基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

働かない人達

働かない人達

働かない人達

 2ちゃんねる元管理人であるひろゆき氏のような、他人の力を借りて、自分自身はほとんど働かずに金を得る人たちの話かと思いきや…。路上生活者やパラサイトニート、もしくは親の遺産を継いでまったく働かなくていい人たちへのインタビュー集でした。それだけならまだしも、著者である三田詒智朗がまったく働かずに遊んで暮らしている人間を憎み切っていることもあって読んでいて非常に不愉快。俺たち、私たちはこれでいいんだ! と叫んでいる働かない人間へ向かって、勝手に憐みの視線を向け、毎日必死に汗水たらして働く人間を賛美し、みんなもっと真面目に頑張って働け! というのが最後の著者の見解。胸糞わるいったらありゃしないわ!

 著者に共感する視点で見ればそれなりに楽しいのではないかと思う。確かにここで紹介されるような人たちは社会をナメきっていたり、いやー汗水たらして働いている人たちって本当に何が楽しいんでしょうねーなんて、汗水たらして働いている人たちが実際に聞いたら怒るようなことを言う若者もいる。そういった若者に対して、著者が怒るのもなんとなくわかる。ほんの何十年か前まで、日本は真面目に働けば働くほど金がもらえる異常な世界にいた。働けば成果が出て、会社に毎日出向いて汗水垂らして働けばそれ相応の成果が出た。年功序列で賃金もあがる。そんな世界観の中で過ごしていれば、『真面目に働くことが善である』と思ってしまっても仕方がない。事実そうだったのだから。ただ、現代でそれはもう通用しない。真面目に働くことは今では成功の条件ではなくなってしまった。

 今の若者たちの頭にあるのは、真面目に就職したってたかが知れているという世界観でしょう。リストラが咲き乱れ、会社に入れば残業が待っていて、景気は一向に回復する兆しはない。年功序列も崩壊して、就職して真面目に働くこと=幸せという数十年前までの単純な構造ではなくなっています。今までは情報を得る手段がテレビやラヂオ、口コミなどしかなく、価値観の多様化とは程遠い状態でした。しかしネットの普及によって、いろんな趣味の、いろんな人間がいて、そして色んな生き方をしている人がいることに、いろんな価値観があることに、多くの人が気付きました。それが今までの『真面目に働くこと=幸福』だけだった価値観をぶっ壊し、みんなが自分の、自分だけの価値観を求め出したのです。つまりニートで、金なんかなくたって自分自身が幸福だと思えればそれでいい! この若者の宣言が、新しい社会なのではないかなーと思うわけです。もう真面目に働くことで一致団結した日本の社会には戻る事はないでしょう。著者は昔は良かった…と振り返りながら、現代の若者をバカにして、憐みの心で接していくのかもしれませんが。