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サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か/ミチオ・カク

サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か

サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か

運命は偶然の問題ではない──選択の問題だ。
それは待ち受けるものではない──なし遂げるものなのだ。
        ──ウィリアム・ジェニングズ・ブライアン

かつて夢にみた。あるいは夢に見ることさえもない荒唐無稽なSF技術の数々。タイムマシン。宇宙旅行宇宙エレベーターデス・スター。不可視化。子供のころは純粋にあこがれたものだったが、次第に現実的になり、最終的には「これができるかもしれない!」とわくわくしてSF技術を見るよりも、「フィクションとして秀逸だな」とななめに構えた見方になってしまった。本書ではそういった、頭から否定してしまいそうなSF技術に対して、現在では「不可能」とみなされていながらも、数十年から数世紀後に当たり前になっていることはなんだろうか、という観点からも検証していく。検証の方法として最初に、数ある不可能なことを、三つのレベルに分類している。レベル1は、現時点では不可能だが既知の物理法則には反していないテクノロジー。レベル2.物理的世界に対する我々の理解が、かろうじて及ぶ世界。かりに可能だとしても実現は数千年、数万年も先の事かもしれない。最後に、レベル3は物理法則に反するテクノロジーだ。

レベル1に属しているのは「フォース・フィールド」「不可視化」「フェイザーデス・スター」「テレポーテーション」「テレパシー」「念力」「ロボット」「地球外生命とUFO」「スターシップ」「反物質と反宇宙」レベル2は「光より速く」「タイムトラベル」「並行宇宙」レベル3は「永久機関」「予知能力」となっている。

 最初は数々のアイデアを物理学におとしめて、緻密に説明されてがっかりしてしまった。まるで手品師に、種をあかされたときのようながっかり感が、ここにはあった。だがそれにはホールデンのこのセリフを引用しておけば充分だろう。

理論の受け入れには四つの段階がある。
1 役立たずでナンセンスだ
2 興味深いが間違っている
3 正しいが大したことじゃない
4 だからいつもそう言っていたじゃないか
──J・B・S・ホールデン

 かつて、ナンセンスだと叫んでいた自分が、実際に理論を読んでみてなんだそんなことか、と失望している。当てはまりすぎていて笑った。そして、今の物理学は本当に凄いことをやっているのだと再認識した。高度に発達した科学は魔法と見分けがつかないとはよくいったものだ。あまりに発達した科学が身近になりすぎて、自分たちが凄いことをやっている、そのことを忘れていた。

 本書では、あくまでも科学の門外漢がわかるようにわかりやすく、一つ一つ説明されている。説得力のあるSF設定を書きたいと思っている作家志望の人間は必読の書でなかろうか。著者自身、大のSF好きだということで本書の中にはスター・トレックの話題、ハリーポッターの話題、とにかく色々出てくる。パラレルワールドの著作では、現代SFについても数多く言及している。本書で何よりも良かったのは、どの説明に対しても著者自身がわくわくしている、楽しみにしていることが伝わってきた点だ。宇宙すげえ!