基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

経験を盗め (文化を楽しむ編)

経験を盗め―文化を楽しむ編 (中公文庫)

経験を盗め―文化を楽しむ編 (中公文庫)

 化物語(著者:西尾維新)という物語の中では、有力者として存在する忍野メメのとある言葉が繰り返されます。「自分は助けない、相手が勝手に助かるだけ」というのがそれです。初めて読んだ時はとても不思議なセリフでした。だって、作中で忍野メメはたしかに色々手を焼いて、困っている人を助けているからです。それを「勝手に助かるだけ」とはどういうことなのか。ただ言われてみれば、そうかもしれない、という気もするのです。だって、何かを得るためにはまず自分が「学ぶ」姿勢にならなければいけないじゃないですか。助けてほしかったら、助けてほしい自分がいることを自覚し、次に誰が自分を助けてくれるのか見極め、最後にその人に助けてください、と願う。極端なまでにへりくだる必要がある。助けられるためには、助ける側の助力と、助かる側の心構えが必要なのです。そして助かる側は、助力を与えられて自分の力でその状況を脱する。人のを力を使うのも、結局は自分の力だからです。

 そこを考えると「経験を盗め」というのも割と深い言葉だなという気がします。ぼくらは、だれかから経験をもらうことはできない。勝間和代が自分の成功の法則を語り、村上龍が成功者にインタビューをして経験をリストアップし、数々の教訓を生み出す。しかしそれは結局「与えられた」ものであって、「盗んだもの」じゃない。だから身に着かないのではないでしょうか。もし「与えられたもの」を身につけようと思ったら、「何故勝間和代は手帳を三冊持てなんていうんだろう? 勝間和代が言っていることは本当に正しいのだろうか? 村上龍が言うことはどこまで正しいのだろうか?」と自分で考えて、消化したあとじゃないと意味がない気がします。

こっから本の紹介

 この本の中では色々な人と、MOTHERというゲームを作ったことで有名な糸井重里さんが対談しています。色々な人というのは色々な「業界」の人ともいえて、たとえばグルメだったり、お墓についてだったり、骨董だったり、お祭りだったり、メロディ、日記、花火、ラジオ、あげくのはてにはトイレの話まで! 本当にいろんな業界の人と語り合うんですね。これが、最初はぼくも「トイレの話なんか興味ねーし!!」「骨董とかしらんがな」「何でこの人たち突然花火の話始めたの…」とか困惑しっぱなしだったのですが、試しに読んでみるとこれが面白い。ああ、こんな色んなことがあるんだあ、と驚くこと多数です。

 トイレの話なんか面白くなるはずないだろ…という圧倒的ハードルの高さがあるんですが不思議と対談だと「ちょっと読んでみるか」という気分にさせられてしまいますからね。ページ数的にも一つの話にそんなにあるわけじゃなくせいぜい40Pぐらい。当然何かを長々と主張することなんかできませんから(そもそも基本三人だし)必然的に凝縮された濃い話題だけが味わえるようになっていたんじゃないかなーと。どんなにつまらなそうなネタでも、一つぐらいはあるもんですからねー、面白い話。そんなところで。