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伝わる・揺さぶる!文章を書く

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)

 最近僕は「どうやったら自分の頭でものを考えられるようになれるか」ばかり考えていた。まだ二カ月ぐらいだけれど、結局何の結論も出ずに、必死に考えよう考えようと思っているだけでどこにも辿りついていない。…はずなのだが、まさにそんな人にお勧めしたい一冊がこの山田ズーニー著「伝わる・揺さぶる!文章を書く」である。ただの文章読本と侮るなかれ、「相手に自分の意思をわかりやすく伝える能力」は文章に限らずすべての分野で有効だ。

 そもそも「自分の頭で考えること」の利点はなんだろうか。何故必死に努力してまで自分の頭で考えなくてはならないのか。最初の動機は単純に「考えていない自分」が嫌になり「考える自分」になりたいと思ったことだ。これを最も簡単に言ってしまえば「私を認識してください」ということになるのかもしれない。他人の言葉を言って、他人の言われた通りに行動して、主体性の無い生き方は「自分が生きている」とは到底言えないだろう。自分で考えて、自分の考えを発言して、他者に伝えることによって初めて自分が生まれ、他者に認識してもらえる。それが自分の頭で考えることの意味ではないか。

 書くことは考えることだ。だから、書くために必要なことを、自分の頭で考える方法がわかれば、文章力は格段に進歩する、と山田ズーニーは言う。だからこの本はただの文章読本ではなくて、自分で考える方法を教えてくれる一冊でもある。二つは一つのことだからだ。本書からは山田ズーニーの本気が伝わってくる。愛と言えるかもしれない。理解できない相手へ、どれだけ理解しようと努力できるかが愛だと思っているが、山田ズーニーは一見どうしようもないほどの落ちこぼれに対しても「あなたには書く力がある」とだけ、たったひと言、伝えてくるだろう。それが愛だ!