- 作者: 大野茂
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/04/17
- メディア: 新書
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面白かった点の一つとして、漫画家の多才なエピソードがまず筆頭にあげられるでしょう。漫画家とは個性の塊、ネタの宝庫であり、一人でもそうなのに週刊誌という舞台で漫画家の才能を急速に消費していたのがサンデーとマガジンなわけです。本書では漫画の神様と言われる手塚治虫さえ脇役の一人なんですね。他にも横山光輝、藤子不二雄、赤塚不二夫、梶原一騎、ジョージ秋山、水木しげる、石森章太郎、さいとうたかお、などなど多彩な才能の塊とでもいうような作家たちがとにかくざっくざっく出てくるわけで…。面白いのも必定である、と思います。
エピソードを少し紹介すると、たとえば藤子不二雄がオバケのQ太郎を始めるにあたって、編集部からQ太郎という名前はウケないからヤメロ! と言われたのをガンとして突っぱねてそれでヒットしたとか、横山光輝の伊賀の影丸は、鉄人28号でつかんだ対決のパターンを忍者合戦に移し替えたら面白いだろうという発想から生まれたなどなど。ほんのワンエピソードですが、積み重なると面白い。
またそれだけではなく、小松左京、星新一などのSF界側の話も書かれ、当然メディアミックスの関係上ゴジラやモスラ、さらにアニメ化などのエピソードも入る。ブームメントの中心には、常にサンデーとマガジンがあったんですね。ジャンプが参入したのは1968年で、サンデーとマガジンが創刊したのは1959年。ジャンプは最初隔週だったので、ほぼ10年間の草創期を両誌がかきわけてきたことになります。ただの10年ではなく、漫画は悪書だ! とPTAに攻撃され、漫画は子供の読むもの、とバカにされた時代です。そういった輩との闘い、どうやったらさらに面白い物を作って相手を出し抜けるかのアイディア合戦──非常に興奮させられる内容でした。