基本読書

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ぐっとくる題名

ぐっとくる題名 (中公新書ラクレ)

ぐっとくる題名 (中公新書ラクレ)

 言うまでもなく、小説において題名とは、とても大事なものであります。たとえば漫画だったら、一切の前情報無しでも表紙の絵で中身をある程度は判断してもらえます。しかし小説は、ちょっと読んで確かめようとしてもそうそうわかるものではありません。仮に一切前情報なしで小説を買うとなったらその時に判断基準となるものは基本的にはタイトルしかありません。手に取ってもらえないと、いくら中身が良くても何の意味もないわけです。ですから、タイトルは重要です。

 誰にでも自分だけの「ぐっとくる題名」があると思います。たとえばぼくだったら真っ先にPKディックの「流れよわが涙、と警官は言った」とか神林長平の「戦闘妖精雪風」などが思いつきます。これを読んでいる人はたとえば何を思いつくのか、想像もできませんけれど、仮に何か思いついたとして、「しかしじゃあなんでこの題名はぐっとくるんだろう?」とまで考えたことはあまりないんじゃないでしょうか。それをいちいち考えたのが、著者のブルボン小林氏。実名の方で芥川賞を受賞しており、日本語へのツッコミ力、ひねくり力が素晴らしい。本書でこねくり回されているタイトルは目次を引用するのでそれを見れば全てわかるかと…。

第1章 ロジック篇
1.助詞の使い方―「ゲゲゲの鬼太郎」「無能の人」「僕が泣く」
2.韻とリズム―「ヤング島耕作」「勝訴ストリップ」「噂の刑事トミーとマツ
3.言葉と言葉の距離(二物衝撃)―「天才えりちゃん金魚を食べた」「部屋とYシャツと私
4.題名自体が物語である─「脳手術の失敗」「お勢登場」「海へ出るつもりじゃなかった」
5.濁音と意味不明な単語─「しだらでん」「少年アシベ」「ディグダグ
6.アルファベット混じりの題名─「D坂の殺人事件」「M色のS景」
7.古めかしい言い方で─「ツァラトストラかく語りき」「されど孤にあらず」
8.命令してみる─「大工よ、屋根の梁を高く上げよ」「メシ喰うな」
9.パロディの題名─「長めのいい部屋」「百年の誤読」
10.関係性をいわない「隠し砦の三悪人」「11人いる!」
第2章 マインド篇
11.先入観から逸脱する―「淋しいのはお前だけじゃな」「サーキットの娘」
12.日本語+カタカナの題名―「少年ケニヤ」「三人ガリデブ」
13.いいかけでやめてみる―「光ってみえるもの、あれは」「飼い犬が手を噛むので」
14.いいきってしまう─「これからはあるくのだ」「幸せではないが、もういい」
15.漢字二字の題名「趣向」「発表」「嫐嬲」
16.長い題名─「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」「おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ」「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」
17.続編の題名─「ニュー・三匹が斬る!」「ALIENS」「ブラウン神父の童心」
18.題名同士が会話する─「今夜わかる」シリーズ 「買ってみた。」「それが本当なら」
19.洒落の題名「屁で空中ウクライナ」「ザ・先生ション!」
20.読むと、愛着が生じてしまう─「アメリカ」
21.人気歌人に学ぶ─「どうして長嶋有さんは枡野浩一なんかとつきあってるの?」「日本ゴロン」「世界音痴」「にょっ記」
22.ぐっとくる題名とは

第3章 現場篇
実用書の題名が決まるまで
小説・コラムの題名が決まるまで