基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ひとりでは生きられないのも芸のうち

ひとりでは生きられないのも芸のうち

ひとりでは生きられないのも芸のうち

 内田樹が書いたブログ記事の中から、編集者がいくつかテーマにそってチョイスしたのが本書です。どんなテーマかとひと言であらわすのは困難ですけれども、タイトルに大体あらわれているのではないかと。「ひとりでは生きられないのも芸のうち」つまりはそういうことです。コミュニケーション論と言ってしまってもいいかもしれません。「自分のしてほしいことがあれば、他人にそれをしてあげないといけない」人間は相互に補完しあっていきている生物であって、それはどういうことなのか、本書ではいっぱい説明しています。

 内田樹の書くものを読むたびに、彼の凄いところを新しく発見するのであるが、今回の発見は「本質を捉える力」。それがよくわかったのは、不二家が消費期限・賞味期限の切れた材料を使って洋菓子を製造していた事件について言及しているエッセイを読んだ時だ。この事件は多くのコメンテーターに「倫理観の欠如」もしくは「マニュアル運用の不備」だとかで攻撃されていたと思うが、内田樹はこの事件に対して現代日本企業の「知的退廃」を象徴する出来事だ、と指摘するのである。それは何故か。

 この事件には倫理的に問題があるというよりも、「知的に」問題があるということである。どう考えても消費期限の切れた牛乳や卵を使うことによって浮くコストと、それが見つかってつかまったりさらしあげられたりするコストが比例していないからである。この「誰が考えてもわかりそうな愚行」が組織の中で誰もわからなかったことに対して、馬鹿だなと言っているのである。そして話は、不二家バカwwwヤベェwwwで終わらない(こんなこと内田樹はいってない)。これは不二家だけでなく、現代人(特に男)に典型的な症状として論を展開していく。

 長々と書くつもりはないので過程をぶっ飛ばし結論だけ書くと、男は他人と競争をするのが大好きな生き物です。競争で勝つのが正義だと考えているのです。受験で、就職で、配偶者の獲得で、我々は数多くの競争状態におかれますが、なぜこんなに競争状態に熱狂できるのかといえば「日本というシステム」が崩壊するはずないとだれもが思っているからです。100メートルトラックを使って、100メートル走に興じているわけですが、そのトラックにゴジラが乱入して全部ぶっ壊されるとはだれも思わないのです。自分たちが戦っている場の他にも場があるとは考えていない。これを不二家に当てはめるとよくわかります。「同業他社との競争」に熱中して、その中で優位に立つことだけを模索していた結果、その競争の場の外にまた違うルール(食品衛生法)などが存在するということを忘れていた結果であるといえる。

 これは不二家に限った話ではなく、受験戦争にだっていえることで、「いい大学」に入ることに夢中になってそもそも学校教育とは何のためのものかということを考えなくなっているすべての日本人に言えるのである。そういうシステムが崩壊しないと鼻から安心しきっていられる日本は平和だからこそである。だが長く続きすぎた平和のせいで、システムがクラッシュした時に生き延びられないほど脆弱になってしまったのではないか。とかなんとか、そういう話です。不二家バカwwwヤベェwwwじゃなくて、いまや日本バカwwwwヤベェwwwなのです(なんだこれ)