最後の呆気なさといったらないぜ! ここまで苦労して読んで終わり方がこれかよ! とこの本を読んだ人間は誰もが思ったはず。地球が滅亡したとかそういうとんでもねーオチだったらまだしも、終わったのか終わってないのかもよくわからないようなオチだ。しかしある意味凄かったと言える。まさかこんな小説が存在していいとは思わなかった。ていうかこれ小説じゃなくてゲームブックだし、そもそも大説だった。読み終わった時にあまりにもくだらなすぎて笑った、いい意味で。いや笑えなかった。どっちだ! 終わった後に十人の参加者の過去の話にうつるのだが、読まなくてもいい。コズミックでもやった十九人死亡場面を家族構成やらなにからなにまで一人一人描写していったような薄気味悪さを感じる。あれがまだ読めたのはなんといっても物語の前半に意味のないものが配置されていたという点である。それならばまだ読む気にもなるというものだが、LOVE LOGICが徹底的に間違えているのは前半なら読んでもらえたかもしれないものが一番最後に書かれている点だろう。三十三問一つ一つといていくトップランも、一番最初にそれがあったから読めたのだ、それがエンディングのあとで書かれていたらとてもじゃないけれど、読む気にはなれないはず。
自分が本当にわからないのは、訳が分からなくて笑える場合と、訳がわからなくて全然つまらない場合の二パターンがあることだ。しかも別々の作品ならばまだ比較してなんとかなるかもしれないが、この場合同じ作者にもかかわらず、そして恐らく同じ手法で同じ訳の分からなさにもかかわらず笑えるものと笑えないものがあるという点である。ここが不思議だ。たとえばカーニバル・イブで出てきたようなロリ巫女の訳の分からないゲーム好きの設定は意味やら意図やらが不明すぎて死ぬほど笑ったのだがこのラブロジックでもたくさんでてくる意味の分からない設定に対して、ロリ巫女程の衝撃を受けることができないのである。たとえば本書についている家の見取り図が、実際には家の内部が即座に形が変わってしまうために何の意味もないところなど衝撃的なのだが、何故これは笑えないのかが問題だ。笑いの原因としては昔読んだ笑い学のような本の中で、世間や常識とのズレ、ことばのズレ、身振り手振りのズレやら、ようするに一般的なものとはズレているものがあげられる。単純に考えればロリ巫女に訳の分からない設定が付けられているのも、本書に必要のない見取り図が描かれているのも充分世間の常識外であり、笑いを誘う理由としては十分だ。ただロリ巫女の方は、姿がすでに異常なのと、言葉も異常にズレているので笑いを取るために生まれてきたような存在なのだが流水先生に限らず意外とそういうキャラクターは多い。また二つに共通しているのは理解ができないことだ。ロリ巫女がゲーム大好きでデジタル金魚に義満という名前をつけている設定が理解できないのと同様に、本書に訳の分からない見取り図が描かれていることも理解できない。ただ笑える場合と笑えない場合をわけるのだから、当然共通している部分よりも違っている部分を探さなくてはならない。多分流水先生的には読者的には意味のない設定を書く事も、意味のない見取り図を書く事も大変意義のあることなのだろうがそれがまったく理解できない。すべて意図を説明してくれというわけにもいかないし。ここまで長々と書いてきたが、見取り図は案外素朴な理由があるのかもしれない。単純にどういう構造か見せたかった、というような。そうなると答えは簡単か。作者が一生懸命に書いた小説をこちらが必ずしも面白いと思うことができないように、この場合も考えて作られた見取り図を必要ないと思っただけで、中には必要だと思う人がいるのかもしれない。そもそも比較する対象を間違えていたようだ、ここまで長々と書いておきながら失敗した。ここまでの話はなかったことにしよう。
この小説は流水先生のいい部分でもあり悪い部分でもあるところが悪いところに集中してしまったような気がする。持ち味でもある一つ一つ偏執狂的に問題を解決していくという秘密室ボントップランコズミック他ほとんどの作品で見られる書き方を最後に持ってきてしまったこと。また最大の持ち味であるケレン味がゲームブックという特性上前半100Pでしか出せなくて、なんとも中途半端な終わり方になっているところ。そんなところだろうか。