- 作者: 永江朗
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2004/09/09
- メディア: 文庫
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永江朗『批評の事情』で語られている中から有名所をあげると、宮台真司、小林よしのり、日垣隆、大塚英志、岡田斗司夫、東浩紀、中島義道、リリー・フランキー、などなどでしょうか。目次─Amazonもはっておきます。
1 社会はどうなる?(宮台真司―九〇年代がはじまった
宮崎哲弥―アカデミズムとジャーナリズムのあいだで ほか)
2 時代の思考回路(大塚英志―物語の生産と消費をにらんで
岡田斗司夫―オタク批評の真価 ほか)
3 芸術が表わすもの(椹木野衣―ポップカルチャーを生きるニヒリズム
港千尋―世界を再構築する眼 ほか)
4 ライフスタイルとサブカルチャー(伏見憲明―男制・女制
松沢呉一―ばかばかしいもので撃つ快感 ほか)
5 文芸は何を語る(福田和也―小林秀雄への道
斎藤美奈子―あなたの固定観念 ほか)
44人もの批評家を論じているのですが、おそまつながら僕が一度でも読んだことのある人は岡田斗司夫と大塚英志の二人だけ…。なので彼が言っていることが的を射ているのか、はたまた好き勝手に適当なことを言っているのかは判断不能なのですが、映画の予告編みたいにしてそれぞれの批評家の主張してきたことをまとめてくれているので非常に面白い。こういう、一冊の本から色々な本へと思想が広がっていく感じが大変好きなのです。たとえば批評家にも色々いるわけです。音楽批評家だとか、建築批評家だとか、車批評家、カメラ批評家などなど。そういった人たちは趣味がそっち方面にない限り絶対に出会うことがないわけで、こうして『批評家』としてひとまとめにするのはとても意味があることだと思います。ジャンルがバラけ過ぎているために、著者の認識が追いついていない部分も多々ありますがまあその辺は話半分に聞いておくしかないでしょう。追いついていない一例がオタク分野に関してです。
永江朗は基本的にオタクに否定的…というよりかは、アニメなどを見ても全く面白い、興奮しない、萌えない、そういう人間なのでそれも仕方がないのかもしれません。たとえば彼はオタクという人種を、あれな話ですけど『アニメキャラで抜けるかどうか』が一つの分岐点だと言って納得しているわけです。そして自分はアニメキャラに興奮しないからオタクではないと。萌えオタクだけがオタクだと思っている人間からしかこういうセリフは出てこないよなーと。鉄道オタはどうするんだ。そして、オタクは社会性がないからオタクであって社会性がある岡田斗司夫はオタクじゃないという。それもおかしいと思う。社会性があるように見せかけられるオタクはいっぱいいるよ。そんなわけでオタク関係に限ってですが、土台がゆがんでいるために全体がおかしくなっていると感じる。ここで書かれている44人の作家について良く知っている批評家マニアからすれば、突っ込みどころありまくりかもしれませんが初心者には面白い本でした。