トーラスの戦い―グイン・サーガ(15) (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 栗本薫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1983/07
- メディア: 文庫
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グイン・サーガに「テーマ」というものがあるとすれば、「時」──それこそが、真の、グイン・サーガのテーマであり、また主人公であるのにちがいないのです。百巻の物語が完結するとき、かつて若かった人びとは年老い、あるひとは野望にやぶれて若くして死んでゆき、あるひとは苦難にあってもつよくしなやかに心やさしく生きてゆき──たくさんの人びとが死んでゆき、しかしその空白を埋めるようにかれらの子どもたちが生まれ、育ってゆき、そしてまたその子どもたちも老い──
そういう物語をこそ、私は書きたかったのだと思います。
残念ながら栗本薫本人の手で完結させることはできなかったグイン・サーガですが、このときはまだ栗本薫本人は当然として、読者だって完結を疑ってなどいなかったでしょう。自分が生まれた時にはもうすでにグイン・サーガはあって、それから何十年かしてこうして少し大人になった時に、グイン・サーガを読んでいる。まだ生まれてきていない誰かも、何十年後かにグイン・サーガを読んで、ここで感動を受けるかもしれません。時間というのは非常に、不思議なものであると思います。グイン・サーガという物語の中でも、当然多くの人が生まれて、死んでいくのでしょうがそれは読んでいる方も同じなんですな。