- 作者: 南信長
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2008/05/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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好きな物を好きとアピールすることは誰にでも簡単にできます。しかし理解できない、面白くないとかんじるものに対して『これは面白くない』とか『レベルが低い』とか、そういった批判、こういった吐き捨て的な投げやり感が本書にはない。理解できないものを理解できないものとして片付けてしまわずに、理解できないものをなんとかして理解しようという葛藤にぼくは愛を感じるのだと思います。
たとえば本書では尾田栄一郎の絵柄と、真島ヒロの絵柄が似ていることを指摘して疑問を投げかけているけれど、そこにもやっぱり愛がある。というのも、理解できないものに対しての断絶を埋めるために、滅茶苦茶調べる。いったいこれだけのインタビューをどこから拾ってきたのか、と思うぐらい引用が豊富だし、一人の作家について書くときだって決して妥協しない。内容以前にその姿勢に感動しました。
そして、それだけの労力を費やされて書かれた本書の内容が凡庸なものであるはずがない。シンプルに取り上げられた漫画家の数だけでも54人(ぐらいだと思う)。名前が出てくる漫画家まで足したら、100人を超えるのではないか。それだけの著作を読みこんで、さらに派生したインタビューまで(しかもここで取り扱われている漫画家の大半は、もうかなり古い年代の方々である)抑えるのは並大抵の努力ではない。というか、努力じゃそこまでできない。努力とさえ思わない溢れる好きさがそうまでさせるのだろう。凄く面白かったです。