基本読書

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サンデーとマガジン──創刊と死闘の15年

サンデーとマガジン (光文社新書)

サンデーとマガジン (光文社新書)

 サブタイトルの死闘というのは誇張でもなんでもなく、確かに闘いの連続であった、と本書を読めばわかります。当時は月刊誌が基本で、週刊ペースで雑誌を発刊するというのは単純に考えて仕事量が四倍になるわけですからそれがどれだけ凄いことなのかは当事者でなくとも想像はできます。本書に書かれているのは、時には良きライバルとして、時には共闘する仲間として五十年間一緒にやってきたサンデーとマガジンの『歴史』であります。

 面白かった点の一つとして、漫画家の多才なエピソードがまず筆頭にあげられるでしょう。漫画家とは個性の塊、ネタの宝庫であり、一人でもそうなのに週刊誌という舞台で漫画家の才能を急速に消費していたのがサンデーとマガジンなわけです。本書では漫画の神様と言われる手塚治虫さえ脇役の一人なんですね。他にも横山光輝藤子不二雄赤塚不二夫梶原一騎ジョージ秋山水木しげる石森章太郎、さいとうたかお、などなど多彩な才能の塊とでもいうような作家たちがとにかくざっくざっく出てくるわけで…。面白いのも必定である、と思います。

 エピソードを少し紹介すると、たとえば藤子不二雄オバケのQ太郎を始めるにあたって、編集部からQ太郎という名前はウケないからヤメロ! と言われたのをガンとして突っぱねてそれでヒットしたとか、横山光輝伊賀の影丸は、鉄人28号でつかんだ対決のパターンを忍者合戦に移し替えたら面白いだろうという発想から生まれたなどなど。ほんのワンエピソードですが、積み重なると面白い。

 またそれだけではなく、小松左京星新一などのSF界側の話も書かれ、当然メディアミックスの関係上ゴジラモスラ、さらにアニメ化などのエピソードも入る。ブームメントの中心には、常にサンデーとマガジンがあったんですね。ジャンプが参入したのは1968年で、サンデーとマガジンが創刊したのは1959年。ジャンプは最初隔週だったので、ほぼ10年間の草創期を両誌がかきわけてきたことになります。ただの10年ではなく、漫画は悪書だ! とPTAに攻撃され、漫画は子供の読むもの、とバカにされた時代です。そういった輩との闘い、どうやったらさらに面白い物を作って相手を出し抜けるかのアイディア合戦──非常に興奮させられる内容でした。