基本読書

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宇宙消失/グレッグ・イーガン

宇宙消失 (創元SF文庫)

宇宙消失 (創元SF文庫)

 本書は量子論をテーマにしたSFである。世の中には割と量子論をテーマにしたSF作品は数が出ているんじゃないかと思うけれど、イーガンのようなアプローチをした作家はおるまい。とにかく量子論にかなり踏み込んだ内容になっているがそれゆえ何の前知識も無しに読むとわけがわからないだろう。そうなるとこの本は地獄である。いったい主人公は何をやっているのか、いったいそもそも何が問題なのか、すべてが理解不能になる。読む時は割と覚悟をして読んだ方がいいだろう。

 これは素晴らしいイーガン。日本沈没みたいなノリで宇宙無くなっちまった! やべえ! 的なノリを予想していたんだがまったく違った。それにしてもイーガンは本当凄い。本の裏表紙のあらすじ紹介にこうある

 ある日、元警察官ニックは、病院から消えた若い女性の捜索依頼を受ける。だがそれが、人類を震撼させる量子論的真実につながろうとは!

 素晴らしい飛躍。捜索依頼→人類を進化させる量子論的真実 この間に一体何があったんだよ! と気になって読まずにはいられない。そして読んだ。凄くバカだったなあ。主人公が探偵をやっているなんて設定ほとんどいらないじゃないか…。なんかこう、森岡浩之の優しい煉獄や神林長平のSF探偵もののようなノリを想定していたんだが…。そしてこれだけの長編小説にも関わらず登場人物が紹介されている人を数えても7人しかいない。その中で実際によく出てくるのといえば三人ぽっち。よくこんな少人数でこれだけでかい話を動かせるなー。正直1ページ目からわけのわからない文字と、やたらとたくさんふってあるルビがおでましでげんなりしてしまったのだがこれはイーガンからの「これについてこれねーよーなら読むな!」というメッセージかと思って読んだ。結局最初から最後までそんな感じだった。うむ、1ページ目を読んでなんじゃこりゃ、と思った人は読まない方が無難かもしれない。正直なところ面白かったのだが、いったい何が面白かったのか読み終わった今でもよくわからない。少なくとも物語的な面白さはまったく感じなかった。なんで宇宙が消失したのか、とかそう言う謎がもうどうでもよくなるぐらい説明の多さが破天荒すぎてのめり込めなかったのが敗因かもしれない。物語的には面白くなかったが数々のアイデア(モッドとかその他こまごまとした未来世界の描写が)は良く出来ているなあと思えるしそして何よりも量子論! 長い量子論の問答の末でてくる自己とは何かという問い。だが…! 長い・・・! 説明が・・・! 長い…! そりゃ説明を長々と書かないと誰も理解できないだろうけれどもそれにしたって長いぞ・・・! それに伴ってこいつもクドイ…! 悩みすぎじゃボケェ! だが悩み抜いた末の最後は素晴らしくスッキリしている。さすがグレッグ・イーガン。何故いつもこんなにオチが気持ちいのだろうか。