- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/11/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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目次──Amazonより
第一講 行動経済学
第二講 囚人のジレンマ
第三講 ネットワーク経済学
第四講 社会心理学
第五講 ゲーデルの不完全性定理
特に面白かったのは社会心理学と、ゲーデルの不完全性定理でしょうか。行動経済学、囚人のジレンマはすでにどこかで本を読んだことがあるので候補から外れ、ネットワーク経済学はなんか言っている意味がよくわからなかったです。インターネットの世界の性質として、『大きくて小さい』『ランダム性』『持つものがさらに多くを持つようになる』たとえばイジメなんかがその典型で、イジメの対象はほとんどランダム、さらに一度イジメられるようになるとそれは一向によくなることはなく、その状況を改善しようと思ったらゲーム盤をひっくり返すしかない。つまり、学校を転校するとか。もしくは大きな事件を起こしてそこから目をそむけさせるようにする。というところでしょうか。
社会心理学はシンプルに面白く、またゲーデルの不完全性定理も非常にわかりやすかったです。ゲーデルの言っていることなんてのは、自分は日本語で書いてあるのにも関わらず頑張って解読しようとしても笑いがこみあげてくるほどわからんのですが、へったくそな絵が描いてあったりして親切設計。まあここで書いているのはようするに自己言及のパラドックスで、有名な文でいうと『「クレタ人は嘘つきである」とクレタ人が言った。』これです。ウソつきであるといっているのだからウソつきなんだろう、といっても、それがウソなのだったらクレタ人の言っていることは本当になってしまうがそれだとウソつきではないというぐるぐるぐるぐる。
そしてこの自己言及のパラドックスはより上位の存在を設定することで解決できます。クレタ人が二人いると過程してください。クレタ人Aの中にもう一人のクレタ人Bがいて、クレタ人Aが「クレタ人(B)は嘘つきである」とクレタ人(A)が言ったとなればええんですね。ただこれもグルグルから抜け切れていなくて、クレタ人Bもわたし(B)ってウソツキ、といったとするとまた同じ事を繰り返さねばならなくなって結局ぐるぐるです。
博士は頭が良すぎて世界の謎を全部解き明かしてしまう、統一理論が出来上がったら生きている意味なんてあるのか、と悩んだ末に上でいうゲーデル文に救われます。正直万物理論が出来上がる=謎がなくなる、というのはよくわからない、というかそれは『科学』の分野で根本的な謎がなくなるだけであって、他の諸分野ではまだ謎はあると思うのですがよくわからん。何にしろ面白かったです。